『おおきな木』シェル・シルヴァスタイン【あらすじと感想】無償の愛を描いた絵本
- 『おおきな木』あらすじと感想文
- 変わらぬ愛
- 与え続ける木
- 無償の愛
わたしにはもうなにもないの。あなたにあげられるものが―
シルヴァスタインの絵本『おおきな木』感想です。シンプルな絵とことばが描かれていました。シンプルなのに心がゆれる。
描かれているのは無償の愛です。
シルヴァスタインの絵本は、以前に読んだ『ぼくを探しに』で2冊目。『ぼくを探しに』も今回よんだ『おおきな木』も、読み終わったときに感じる思いがありました。
切ないけど、ほっこりもしたよ。
『おおきな木』あらすじ
無償の愛に心が奪われる
少年の成長を健気に見守るおおきな木。子どものことを無条件で愛することのできる強さと優しさ。無償の愛を描いた絵本。
『おおきな木』感想文
『おおきな木』は一本の木と少年のふれあいを描いた物語です。
少年は木のことが大好きで、木も少年のことが大好き。でも 時がたてば気持ちは変わりゆくものです。木の愛情はそのままだけど、男の子は・・・。
大きな愛を感じたよ。
変わらぬ愛
いつまでも変わらぬ愛をそそぎ続ける木と身勝手な少年。男の子は成長して木よりも大切なものができます。
男の子、身勝手・・・と思いながら読んでいたけど、いや待てよ。少年=私かも・・・と思い直しました。
男の子を包み込む木の深い愛情を感じるんです。
男の子に変わらぬ愛を与え続ける木は母のようだ。
子どものことを無条件で愛することのできる強さと優しさ。木は男の子の心が離れても変わらぬ愛を捧げます。
与え続ける木
村上春樹さん訳の絵本を読みました。
原題は『The Giving Tree』、「与える木」ですね。
原題の通り、自分の持っているものを彼に与え続ける木。彼がお金がほしいと言えば、はっぱとりんごを与えてそれを売りなさいと。自分を犠牲にしながらも男の子の幸せを一心に願う・・・。
無償の愛です。
無償の愛について
私は木のようにはできないです。自分を犠牲にしながらも相手の幸せを願うなんて・・・。
ほんとに木は幸せなの?
これまで無償の愛 (自己犠牲の愛) を描いた絵本を何冊か読みました。刀根さん『なんにもできなかったとり』、オスカーワイルド『幸せな王子』、宮沢賢治さん『銀河鉄道の夜』など。
正直、無償の愛 (自己犠牲の愛) については理解できずにいたのだけど・・・。
シルヴァスタインの絵本をよんで、母が子に注ぐ愛情だと気づいたら無償の愛もわからなくもないかなと思いました。
男の子に自分が持っているもの全てをあげ尽くして、きりかぶになってしまった大きな木。切なくなりますね。
他者の幸せを願う気持ちに”真実の愛”を感じます。
『銀河鉄道の夜』のジョバンニを思いました。
宮沢賢治さんの『銀河鉄道の夜』に”本当の幸い”というのが何度も出てきます。ジョバンニが思うそれと、本書で描かれている愛情が同じように感じました。
本音を言うと、自己犠牲の愛は認めたくない自分もいるんだけどね。
『おおきな木』心に響く絵と文
絵も文もあっさりしている絵本『おおきな木』。それなのに心に響くものがありました。
よけいな言葉がなくてシンプル。それで読み手の心を動かすのだからすごいです。
読み手によって表情がかわる絵本。ラストはほっこりしたよ。