- オスカー・ワイルド×清川あさみ『幸せな王子』絵本のあらすじと感想
- 糸と布とビーズの繊細なアート
- 優しいツバメ
- 自己犠牲の精神
- ほんとうの幸せ
- 幸福の連鎖
ネタバレあります。
『幸せな王子』
オスカー・ワイルド (原作)
清川あさみ (絵)
金原瑞人 (訳)
「幸福な王子」って、ちゃんと読んだことなかったんですよね。あらすじや内容は知っていましたが、いざ読んでみるとびっくりしました。
『幸せな王子』あらすじ
糸と布とビーズの「アート」な絵本
『幸せな王子』を元に、清川あさみが描くアート絵本。
『幸せな王子』感想
ため息をついてしまうくらい繊細で綺麗な絵本。自己犠牲の愛、そして健気なツバメ。胸が熱くなりました。
糸と布とビーズの繊細なアート

ひとことで言うと
アートな絵本です。使われているのは糸と布とビーズ。清川さんの手にかかると、こんなにも美しい作品になってしまう。繊細で綺麗で芸術性が高い本です。
糸と布とビーズでこんなに繊細な作品ができるなんて びっくりです。清川あさみさんの絵本は前にも読んだことがありました (「銀河鉄道の夜」です)。
今回も見とれてしまいました。
優しいツバメ
私が理解していた「幸せな王子」というのは、宝石で作られた王子さまが貧しい人たちに自分の宝石を分け与える・・・というものです。
1羽のツバメが宝石を届けることは知っていましたが、絵本を読んでみたらツバメさんに感動してしまいました。
エジプトに行こうとしていた小さなツバメ。
王子さまに頼まれて宝石を届けます。ルビーにサファイア、金箔・・・。ひと晩だけのはずが、次の日も、その次の日も。
自己犠牲の精神

『幸せな王子』は 自分よりも他者の幸せを願う精神が描かれています。自己犠牲の精神です。
楽しい人生を歩んできた「幸せな王子」。美しいものに囲まれて涙を知らずに育ち、そのまま人生を終えたあとに宝石で作られました。
自分が楽しければそれで幸せだと思っていた―。
でも貧しい人たちの存在に気づくんです。そして自分が身につけている宝石を貧しい人たちに分け与える。光り輝いていた宝石はひとつもなくなり、王子さまの像は壊されてしまいます。
最後は王子さまとツバメが天国で幸せになるというハッピー・エンド (?) です。
得られるものによって 良かったかそうでないのか変わってきますよね。小さなことなら我慢してしまいますが、それが続くとストレスになってしまいます。
ほんとうの幸せ
「ほんとうの幸せ」とは?
何が幸せなのか価値観は人それぞれです。
私の大好きな『銀河鉄道の夜』や、以前レビューをかきました刀根さんの絵本『なんにもできなかったとり』でも「自己犠牲の上にある幸せ」が描かれていました。
自分が楽しい人生を送れたのは誰かのおかげということを理解して初めて「ほんとうの幸せ」を得られるのかもしれません。
ここで描かれている王子さまのように。たとえ、それが自己犠牲だったとしても。
幸福の連鎖
自分は幸福だったから次はあなたに。
王子さまは、そう思っていたのかな。とても素晴らしいです。「幸せ」って連鎖していくものなのかもしれませんね。
心にゆとりがないとなかなかそれが難しい。周りで少しゴタゴタがあったこともあり「心のゆとり」って大切なんだなと実感しています。
本書の王子さまやツバメのように、ゆとりを持ちつつ人に優しくありたいです。


