『ごんぎつね』あらすじ・感想文|悲しいラストの解釈・解説|新美南吉が伝えたいこと(教科書)
- 新美南吉『ごんぎつね』あらすじと感想文
- 悲しみを誘う『ごんぎつね』
- ごんの後悔
- ごんの償い
- 【解釈】「ごんぎつね」 のラストと ごんの気持ち
- 【考察】作者が伝えたいことは 「贖罪」
- 兵十の気持ち
悲しいラストが意味するのは?
新美南吉さん『ごんぎつね』あらすじと感想文です。小学4年生の教科書に掲載されている作品。ラストが悲しいので、トラウマになっている人もいるかもしれませんね。
大人になてから読むと、感じ方が違うことに気づいたよ。
ごんも可哀想だけど、実は兵十も辛いのではないかと。
『ごんぎつね』簡単なあらすじ
泣ける!教科書の名作
イタズラばかりしている小ぎつね・ごん。ある日、兵十が川で魚を捕っているのを見つけ、イタズラ心から 彼が捕った魚やウナギを逃がしてしまう。それから十日ほど後、兵十の母は亡くなった。ごんはウナギを逃がした後悔から、鰯、栗や松茸などを兵十の家に届け続ける。やがて、ごんが家に忍び込んだ気配に気づいた兵十は 悪戯に来たのだと思い、ごんを撃ってしまうのだった・・・。
『ごんぎつね』あらすじ・感想文
私が読んだのは『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』に収められている『ごん狐』です。
ラストだけは強烈に印象に残っていました。後味が悪いというか、切ないというか・・・。
楽しい話じゃないから、子どもの頃はあまり好きじゃなかった。
でも大人になって読んでみると 深い話だと感じました。ごんの気持ちと、兵十の気持ちの両方を想像できるからです。
悲しみを誘う『ごんぎつね』
『ごんぎつね』が こんなにもインパクト大なのは、兵十がごんを火縄銃でうってしまうラストにあります。
兵十の最後の言葉は、未だに忘れられない。
呆然とする兵十と倒れたごん。イタズラをしたごんの贖罪の気持ちは、彼が死んではじめて兵十に伝わったワケです。知らなかったとは言え、兵十は・・・。
悲しさを誘うラスト。
そう言えば、以前に小学生が書いた感想文が話題になりました。
「ごんがかわいそう」 という感想の一方で、「やったことの報いは必ず受けるもの」 と、ごんに対してシビアな感想を持った子もいたという記事です。
様々な感想がでてくる『ごんぎつね』。悲しみの余韻が後をひきますね。
イタズラ好きの小狐・ごんの後悔
ごんは兵十にいたずらをします。兵十が捕まえた魚やうなぎを逃がしてしまう・・・。
いたずらをするのは 裏を返せば、誰かに構ってもらいたいからです。
ごんは寂しかったのかな。
ごんは一人ぼっちでした。ごんの気持ちがわかるから、悪戯はいけないことだけど赦したくなってくるんです。
やがて兵十のお母さんが亡くなり、彼も一人ぼっちになりました。
ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった
ごんが後悔したのは兵十が捕ったうなぎを逃がしたことです。分かりやすく まとめました。
ちょっとした悪戯だけど、後悔することってあるよね。
ごんは申し訳ない気持ちでいっぱいになります。兵十も一人ぼっちになって、ごんは親近感がわいたのかもしれません。
ごんの償い
ごんは、うなぎを逃がしたかわりに鰯 (いわし) を盗んで兵十の家に放り投げました。・・・でも兵十は盗人と思われて、ぶん殴られてしまったようです。
兵十の顔に傷がついてるのを見て、今度は山で拾った栗や松茸を届け始めたごん。
少しの過ちは誰にでもあるものです。やってしまったことは消せません。だから後悔して、自分がやったことに ちゃんと向き合うことが大事です。
反省して償う気持ちが大切。
たとえ相手に伝わらなくても、償う気持ちは尊く感じました。
償いって 見返りを求めるものではないけど、ごんの気持ちが兵十に伝わっていたら思うと切なくなった。
そうしたらまた違った結末になっていたかもしれませんね。
【解釈】「ごんぎつね」 の悲しいラスト|ごんの気持ちを解説
小学生のときに教科書で初めて『ごんぎつね』を読んで、ごんが可哀想に思いました。
ごんを見かけた兵十は、また悪戯をしにきたと思い込み、戸口を出ようとするごんを火縄銃でうつのです。でもそには栗や松茸が置いてあって・・・。
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。」
この言葉を言ったときの兵十の気持ちを思うと、いたたまれなくなります。
悪戯しにきたと思っていたら違った。栗や松茸を届けてくれていたのは、ごんだった。
ここでやっと気づくんだね。
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
頷いたごんはどういった気持ちだったのか。
実は教科書に掲載されている『ごんぎつね』は、少し書き換えられているんです。
本当はごんが撃たれたあと、ごんの気持ちに気づいた兵十に対して 「うれしくなりました」 という一文があったようです。その一文をカットして、「うなずきました」 とした。
その方が、ごんの気持ちを想像できるから教科書にしては良いのかな。
最後に兵十に気づいて貰えたことで、ごんは嬉しかったのかと思うと救われる気持ちになりました。
【考察】作者・新美南吉が伝えたいことは 「贖罪」
作者が伝えたいことと、テーマは「贖罪」です。←罪を償うこと。
ごんを通して「贖罪」の気持ちが伝わってきました。
- ごんが悪戯をして、魚やうなぎを逃がした (ごんの罪)
- 兵十の母が亡くなった (もしかしたら、うなぎを食べたかったのかも?)
- ごんは悪い事をしたと反省する (後悔)
- 栗や松茸を兵十に届ける (償い)
悪い事をしたら反省して償いをすることの大切さを伝えているんだね。
やってしまったことはもう消せない(なかったことにできない)から、その後どうするかが重要です。
もう一度読んで考えた兵十の気持ち
大人になって『ごんぎつね』を読むと、子どものときには考えなかった兵十の気持ちを想像できました。
撃たれたごんは もちろん可哀想なことに変わりはないけど、撃った方の兵十はどうだろうか。
後悔しているんじゃないだろうか。
しかも兵十はこれからも生きていくんです。重い十字架を背負ったままで。それを想像すると心が重くなりました。
重松清さんの『十字架』が思い出されます。いじめを扱った小説。いじめた方も重い十字架を背負うことになる。それも一生です。
死んでしまったごんも、死なせてしまった兵十も救われない。命を奪うということは、そういうことなんですよね。
小学生のときには考えることもなかった兵十の気持ち。大人になった今だから想像できます。
『ごんぎつね』は大人が読んでも深い物語だった。