- 教科書作品『ちいちゃんのかげおくり』あらすじと感想・解釈
- 戦争の悲惨さ
- ちいちゃんは なぜ死んでしまったの?
- 【解説】2つの 「かげおくり」 の違い
あまんきみこさんが描く戦争の悲惨さ。
あまんきみこさん『ちいちゃんのかげおくり』あらすじと感想です。小学校3年の教科書に掲載されている物語をもう1度よみました。
ちいちゃんを通して「戦争の悲惨さ」が描かれています。
絵本も出版されていますが、私が読んだのは『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』に収められている1話です。
『ちいちゃんのかげおくり』あらすじ
教科書の名作!
夏の夜に空襲警報が鳴りひびき、ちいちゃん一家は外へとびだしました。でも逃げる途中で、ちいちゃんは家族とはぐれてしまうのです。
『ちいちゃんのかげおくり』感想・解釈
切ない・・・と一言で片付けてしまえない深い悲しみがあとをひきました。
戦争の悲惨さが描かれた『ちいちゃんのかげおくり』
『ちいちゃんのかげおくり』は、第2次世界大戦の悲惨さが描かれたお話です。
児童文学だけど大人が読んでも心に響く。忘れている人には、ぜひもう一度読んでもらいたい物語です。
幼いちいちゃんが戦争によって家族を亡くし、自らも死んでしまいます。戦争がなければ家族もバラバラにならず、きっと幸せに生きたのでしょうね。
悲惨な戦争を、あまんきみこさんは優しく淡々と綴っていました。決して声を荒らげて叫んではいません。
ふんわりと悲しみを包み込んでくれる描き方に心が静まります。
ちいちゃんは、なぜ死んでしまったの?

空襲でお母さんとお兄ちゃんとはぐれて、知らないおじさんに避難場所まで連れられたちいちゃん。
家の焼け跡に戻ったときも近所のおばさんに助けを求めることもできたはずです。
でもちいちゃんはそうしませんでした。お母さんに会えることを信じて待ち続けます。最後は願いが叶い、空の上で家族と一緒になれたのだけど・・・。
ちいちゃんが死んでしまった理由
独りで生きることよりも、家族と一緒になる道(死)を選んだ。
ちいちゃんにとって家族はかけがえのないものだったのですね。仲の良い家族だったから、悲しいけど妙に納得しました。
【解説】2つの「かげおくり」の違いが悲しさを誘う
印象に残ったところ
『ちいちゃんのかげおくり』は「かげおくり」の描写が2箇所でてきます。そのシーンが強く印象に残りました。
同じように見えても明らかに違う1つ目と2つ目の描写。悲しくて泣けてきます。
「かげおくり」とは
「かげおくり」は、漢字で「影送り」と書きます。
とお、かぞえるあいだ、かげぼうしを じっと 見つめるのさ。とお、といったら 空を 見上げる。すると、かげぼうしが そっくり 空に うつってみえる。
10秒間、瞬きせずに影をみつめてから空を見上げると、空に影がうつって見えるというものです。
ちいちゃんは影送りの遊びをお父さんから教えてもらいます。お父さんが戦争に招集される前、空襲でお母さんとはぐれる前のことです。
お父さんと、お母さんと、お兄ちゃんと。4人そろって影送りをしました。幸せな思い出だったのでしょうね。
「かげおくり」に込めた願い
1つ目と2つ目のかげおくり
- 1つ目は、家族みんなそろっての「かげおくり」
- 2つ目は、家族とはぐれたあとの「かげおくり」
ほんの少しの月日しかたってないのに、あまりにも変わってしまった環境。戦争で家族が犠牲になり、1人残されたちいちゃんは、どんな気持ちで「かげおくり」をしたのか・・・。
家族4人でやった「かげおくり」のことを思い描きながら、きっとあの時のように空に4人が映るはずだと。そう願っていたに違いありません。
ちいちゃんの目線で描かれた戦争
あまんきみこさんは、ちいちゃんの目線で戦争の悲惨さを訴えていました。ポイントをまとめました。
- 1番大切な家族が奪われてしまった
- まだ幼いちいちゃんは、現状を理解できずにお母さんを待ち続けた
- 最後はちいちゃんも死んでしまった
悲しい、理不尽などといった悲観的な言葉は一切、書かれていないんです。それでも戦争の爪痕がどんなものなのかが伝わってきました。


