『ぶどう酒びんのふしぎな旅』藤城清治【あらすじと感想】アンデルセンとともに
- 絵本『ぶどう酒びんのふしぎな旅』あらすじと感想
- それぞれの人生
- すれ違う気持ち
- 藤城清治さん60年の想い
人生の喜びと、悲しみと、はかなさと。
藤城清治さんの絵本『ぶどう酒びんのふしぎな旅』感想です。アンデルセンの『びんの首』を元に作られた藤城清治さんの影絵本。
「ぼくの原点はアンデルセン童話だ。」と語る藤城さんの想いが伝わってきました。
ステキな絵本だよ。
『ぶどう酒びんのふしぎな旅』あらすじ
藤城清治さん影絵本
ガラス工場で初めて生命を吹き込まれ、ぶどう酒を詰められたビン。様々な人の手に渡り旅をするビンがたどりついた先は・・・。
『ぶどう酒びんのふしぎな旅』感想
『ぶどう酒びんのふしぎな旅』は、人生の喜びと悲しみとはかなさを描いた物語でした。
アンデルセンの絵本って深いね。
それぞれの人生
この絵本は、びんを主人公に描かれています。
ビンって眺めているだけで綺麗ですよね。色とりどり、たくさんの種類があって。子供の頃はラムネのびんが好きでした。
あの瓶に入っている不思議なビー玉を何度取ろうとしたことか・・・。
ぶどう酒びんは人間のように心を持っていました。ガラス工場で初めて生命を吹き込まれ、ぶどう酒を詰められます。
まずは毛皮商人のところへ。そして お嬢さんと出会いました。
びんはお嬢さんの1番幸せな時を1緒に過ごします。航海士になった恋人との結婚を約束した日。でも約束は果たされることはありませんでした。びんは捨てられ違う人の元へ。
喜びだったり、悲しみだったり、儚さだったり・・・。
びんの旅を通して、それぞれの人々の人生が垣間見えるんですよね。
すれ違う気持ち
最後には割れてしまうんです。でも上の口の部分はそのままの形で残ります。やがて屋根裏部屋のお婆さんの飼っている鳥かごに逆さまに吊るされました。
このお婆さんが誰なのか。
びんにとっては最も思い入れのある人だったのだけど、お互いに気付かずすれ違ってしまうんです。・・・もどかしさと切なさを感じました。
知らなければ知らないなりに幸せなんだろうけど、気付けていればもっと幸せを実感できる。
何気なく生活している中で、大切な人や物がすぐ近くにあるのに気付かずすれ違ってしまう。そんなことが実際あるのかもしれません。
少し勿体ないような気持ちになります。重要な物や大切な人であればあるほどに・・・。
できれば気付きたいものだよね。
藤城清治さん60年の想い
『ぶどう酒びんのふしぎな旅』は、藤城さんが26歳の時(1950年)に最初の絵本としてモノクロの影絵で出版されました。
カラーでもう一度この物語を絵本にしたいとの思いが強くなり、86歳の誕生日を目標にして作った作品です。
最初の絵本刊行からちょうど60年目にあたるそうだよ。
藤城さんの想いがつまっていて、あとがきを読んでジーンとしました。原点は今も変わらない。
多くの人に愛されている藤城さんをこれからもずっと応援していきたいです。