- 小説『十字架』あらすじと読書感想
- 『十字架』のテーマ 「いじめ」 について
- ナイフの言葉と十字架の言葉
- スコーグスシュルコゴーデン (森の墓地)
- いじめの代償はあまりにも重いこと
少しだけネタバレあります。
いじめの代償と命の重さ
重松清さん『十字架』感想です。はじめて重松さんの本を読みました。この物語は深いですね。言葉が次々と胸に突きささりました。
「いじめ」により自殺してしまった中学生、のこされた家族とクラスメイトの生き方を描いた作品です。
『十字架』あらすじ
いじめの代償は、あまりにも重い!
クラスメイトがいじめを原因にこの世を去った。彼の遺書に書かれていたのは、僕の名前だった・・・。
『十字架』感想
テーマはいじめ。
フィクションとして描かれていますが、現実味があり真剣に読んでしまいます。もはや学校だけでなくどこでも存在しうるものですよね。・・・でもその代償はあまりにも重いんです。
いけにえ自殺

いじめのきっかけ
イジメが始まるきっかけというのは様々あるのかもしれません。でも ただ選ばれてしまっただけ・・・では回避のしようもないです。いじめと一括りにしがちですが、今や深刻な問題となっています。
まわりの子も知っていながらだれも助けません。自分が次のターゲットにされるのが嫌だから見てみぬふりをする。気持ちはわからなくもないけど、それによって後に重い十字架を背負わなければならなくなります。
藤井俊介くん (フジシュン) が自殺をしてしまいます。
心の傷は深く・・・
いじめによる自殺は現実にも起きていることで、本書で描かれていることは他人事のようには思えませんでした。事が起こってから後悔しても もう遅い。
主人公・真田祐と、同級生の中川小百合が背負ったものは 決して軽いものではありませんでした。
フジシュンがのこした遺書には彼らの名前が書かれていました。フジシュンの「親友」にされてしまった真田祐。自分の誕生日が命日になってしまった中川小百合。
いい迷惑。もし自分が彼らの立場になったら、そう思うでしょうか。親友でもないのに勝手にそうされてしまって。でも見て見ぬ振り、見殺しにした事実は消えません。
十字架の言葉

印象にのこった文章があります。
ひとを責める言葉には二種類あるそうです。ナイフの言葉と十字架の言葉です。私が気になったのは後者の方でした。
生きていくかぎり背負わないといけないもの。
本書で描かれているのは これです。親友なのに見殺しにした祐と小百合。フジシュンの父親からは「ゆるさない」と言われ、重い十字架を背負います。
『十字架』は 主人公がそれを背負った14歳からの20年間が描かれていました。
中学生から大人になり結婚して子供が生まれて・・・。歳を重ねるたびに重くなっていきます。そうやって一生 背負い続けなければならない。
森の墓地
あるお墓がでてきます。
世界遺産に登録されているスコーグスシュルコゴーデン (森の墓地)
スウェーデンにあります。自殺したフジシュンが図書館で借りた「世界の旅 ヨーロッパ」に挟まっていた1枚のメモ〈世界一周ツアー〉の最後に書かれていたのが森の墓地でした。
ネットで検索して写真を見たのですが、芝生の上に大きな十字架があって安らぎを感じます。暗い感じはなくて、むしろ開放感が感じられる。森の中にあるからかな。
「人は死ぬと森に還る」
・・・という、スウェーデンの人々の死生観が表れているようです。行ってみたいです。
あのひととの約束
主人公が言う「あのひと」とは?
どこか、よそよそしく遠まわしのような呼び方です。でも最後まで祐の中では、あのひとはあのひと。相容れない関係でありながら決して忘れることの許されないひとでした。
最後の方で祐とあのひとは約束をします。それが切なく心に響いてジーンときました。
いじめの代償
友達が自殺してから祐は何を感じてどんなふうに生きてきたのか。本書で描かれていた彼の気持ちがフラッシュバックしてきます。
目をとじて、しばらく祐が歩んできた人生を思い描きました。1人の少年を見殺しにした彼が背負った十字架。決して許されないものを背負いながら、悩んで、迷って、傷ついて。
いじめの代償はあまりにも重い。
・・・誰だってそんな代償は背負いたくないですよね。なかなか深いお話でした。
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