『宇宙のみなしご』あらすじ・ネタバレ感想文と解説、名言も!森絵都
- 『宇宙のみなしご』あらすじと感想文・解説
- すみれちゃんと不登校の理由
- 子どもと大人のちがい
- 屋根のぼり
- 七瀬さんの気持ちとキオスクの飛び降り騒動
- 『宇宙のみなしご』名言と解釈
少しだけネタバレあります。
ぼくたちは宇宙のみなしご
森絵都さんの小説『宇宙のみなしご』読書感想文です。児童文学なので読みやすいですね。心に響く。
学生時代を思い出して懐かしくなりました。
タイトルが素敵だよね。
『宇宙のみなしご』あらすじ
思春期の中学生の物語
中学2年生の陽子と1つ歳下の弟・リンは いつも2人で自己流の遊びを生み出してきた。新しく見つけた遊び。それは真夜中に近所の家に忍び込んで屋根にのぼること。同じクラスの七瀬さんも加わり、3人で屋根にのぼっていたら、いじめられっ子・キオスクに見られてしまい・・・。第33回野間児童文芸新人賞。
『宇宙のみなしご』ネタバレ読書感想文
森さんの本を読むと学生時代を思い出します。くすぐったくて懐かしい気持ちになるんですよね。こんなこともあったなと・・・。
『宇宙のみなしご』に出てくる中学生たちは、一生懸命、背伸びをしている子ばかりでした。
思春期だから悩みも尽きないですね。そういえば、私もそうだったかも。
懐かしいな。
不在の担任・すみれちゃんと不登校の理由
主人公・陽子の担任の先生は変わったばかり。前の担任・すみれちゃんがいない学校です。いないのに陽子の中に占める割合は大きくて存在感があるのが印象的でした。
中学校の時って、担任の先生が誰になるのかソワソワしていた記憶があるよ。
けっこう重要なことなんですよね、誰が担任になるのかは。
不登校になった陽子やキオスクを見ていて、子どもと大人の違いに思いを馳せました。
思春期の子どもたちって、些細なことでも傷つくし、不登校の理由なんて分からなかったりします。でも、大人は理由づけをしたくなるんですよね。
陽子とリンが見つけたあそび「屋根のぼり」
陽子の両親は仕事で忙しく夜も帰らないことが度々。寂しさを紛らわせるために、陽子と弟のリンはたくさんの遊びを実践します。
「屋根のぼり」が楽しそうでした。真夜中に他所の家の屋根にこっそりのぼる遊びです。
自力でのぼった屋根にひざを抱えて座るとき、すーっと息を吸いこみながら見上げるその空を、月を、星ぼしを、雲のかけらを、まるごと自分たちのものにしたような気分にひたれるのだ
初めは陽子とリンだけの遊びだったけど、七瀬さんも加わりました。そしてクラスのいじめられっ子・キオスクも・・・。
彼ら4人は「屋根のぼりに」何を求めていたんだろう?
七瀬さんの気持ち
陽子のクラスメイトでリンと同じ陸上部の七瀬さんが好きです。
人の目を気にしていた七瀬さんは、陽子に憧れていたんですよね。
陽子のようになりたくて、一緒に屋根に登っていました。でも七瀬さんは七瀬さんのまま。陽子にはなれません。
私も学生のころと社会人に成り立てのころは背伸びをしていました。ひとの目も気にしていたし、自分のことが嫌いになったりも・・・。
だから七瀬さんの気持ちが少しだけわかるんだ。
歳を重ねた今はこれが私なんだとあきらめ半分。あとの半分は、自分の個性をつぶさないようにしようと思えるようになりました。
七瀬さんは陽子のようにはなれないと絶望するけど、吹っ切れたようですね。・・・安心しました。
キオスクの自殺騒動
「屋根のぼり」の日から不登校になったキオスク。彼は屋根に登ることができなかったのです。
不登校から3週間近くたったある日、彼は自殺騒動を起こしました。真夜中に自分の部屋の窓から飛び降りて・・・。
周りから自殺だと思われていたけど、実はそうじゃなかったのです。
「屋根のぼり」をきっかけにして自分を変えたかったんだ。
変わりたいと思う気持ちと、きっかけ
陽子とリンと七瀬さんとキオスク。子どもたちはみんな、それぞれ悩みを抱えていました。七瀬さんとキオスクは、自分が好きになれずに変わりたいと思う気持ちです。
屋根に登れば、きっと自分を変えられる。
「屋根のぼり」は、陽子とリンにとって寂しさを紛らわせるための遊びの1つ。七瀬さんとキオスクにとっては、気持ちを切り替えるためのきっかけになりました。
きっかけって大切だよね。
『宇宙のみなしご』名言と解釈
キオスクの言葉で語られた、元担任・すみれちゃんが言ったことが心に染みました。
『宇宙のみなしご』名言
ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから。ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなしごだから。自分の力できらきら輝いてないと、宇宙の闇にのみこまれて消えちゃうんだよ
大人も子どもも、1番しんどいときはひとりで切りぬけるしかないということ。でもつらい時は手と手を取りあって休憩することも大切です。
「屋根のぼり」をした4人が手を繋ぐシーンが好きだよ。心が温まった。
『宇宙のみなしご』は大人にもおすすめ!心に響く児童文学
『宇宙のみなしご』は、大人が読んでも心に響く物語でした。
森絵都さんの児童文学、やっぱり良いです。ホンワカしているようで鋭く、リアルな子どもの気持ちを描いていました。それもキレイごとだけじゃないんですよね。
だから懐かしさとともに共感できるのかも。