『カレーライス』重松清|あらすじと感想文 (教科書)|僕は悪くない 「はじめての文学」 より
- 重松清『カレーライス』あらすじと感想文
- 『カレーライス』は子供の成長を描いた小説
- 「ぼくは悪くない」 冒頭について
- 【考察】ひろしくんはなぜ怒っているのか考えてみた
- 「ピリッと辛くて、ほんのり甘い」 に込められた気持ちを想像してみた
ぼくは悪くない。
重松清さん『カレーライス』あらすじと感想文です。『はじめての文学 重松清』に収録されている1話。国語の教科書でおなじみですね。
大人になって読むとほっこりするよ。
小学校6年生の教科書に掲載されているようです。ひろしくんと同じ学年になるのですね。今の6年生が読んだらどんな風に感じるのか聞いてみたくなりました。
重松清『カレーライス』あらすじ
子どもの成長を感じる物語
ぼくは悪くない。だから、絶対に 「ごめんなさい」 は言わない。言うもんか、お父さんなんかに。カレーライスを通じて子どもの成長を描いた、ピリッと辛くてほんのり甘い物語。「カレーライス」 より。
※『はじめての文学』の中には「カレーライス」を含めた8つの物語が収録されています。
「カレーライス」は子どもの成長を感じる物語
重松清さん『カレーライス』は、子どもの成長が感じられる1話です。
子どもだと思っていた主人公・ひろしくん(小学校6年生)が、いつの間にか中辛カレーが食べれるようになっていた。それに気づいた父親が嬉しそうで和やかな気持ちになりました。
甘口の特製カレーから中辛の特製カレーへ。
まだ6年生。でももう6年生なんだよね。
大人になってから読むと、父親とひろしくんの目線で読むことができます。子供が成長して嬉しい気持ちもわかるし、子ども扱いしないで!という反抗期のひろしくんの気持ちも理解できる。
楽しく読めたよ。
『カレーライス』感想文|ひろしくんが怒った理由と中辛のカレー
『カレーライス』は、小学校6年生のぼく(ひろしくん)の一人称で語られています。
子ども扱いされたくないから、自分が悪いのだけれど、なかなかあやまれないんだね。
気持ち分かるなぁ・・・。ちょうど反抗期なんです。もどかしい気持ちが伝わってきて懐かしくなりました。
「ぼくは悪くない」冒頭が印象的
冒頭の「ぼくは悪くない」が印象的です。
ぼくは悪くない。だから、絶対に「ごめんなさい」は言わない。言うもんか、お父さんなんかに
お父さんにゲームのコードを引っこ抜かれて怒っているぼく。でもその前に1日30分というゲーム時間を守らなかった彼も悪いから、どっちもどっちかな。
ひろしくんのお家ではお母さんも働いていて、帰りが遅くなると「お父さんウィーク」(代わりにお父さんが早めに帰ってくる週) になるようです。
なんだか気まずい雰囲気。
「お父さんウィーク」が始まるのに、ひろしくんは謝ろうとしません。お母さんはお父さんの味方です。
お母さんはいつだって、お父さんの味方だ。それがくやしかったから、何があっても絶対にあやまるもんか、と心に決めた
ひろしくんが、こんなに怒っているのはなぜだろう?
お父さんがゲームのコードを抜いたから?・・・それだけではないような気がします。ひろしくんの気持ちを考えてみました。
ぼく(ひろしくん)はなぜ怒っているのか考えてみた
ひろしくんが怒っていたのは、お父さんがいつまでも子供扱いするからです。
きっかけはゲームのコードを抜いたことだけど、それだけではありません。分かりやすいように起こったことを時系列に沿ってまとめました。
- ひろしくんは1日30分の約束を破ってゲームをやっていた
- お父さんが、いきなりゲーム機のコードを抜いた(セーブデータが消えた)
- お母さんはいつもお父さんの味方
- お父さんが甘口カレーライスをつくる
お父さんがゲーム機のコードを抜いたのがきっかけになったのは間違いないでしょうね。でもきっとそれだけではないんです。
お父さんがひろしくんに作るのは特製の甘口カレーライスでした。でもひろしくんは小学6年生。もうピリッとした中辛カレーの美味しさがわかる年頃になっていました。
いつまでも子供扱いされることに不満があった。
ぼくは甘口カレーが好きだけどな。
私は中辛が好き。でも無性に甘口が食べたくなることもあるよ。
もう甘口じゃなくて中辛カレー|子供の成長を喜ぶ親心にも注目
お父さんが風邪をひいて、ひろしくんと一緒にカレーライスを作っているところを想像するとほっこりしました。
ここでようやく、お父さんはひろしくんが中辛カレーを食べれることに気づきます。
「おまえ、もう『中辛』なのか?」
お父さん、なんだか嬉しそうでした。子供が成長するのを感じるのは、親にとって大きな喜びですね。
ピリッと辛くて、ほんのり甘い特製の中辛カレーに込められた気持ち
ラストの文章がまた良かったです。
ぼくたちの特製カレーは、ぴりっとからくて、でも、ほんのりあまかった
ピリッと辛くて、ほんのり甘いカレーライス。
ひろしくんはお父さんに謝らなかったけど、お父さんが嬉しそうにしていたから、ひろしくんも嬉しくなったようです。
子ども扱いされたり、お父さんに反抗してモヤモヤしていたり(ピリッと辛くて)。でも中辛カレーを食べれるようになったことで、お父さんに大人として認められて嬉しかったこと(ほんのり甘い)。
そんなひろしくんの、ピリッと辛くてほんのり甘い気持ちが想像できました。
ピリッと辛い方が甘みが引き立つんだよね。
中辛カレーが食べたくなってきた。
重松清『カレーライス』感想まとめ|子どもの成長を描いた物語
カレーライスを通じて子どもの成長を描いた話。子どもを育てる親の喜びも感じられる。
ひろしくんの一人称だけど、お父さんの嬉しい気持ちもうかがえます。子供と一緒に過ごす時間が、お母さんに比べて少ないお父さん。ひろしくんとの時間は幸せですね。
何気ない日常の中にも発見があったり、幸せを感じたりして。そういう時間って大切。
もうすぐひろしくんは中学生になります。小学6年生のひろしくんを見れるのは今だけ。
子どもの成長を見つめる親は、とても貴重な体験をしているんじゃないかな。・・・とは言え、子育ての最中はそんなこと考えるヒマもないくらい大変。
子供が大きくなってひと息ついた時に、かけがえのない思い出に変わるんだよね、きっと。