『だれも知らない時間』あらすじ・感想文|秘密の時間と夢の世界|安房直子
- 『だれも知らない時間』あらすじと感想文
- 秘密の時間
- 切なさについて
- 『銀河鉄道の夜』の「さそりの火」を連想したこと
秘密の時間をわけてあげる。
安房直子さん『だれも知らない時間』感想です。カメから貰った秘密の1時間。
もしも、1時間だけ余分にあったらどう使いますか?
とても魅力的だよね。
『だれも知らない時間』簡単なあらすじ
だれも知らない秘密の時間
ある時、漁師の良太は200年も生きている大きなカメに時間をわけてもらいます。1日に1時間ずつ。その時間で彼がやったのは・・・。
『だれも知らない時間』感想文
もしも、1日に1時間ずつもらえたら・・・。
1日24時間じゃ足りないと、よく思います。読みたい本も多いし、録画した映画も見たいし、ゲームもしたい。なのに時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。
『だれも知らない時間』は、とても魅力的に感じたよ。
秘密の時間
良太はカメから1日1時間だけ時間を分けてもらいます。
夜中の12時から1時間だけ。その間は何をしても誰にも気づかれません。良太以外の人の時間は止まっているのです。
なんて魅力的な時間。私だったら何をするだろう。
大音量で歌を歌ったり、普段入れない所にも入れちゃったりもしますね。色々考えるけど、結局はいつも通り本を読んで過ごしそう。
秘密の1時間で、良太は太鼓の練習をするのだけど・・・。
だれも知らない時間なのに、1人の少女が良太の前に現れます。さち子という名前の少女はカメの夢の中の住人でした。
夢の世界とほろ苦さ|自己犠牲の精神
読後は切なさがあとをひく『だれも知らない時間』。
さち子もカメから時間を1時間だけ分けてもらっていたのです。その時間の中で、島の病院までお母さんに会いに行っていました。
でもお母さんが亡くなり、海の上を走っていたときに時間が切れて海の中に落ちてしまう。
海の中にあったのは、カメの夢の中の世界だよ。
『だれも知らない時間』の何が切ないかというと、カメの行いにあるんです。
さち子を現実の世界に戻してほしいとお願いする良太。カメがとった行動は・・・。
自らを犠牲にして、さち子を現実世界に戻すこと。
自己犠牲の精神ですね。自分を犠牲にして他人の幸せを願う精神は、なかなか真似ができません。そして切ない・・・。
宮沢賢治さん『銀河鉄道の夜』に出てくる「さそりの火」を連想した。
本を閉じた今もまだ余韻が残っています。何気ない日常の、ふとした時に思い出す物語。