『百貨の魔法』あらすじと感想文|古き良き時代のデパート星野百貨店|村山早紀
- 『百貨の魔法』あらすじと感想文
- 理想のデパートと店員さん
- 魔法を使う猫
- 魔法の夢
- 共感したことば
- 百貨店のあるべき姿
少しだけネタバレあります。
星野百貨店のフロアで、もし、猫と出会ったら?
村山早紀さんの小説『百貨の魔法』感想です。2018年、本屋大賞ノミネート作品の1つです。職業がら百貨店には馴染みがあるので楽しみにしていたのだけど・・・。
残念ながら、私には合わなかった。
『百貨の魔法』あらすじ
星野百貨店でくり広げられる物語
古き良きデパートで働く従業員の物語。時代の波に抗えず、その存続が危ぶまれる星野百貨店。そこには様々な人の想いがあふれていた―。
『百貨の魔法』ネタバレ感想文
本書で描かれている 「星野百貨店」 は時代の波に抗えず存続が危ぶまれる経営状態でした。
古き良き時代のデパート。その中でくり広げられる人間ドラマは、不思議で温かくてジーンとします。
エレベーターガールがいて、ドアマンがいて、屋上にはメリーゴーランドがあって・・・。昭和の懐かしさを感じる風景ですね。
子どものころは敷居が高かったなぁ。
ちゃんとした服装をしないと入れないような気がして、気後れしてました。時代は変わるものです。
外側から見た理想のデパートと店員さん
村山さんが描く 「星野百貨店」 はお客さま側から見た理想のデパートでした。
いつも笑顔の店員さん。百貨店はお客さまの願いを叶えてくれる場所。
そこで働く従業員が主人公のお話なんだけど、内側じゃなくて外側から眺めた世界という印象を受けました。
店員さんはこうあるべきだという理想があって、それを全てのキャラに当てはめたような感じだった。
そう感じるのは、私が百貨店で働く内側の人間だからかもしれません。裏を描かずに表のキレイなところを並べて小説にしたというふうに感じました。
登場人物がみんな良い人すぎるんです。荒んだ人がひとりもいません。そういうのが一切なくて、お客さまの喜びが一番の幸せという従業員ばかり・・・。
理想ではあるけど、実際こんな人、なかなかいないんじゃないかな。
辛口レビューはここまで。飛ばし読みしていたけど、心に響いた言葉がありました。ここからは、それを紹介しながらのレビューです。
魔法を使う猫
「星野百貨店」 には七不思議・・・ではないのだけど、噂の子猫が登場します。
金目銀目の白い子猫。見つけて話を聞いてもらえば願い事が叶う。
魔法を使うねこ。もしも出会えたら何をお願いしよう?
登場人物のほとんどが過去を引きずっていて、切なさもあとを引きます。好きな物語は 「夏の木馬」。切なくて温かなお話でした。
どの物語も白猫がふらっと登場して、主人公たちの願いが叶っていく。不思議な世界に迷い込んだ感覚になりました。
魔法の夢
“魔法を使う猫” について子どもたちから尋ねられたエレベーターガールのいさな。彼女は子どもたちに、そんなネコはいないと言うべきか迷っていました。
彼女にアドバイスした同僚の言葉が心に残ります
おとなの役割はきっと、子どもを無理に夢から覚ますことじゃないわ。でね、魔法の夢を見ていた時代は、あとできっと、幸せな思い出になるの
小さいころ信じていたサンタクロースを思いました。ここで言う魔法の夢をみていた時代です。
歳をとり、気付かぬうちに自然と夢から覚めてしまったけど、サンタさんを信じていたときのことは、いまでも幸せな思い出として心にあります。
思い出がたくさんある人ほど、心が豊かなんじゃないかな。
共感したことば
共感したことばがありました。
誰かに褒められると、ありがとうございます、と慣れた感じでお礼をいいつつ、心の中では、「よっしゃ」 と、いつだって叫んでいるのだ
私も同じです。それがお客さまからだったりしたら、澄まして 「ありがとうございます」 と微笑むのだけど、心では 「よっしゃ!」 とガッツポーズ。
トルソーに着せたお洋服をそのまま全身買っていただけたときとか・・・。嬉しくて小躍りしてます。
接客って楽しい。もちろん嫌気が指すことも度々あるけど、あまり苦にならないんだ。
ここで描かれているような心清らかな店員さんには到底及ばないけど・・・。
『百貨の魔法』は百貨のあるべき姿を再認識できた小説
本音を言うと、百貨店はさまざまな規則があるから若干の面倒くささと負担があったりします。
でもそれがあるからこその百貨で、お客さんも安心して買い物できるのかもね。
ハマれなかったけど、百貨店のあるべき姿を再認識できた小説でした。