生命力あふれる絵本。
藤城清治 × 宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』
昨年、宮沢賢治賞を受賞したという藤城清治さん。今日はその中で有名な『セロ弾きのゴーシュ』を紹介します。
『セロ弾きのゴーシュ』あらすじ
力強い影絵本。
【あらすじ】
セロ弾きのゴーシュ。でも彼が奏でるセロの評判はあまり良くはありませんでした。ある日、彼の家に三毛猫がやってきて・・・。
『セロ弾きのゴーシュ』感想
私の好きな藤城清治さんの絵本。とても素敵でした。
力強い影絵の世界

藤城さんの切り絵は力強く、毎回魅了されてしまいます。この絵本も生命力に溢れていて見る人を引きつける。カミソリ一つでここまで表現するとは・・・。なんて凄いんだろう!!
特に主人公の表情が良かったです。まるで生きている人間のようでした。
宮沢賢治の世界に挑戦することによって、僕の影絵は発展してきた
・・・そう語る藤城さんの影絵は、宮沢賢治作品の世界観にピッタリです。絵と物語がマッチしていて独特な雰囲気を醸し出していますね。
悩める訪問者

夜中にゴーシュがセロの練習をしていると、とんとんと扉を叩く音がしました。
家に入って来たのは1匹の三毛猫。
怒っているゴーシュにトロイメライを弾いてくれとお願いします。猫は不眠症でした。ゴーシュは、そんな猫に「印度の虎狩り」を弾いて驚かせます。
昔アニメを見たことがあって、この猫とのやり取りが今も印象に残っているんですよね。彼の家には愉快な動物たちがやってきます。
鳥、たぬき、そして野ねずみ。それぞれ悩みや目的がありました。子供の頃見たアニメはなんだかよくわからないまま見ていましたが、絵本を読むと聞き流していた言葉の数々が重みを持って頭に入ってきます。
恥ずかしながら原作はまだ読んだことがないんです。この絵本を読むと原作も読んでみたい気持ちになりました。
病気の特効薬

ゴーシュが奏でる演奏は動物たちの病気の特効薬でした。
感心したのは、フィフティフィフティの関係だったことです。
動物たちの病気が治り、セロが上手くなる。まさに一石二鳥!!人のために何かをしてあげるというのは、自分にもいずれ返ってくるものなのかもしれませんね。
心境の変化
主人公の心境が変化していく様子が興味深かったです。
1番最初に訪ねてきたネコには怒りの感情しかなかったのですが、だんだんと優しくなっていく。人が持つ思いやりの気持ちが現れていて、人間らしさを感じました。
最後に気づくのです。真夜中の訪問者のおかげでセロが上達したことに。宮沢賢治さんの作品は、やはり他者への思いやりが感じられますね。