- 安房直子さん『だれも知らない時間』あらすじと感想文
- 秘密の時間について
- 切なさについて
- 『銀河鉄道の夜』の「さそりの火」を連想したこと
秘密の時間をわけてあげる。
安房直子さん『だれも知らない時間』感想です。カメから貰った秘密の1時間。もしもそんな時間があったらどう使いますか?
『だれも知らない時間』簡単なあらすじ
だれも知らない秘密の時間
ある時、漁師の良太は200年も生きている大きなカメに時間をわけてもらいます。1日に1時間ずつ。その時間で彼がやったのは・・・。
『だれも知らない時間』感想文
1日48時間あればいいのにとよく思います。読みたい本も多いし、録画した映画も見たいし、ゲームもしたい。なのに時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。
『だれも知らない時間』はとても魅力的に感じました。
秘密の時間

良太はカメから1日1時間だけ時間を分けてもらいます。
夜中の12時から1時間だけ。その間は何をしても誰にも気づかれません。良太以外の人の時間は止まっているのです。
大音量で歌を歌ったり、普段入れない所にも入れちゃったりもしますね。色々考えるけど、結局はいつも通り本を読んで過ごしそう。
秘密の1時間で良太は太鼓の練習をするのですが・・・。
ある時、だれも知らない時間なのに1人の少女が良太の前に現れます。さち子という名前の少女は、カメの夢の中の住人でした。
夢の世界とほろ苦さ
『だれも知らない時間』は、読後に切なさがあとをひきます。
さち子もカメから時間を1時間だけ分けてもらっていたのです。その時間の中で、島の病院までお母さんに会いに行っていました。
お母さんが亡くなり、海の上を走っていたときに時間が切れて海の中に落ちてしまう。海の中にあったのは、カメの夢の中の世界でした。
『だれも知らない時間』の何が切ないかというと、カメの行いにあります。
さち子を現実の世界に戻してほしいとお願いする良太。カメのとった行動は・・・。
自らを犠牲にしてさち子を現実世界に戻すこと。
みんなの本当の幸いのために自分を犠牲にして他人の幸せを願う精神は、なかなか真似ができません。そして切ない・・・。
本を閉じた今もまだ余韻が残っています。何気ない日常のふとした時に思い出す物語。安房直子さんの童話はそんな物語です。


