『ねぎを刻む』あらすじ・ネタバレ感想文|孤独と向き合う方法|江國香織
孤独な夜はねぎを刻む。
ぽっかり空いた時間に思い出す物語があります。江國香織さんの『つめたいよるに』に収録されている短編「ねぎを刻む」です。
「ねぎを刻む」は孤独を描いた一話。
今まで読んだ江國さんの本の中では強烈に印象に残っているお話なんですよね。ほんの4、5ページくらいのストーリーなのにとても濃いです。何度読んでも好き。
心にすんなりと浸透してゆくんだ。
『ねぎを刻む』あらすじ
江國香織版”孤独”の教科書
孤独は突然押し寄せる。気づいたときにはもう遅い。そんなとき、人はどうしているのだろう。『つめたいよるに』に収められている短編。
『ねぎを刻む』ネタバレ感想文|もしも孤独がやってきたら?
『ねぎを刻む』は「孤独」ということがどういう状況なのかがわかる物語。
なかなか孤独な気持ちって言葉ではあらわせないけど、この物語を読むとそれがすんなりと理解できるんです。・・・すごい本ですよね。
江國さんの著作の中ではダントツ好きな一話で、深く印象に残るお話でした。
教科書のような物語だよ。
孤独は、あるとき突然やってくる
孤独は、あるとき突然やってきます。
包まれてしまったら最後。ジタバタするだけ増してゆく。それで結局、ひとりで乗りきるしかないんだなと気づくんです。
私はひとりでいるのが平気なたちなので、あまりこういう状況に陥ったことがないのだけど。・・・それでもごくたまにこんな状況に陥ることがあります。
必死に耐える主人公が愛おしく思えた。
孤独になったときの対処法|一心不乱にネギを刻む
心を動かされたのは、主人公の女性がネギを刻むところです。
ご飯のスイッチを入れては刻み、お味噌汁を作って刻み、おとうふを切ってまた刻む。そうして山のようになったネギを お味噌汁にもお豆腐にもどっさりかける。
彼女がやっていたのは、孤独になったときの対処法なんです。泣きながら一心不乱にネギを刻んでいました。
何かをすることって、気持ちを紛らわすのには丁度いいんだろうね。
傍から見ると痛々しいかもしれないけど、こうやって折り合いをつける彼女に共感できるんですよね。
悲しいときはたくさん悲しんで、泣きたい時は泣けばいい。孤独と向きあうのが大事です。
孤独(ひとり)について思うこと
『ねぎを刻む』テーマは「孤独」です。
でも世界に誰も頼る人がいない「孤独」じゃなくて、頼れる人は存在するけど、今は「孤独」(ひとり)という意味合いです。
ここで描かれた「孤独」は誰にでも訪れるもので、自分で折り合いをつけていくもの。普段まわりに誰かがいるから「孤独」を感じたりするんでしょうね。
私にとって「孤独(ひとり)」というのは、淋しさと少しの安堵感があるんだ。
人と話すことは楽しいけど、たまに誰とも喋りたくないときがあって。そういう時は、ひとりでいることに安堵感を覚えます。
その逆もありますね。ひとりでいる時に、無性に人と話したくなる。電話を切った後に寂しさを感じたり・・・。
「ひとり」でいるのは好きだけど、世界に頼れる人がいない「孤独」になったら耐えられないかもと感じました。
離れていても、心が通じ合ってる誰かがいるはホッとするよね。