『デューク』あらすじ・感想文・考察|犬が伝えたかったこと「つめたいよるに」江國香織
犬が伝えたかったことは―。
- 小説『デューク』あらすじと感想文
- 牧羊犬について
- ペットロスに陥った主人公と不思議な少年
- 少年とデュークの共通点
- 少年の正体は?
- 【考察】犬が伝えたかったこと
ネタバレあります。ご注意ください。
江國香織さんの小説『デューク』感想です。『つめたいよるに』に収められている一話。
『デューク』は、ペットロスに陥った女性を描いた物語です。
過去にセンター試験に全文が掲載され、試験の最中なのに泣き出してしまった人たちがいたと話題になりましたね。・・・その気持ちがわかります。
何度読んでも泣いてしまう。
デュークが伝えたかったことは何か?最後に簡単な考察を書いています。
『デューク』あらすじ
飼い主とペットの温かな物語
デュークが死んだ。わたしのデュークが死んでしまった─。たまご料理と梨と落語が好きで、キスのうまい犬のデュークが死んだ翌日、乗った電車でわたしはハンサムな男の子にめぐりあった。悲しみにくれる主人公が出会ったのは・・・。
デュークは可愛いモップ犬(牧羊犬プーリー種)
タイトルにもなっている「デューク」は、主人公の女性が飼っていた犬の名前なんです。
デュークは牧羊犬(プーリー種)でした。
牧羊犬というと、羊などを誘導するのに大活躍する犬のことですよね。ワサワサしていてモップのようにも見えました。動きは機敏で頭もよさそうです。
プーリー種、可愛いすぎる。
『デューク』ネタバレ感想文|心温まるほろ苦ストーリー
『デューク』は、1度読んだら忘れられなくなる物語です。
飼い主とデュークの深い愛情を感じて号泣しました。・・・これは切ないけど心温まりますね。
短編でも、しっかり心に響くよ。
ペットロスに陥った女性の悲しみ
主人公はペットロスに陥った女性。
今まで家族同然のように一緒に暮らしてきたペットが突然死んでしまう・・・。相当なショックですよね。
彼女の悲しみが伝わってきました。いっこうに涙が止まらなくて受け入れられなくて、ただただ悲しむことしか出来ない・・・。
江國さんの文章は、悲しさが存分ににじみ出てる。
私は、今までの生活の中で1度もペットを飼ったことがないんです。だから彼女の悲しさは想像することでしか理解できないのだけど。
『デューク』は、そんな私が読んでも心に響くものがありました。しかもデューク、可愛いんです。
横顔がジェームス・ディーンに似ているっていうのが面白いよね。
不思議な少年との出会い
デュークが死んで、主人公は不思議な少年と出会います。
19歳くらいの、白いポロシャツに紺のセーターを着たハンサムな男の子。深い目の色をした少年です。
彼は電車で泣いている主人公の盾になって、さりげなく彼女をかばっていました。そして2人は一日デートをします。
プールに行って、美術館に行って、落語を聞きにいく。少しづつ彼女の気持ちは癒されていきました。
プールも、美術館も、落語も、江國さんの好きなものなんだろうな。
作者を重ねて読んでいました。江國さんの文章はサッパリしているようで濃いから、しっかり心に響きます。
少年とデュークの共通点|少年はデュークなのか?
不思議なことに、少年とデュークには共通点がありました。
少年も喫茶店でオムレツを食べ、落語がすき。デュークと同じ深い目の色・・・。しかも、キスや淋しそうに笑った顔までもがジェームス・ディーンに似ていました。
少年はデュークなのか?
気になりますよね。でも、江國さんは少年が愛犬であるかどうかは書いないんです。読者の想像におまかせ、ですね。
不思議の部分を残しつつ、最後は温かさを感じたよ。
【考察】犬(デューク)が伝えたかったこと|号泣した少年のことば
『デューク』を読んでいると、最後の少年の言葉にいつも泣いてしまうんです。デュークが彼女に言っている言葉(伝えたいこと)のように感じるからです。
「今までずっと、僕は楽しかったよ」
「今までずっと、だよ」
「僕もとても、愛していたよ」
少年の言葉からわかるのは、彼女がデュークを愛したように愛犬も彼女を愛してくれていたことです。
やっぱり少年はデュークなんだろうな。
こんなに嬉しいことはありませんね。家族同然のペットが死んでしまってほろ苦だけど心温まるスィートな物語です。