『暗幕のゲルニカ』あらすじ・ネタバレ読書感想文|パブロ・ピカソの訴えと戦争|原田マハ

- 『暗幕のゲルニカ』あらすじと感想文
- モノクロームの絵
- 暗幕に隠されたもの
- アートの力と情熱
少しだけネタバレあります。
ゲルニカを消したのは誰?
原田マハさんの小説『暗幕のゲルニカ』読書感想文です。前作『楽園のカンヴァス』があまりにも面白すぎて楽しみにしていました。
モダンアートを扱った一冊。ピカソの絵画「ゲルニカ」がでてきます。

ピカソの絵に心酔しながら、とても幸せな1日を過ごせたよ。
原田マハさんの読ませる力は凄いですね。期待を裏切りません。

『暗幕のゲルニカ』あらすじ
スリリングなアート小説
ある日、国連本部のロビーに飾られていたタペストリー、ピカソの 「ゲルニカ」 が消えた。ニューヨーク近大美術館のキュレーターである八神瑤子は、「ピカソの戦争」展に「ゲルニカ」を出展しようと奮闘するが・・・。
『暗幕のゲルニカ』ネタバレ感想文
『楽園のカンヴァス』ではアンリ・ルソーの「夢」を、そして今作ではパブロ・ピカソの「ゲルニカ」を扱っています。
絵に込められた想いは深く強い。
何度も表紙になっている絵を眺めていました。的確で繊細な言葉の数々にハッとします。

原田さんのアート小説、面白いんだ。
モノクロームの絵
パブロ・ピカソが描いた『ゲルニカ』を表した文章を息を止めて読んでいました。
原田さんの文は絵のイメージが浮かんできて、物語に引き込まれるんですよね。

1937年、パリ万博スペイン館に展示するために描かれた大作『ゲルニカ』。縦・約350センチ、横・約780センチの巨大な絵。
この本を読んで初めて目にした『ゲルニカ』。白とグレーと黒のモノクロームで描かれていて、なんだか不気味な雰囲気。見ていると胸騒ぎがしてきます。

ゲルニカという地が空爆され、犠牲となった人々や動物の叫び声が聞こえてきそう。
まさに地獄の絵。この絵から伝わるのは戦争の悲惨さです。原田さんはこの物語を通して、ピカソが訴えている強い想いを描いていました。
暗幕に隠されたもの
ニューヨーク近大美術館 (MoMA) のキュレーター・八神瑤子の時代と、パブロ・ピカソの時代とが交互に書かれています。
2つの違う時代が同時に進んでいくような錯覚。ドキドキの展開で読むのをやめられません。
国連本部のロビーに飾られていたタペストリーに暗幕がかけられます。アメリカがイラクに対して武力行使をするとした会見でのことでした。
暗幕を掛けたのは誰か。その意図することは何か。
これは実際にあったことのようですね。この他にも、9.11のアメリカ同時多発テロなど史実を織り交ぜて描かれています。
ピカソが『ゲルニカ』の制作に取りかかり、愛人のドラ・マールがその過程を写真に収めたこと。

まるで現実をみているかのような詳細な文章に引き込まれた。
彼の生涯を語る時、その時代背景は切り離せません。そこにあったのは戦争です。
アートの力|戦争を描いた『ゲルニカ』

戦争。それを原田さんはこんな文章で表しています。
もっとも美しく、もっとも賢い、神の被創造物であるはずの人類が繰り返してきた、もっとも醜い行為
もう1度この本の表紙になっている絵を眺めました。美しいはずの人類がしてきたことの結果が、この『ゲルニカ』。

何度も絵を眺めた。特に本を読み終わったあとでは心に訴えてくるものがあるんだ。
「ピカソの戦争」展に『ゲルニカ』を出展しようと奮闘する瑤子。キーマンとなる人物は ルース・ロックフェラーとパルド・イグナシオです。彼らは架空の人物のようでした。
様々な国を渡り歩いてきた巨大な絵の保管場所をめぐって強奪戦がくり広げられます。
本の初めにピカソのある言葉が書いてありました。読む前と読んだ後では、この言葉の重さが違ってくるんですよね。ピカソの絵『ゲルニカ』は反戦を訴えています。

芸術によって人の心は変わるかもしれない。
『暗幕のゲルニカ』は作者の情熱が伝わる小説
『暗幕のゲルニカ』は、原田さんの情熱が存分に感じられる小説でした。

主人公の瑤子を通して、作者のアートを愛する気持ちが伝わってきたよ。
本を読まなかったら、ピカソの絵『ゲルニカ』を見ても不気味・・・の一言で終わっていたかもしれません。
それじゃ有名な絵を前にして、なんだか勿体ないですよね。『ゲルニカ』を見てみたくなると同時に、深く心酔しました。

なぜ1枚の絵がそれほど人の心をつかんで離さないのか。その理由がわかった気がする。


