- 辻村深月さんの小説『スロウハイツの神様』あらすじと感想
- 「二十代の千代田公輝は死にたかった」 について
- スロウハイツの住人たち (登場人物)
- チヨダ・コーキ
- コーキの天使ちゃん
- 長すぎる序章
少しだけネタバレあります
いいことも悪いことも、ずっとは続かない―。
辻村深月さんの小説『スロウハイツの神様 上下』感想です。『かがみの孤城』を読んだときから気になっていました。
上巻を読んだ時は 「これはハズレ?」 と思いました。可もなく不可もなく。でもレビューの評価がめちゃくちゃ高いんです。不思議に思いながらも下巻へ。
読み終わって評価が高いのがうなずける。読み始めと終わりで感じ方がガラッと変わりました。・・・途中でやめなくて本当に良かった。
『スロウハイツの神様』あらすじ
必ずラストに号泣する!
脚本家の赤羽環が暮らす アパート「スロウハイツ」。そこには 人気作家チヨダ・コーキをはじめ、様々な人たちが住んでいた。やがて 新しい住人がやってきて・・・。
『スロウハイツの神様』感想
上巻と下巻の面白さが全然ちがう。・・・なんなんだろう、この差は。たくさんの伏線が散りばめられていて後半で一気に回収されます。
「二十代の千代田公輝は死にたかった」 に号泣

ラストは必ず号泣
最終章の 「二十代の千代田公輝は死にたかった」 がとても素晴らしかったです。この章あっての物語なんじゃないでしょうか。
環に会ったときのコウちゃんのひとことに、こんな深い意味があったんだと涙が止まらなくなりました。間違いなく号泣します。
スロウハイツの住人たち (登場人物)
物語は 「スロウハイツ」 というアパートで繰り広げられます。主人公は 赤羽環。アパート「スロウハイツ」のオーナー兼、脚本家です。
- 赤羽環・・・脚本家、スロウハイツのオーナー。
- 千代田公輝・・・202号室に住んでいる人気作家、チヨダ・コーキ。
- 黒木智志・・・千代田公輝の編集者。
- 狩野壮太・・・漫画家の卵。
- 長野正義・・・映画監督の卵。
- 森永すみれ・・・画家の卵。
- 円屋伸一・・・環の親友。密かに漫画家を目指している。
- 加々美莉々亜・・・自称小説家。チヨダ・コーキのファン。
藤子不二雄たちが住んでいたトキワ荘をイメージしているようです。住人たちの流しそうめんパーティ (?) のシーンは 楽しそうでした。
前半はそれぞれの日常や過去などが描かれています。特におおきな盛り上がりはなく淡々と。少し退屈してしまいました。
読み終わってみると、ここの部分があるから最後が生かされると気づきます。すべて分かった上でもう1度読み直すと面白いかもしれませんね。
誰もが好きになる、チヨダ・コーキ

欠かせない人物
千代田公輝。人気作家のチヨダ・コーキです。
読み終わったときに間違いなくみんな好きになるであろう人物。私も例外ではありませんでした。
初めから好感が持てました。そして最終章を読んでからもっと好きになる。子どもみたいで、でもちゃんと人の痛みを理解してあげられる人です。
彼が言ったひとことが素敵でした。
いいことも悪いことも、ずっとは続かないんです。いつか、終わりが来て、それが来ない場合には、きっと形が変容していく。
楽しいときは、それがずっと続けばいいのにと思う。でも苦しいときは、この苦しみがずっと続くような気がする。
「いいことも悪いことも、ずっとは続かないんです。」 と言った公輝のことばに救われる気分になりました。
コーキの天使ちゃん
チヨダ・コーキについて
チヨダ・コーキについては 最終章 「二十代の千代田公輝は死にたかった」 に、彼の人柄が描かれています。
編集者の黒木が面白可笑しくコウちゃんの話をしていたことがこの章に繋がっていく。
例えば、いきなり買ってすぐ人にあげてしまった大型テレビのこと。クリスマスに大量に買った 「ハイツ・オブ・オズ」 の高級ケーキのこと。
前半だけを読むと、千代田公輝、ちょっと変わった人?・・・と思うのですが、ちゃんと理由がありました。コウちゃんの心にはずっと 「コーキの天使ちゃん」 がいたんですね。
人を想う気持ちは尊いもの。コウちゃんのエピソードひとつひとつに理由があって号泣しました。
好きな作家さんの新刊を読むことは 私にとっても楽しみのひとつです。ときに生きる希望にすらなりえる。
「コーキの天使ちゃん」 の気持ちがわかるような気がしました。
長すぎる序章
読後感がものすごく良かったです。すべてがラストに繋がっていくのはすごかった。辻村さんは伏線の回収が天才的にうまいですね。
ただ、前半にもう少し盛り上がりがあったら良かったのにと思います。
最終章 「二十代の千代田公輝は死にたかった」 とエピローグだけが ずば抜けて良くて、あとはそれを引き立てる序章のような感じが否めません。
これがもし上下巻ではなくて1冊だったら、そこまで感じなかったのかもしれませんが。


