『しんがり 山一證券 最後の12人』あらすじとネタバレ感想文・結末|清武英利|ほんのたび。読書感想文とあらすじ

『しんがり 山一證券 最後の12人』あらすじとネタバレ感想文・結末|清武英利

ひだまりさん。
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この記事に書かれていること
  • 『しんがり 山一證券 最後の12人』あらすじと感想文
  • 場末のしんがりたち
  • 「とばし」と「三菱重工業CB事件」
  • 嘉本さんの憤りと言葉

少しだけネタバレあります。

山一證券、破綻の裏には・・・。

清武英利さんの小説『しんがり 山一證券 最後の12人』感想です。

実話を元にした小説。

1997年、私がまだ学生だった頃のことですね。当時の記憶はあまりないのだけど、漠然と証券会社も潰れるんだ・・・と思ったのを覚えています。

ひだまりさん。
ひだまりさん。

当時のことが詳細に書かれていて、読み応えがあったよ。

『しんがり 山一證券 最後の12人』あらすじ

会社に留まった社員の物語

あらすじ

山一證券破綻の裏には何があったのか? そのとき最後まで会社に留まった社員がいた。

日本を震撼させたニュース

1997年11月。山一證券が自主廃業という衝撃的なニュースが流れました。

山一には、約二千六百億円の帳簿外の債務があるというもの。

当時は社長・野澤正平さんの号泣記者会見が話題になりました。社長に就任してそんなに月日が経っていない頃の出来事のようです。

「社員は悪くありませんから!」と叫ぶ野澤さん。

記憶にないのだけど、この本を読んで野澤さんの言葉に悔しさと社員を想う気持ちが伺えて心を揺さぶられました。しかも野澤さんは債務の事実を何も知らされず社長になったのです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。

それは酷すぎる・・・。

原因を調査するために立ち上がった人たちがいました。山一證券がこのような結末を迎えた経緯にはどんなことがあったのか。

『しんがり 山一證券 最後の12人』ネタバレ感想文

『しんがり』は、破綻した山一證券についてジャーナリストである清武さんが詳細なインタビューを元に描いたものです。

ひつじ。
ひつじ。

頭が下がる。力作だよ。

場末のしんがりたち

崩壊した会社に踏みとどまって仕事を続けた人たちがいました。

業務監理本部(ギョウカン)の嘉本隆正、菊野晋次、長澤正夫を始めとした12人です。

エリートではなく、会社中枢から離れたところで仕事をしてきた者ばかり。会社が倒産し、社員の殆どが再就職を探す中、踏みとどまったのは彼らです。

彼らを表す言葉として「しんがり」というのに、しっくりきました。

しんがり

戦に敗れて退くとき、軍列の最後尾に踏みとどまって戦う兵士たちのこと。

エリートではないけれど、案外そんな人たちの方が最後の最後に力を発揮するものなのかもしれません。なんのメリットもなく、しかも無給で・・・。

ひだまりさん。
ひだまりさん。

なかなか出来ることではないよね。

彼らは清算業務と約二千六百億円の債務はどこからきたものなのかを調べ始めます。

債務を隠した「管理人」を突き止め、約100人の幹部たちに数百回のヒアリングを実施したのです。

昔ながらの証券会社の闇と過去の事件が端緒となっていました。

山一證券、破綻の裏にあった「とばし」と「三菱重工業CB事件」

証券会社や投資に疎く、わからない言葉が出てくるので検索しながら読み進めました。まずぶち当たったのが「とばし」と言われるものです。

とばし

含み損を別の会社にいったん預けたりして、表面化させないようにする取引き。

ひつじ。
ひつじ。

今は法律で禁止されているけど、昔はどこの証券会社でもやっていたようだね。

A社、B社、C社・・・と「飛ばし」ていく。そのうちにバブルも弾けて負債が大きくなり、どうにもならなくなる。

山一證券が破綻したとき、幹部や社員の多くは何も知らされていなかったと書かれていました。

ひだまりさん。
ひだまりさん。

当時のトップ(行平会長や三木社長)など、ごく一部の人たちによって巧妙に隠されていたんだ。

発端となったのが「三菱重工業CB事件」でした。当時関わっていたとされた社員の自殺により真相は究明されなかったようです。

当時の四代証券

野村證券、大和証券、日興証券、山一證券

山一證券の廃業の裏には隠された様々なことがあったのですね。誰か一人でも暴走を止めることが出来ていれば・・・。そう思ってしまうのは後の祭りでしょうか。

会社が潰れた時、社員は・・・

会社って何なんだろう。働くってどういうことなんだろう。

直前まで何も知らされていなかった社員の気持ちは痛々しいものがありました。今やどんな会社も安心出来ない時代なのかもしれません。・・・世知辛い世の中です。

ひつじ。
ひつじ。

会社がなくなるって、こういうことなんだね。本を読んでると、辛くて涙がでてきた。

嘉本さんは社内調査をしていくうちに自分は会社のことを何も知らなかったと気づくのだけど・・・。

ひだまりさん。
ひだまりさん。

やり切れなさと、怒りを感じたよ。

誇りは消えない

人は辛い経験をしたからこそ、幸せに生きていけるのかもしれません。あとがきに、しんがりチームのその後と当時の気持ちが書かれています。

嘉本さんの言葉

「私はサラリーマンとして、幸せな人生を過ごしました」

最後まで頑張った仲間たちは、他の会社からオファーがあったりしました。見ている人は見てくれていたのです。

山一で働いたからこその今がある。

ひつじ。
ひつじ。

それを誇りに思っている姿に心が温まった。不正はあったけど、良い仲間に恵まれていたんだね。

絶望的な状況だからこそ発揮できる力がある。ギョウカンという左遷社員が追いやられる「場末」で働く彼らは、誇りを持った最強のチームです。

『しんがり 山一證券 最後の12人』WOWOWでドラマ化

『しんがり』はWOWOWでドラマ化されました。

主演は江口洋介さん、梶井という役名です。仲間には、萩原聖人さん、林遣都さん、勝村政信さんなど。

ひだまりさん。
ひだまりさん。

サラリーマンを描いた熱いヒューマンドラマ。小説もドラマも良かったよ。

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