- 夏川草介さんの小説『新章 神様のカルテ』あらすじと感想文
- 『新章 神様のカルテ』読みどころ
- 膵癌患者・二木美桜について
- 矛盾だらけの大学病院
- 心に響いたことば (名言)
- まとめ『新章 神様のカルテ』を読んで思ったこと
少しだけネタバレあります。
大丈夫でないことも、全部含めてきっと大丈夫
夏川草介さんの小説『新章 神様のカルテ』感想文です。神様のカルテシリーズ1、2、3、0と続き5冊目。すべて読みました。
大学病院での話と家族の話がメインに描かれていました。
もくじ
『新章 神様のカルテ』あらすじ&登場人物
内科医・栗原一止を待ち受ける新たな試練!
信州の本庄病院から信濃大学医学部に入局した内科医の栗原一止。矛盾だらけの大学病院で、消化器内科医として勤務しながら 大学院生として研究を進めていた。多忙な日々も2年が過ぎたころ、29歳の膵癌患者と出会う。治療方法をめぐり、准教授と激しく衝突してしまうのだった。
- 栗原一止 (くりはらいちと) ・・・夏目漱石を敬愛する内科医。榛名からはイチさん、御嶽荘の住人からはドクトルと呼ばれている。
- 栗原榛名 (くりはらはるな) ・・・一止の妻。一止からはハルと呼ばれている。
- 栗原小春 (くりはらこはる) ・・・一止と榛名の娘。
- 新発田 (しばた) ・・・一止の後輩。一止から利休と呼ばれている。
- 宇佐美 (うさみ) ・・・信濃大学病院の准教授。病棟のベッドを管理している。
- 砂山次郎 (すなやまじろう) ・・・医学部時代から一止の知人。
- 進藤辰也 (しんどうたつや) ・・・一止の知人で 血液内科のエキスパート。一人娘・夏菜がいる。
- 二木美桜 (ふたつぎみお) ・・・ステージIVの膵癌患者
『新章 神様のカルテ』ネタバレ感想文
泣きました。このシリーズで泣かないことはまずない・・・というくらい、毎回毎回、泣いています。
『新章 神様のカルテ』は大学病院でのお話。大まかな読みどころは2つです。
- 矛盾だらけの大学病院と膵癌患者・二木美桜さんの治療
- 家族愛
本庄病院から大学病院に移った内科医・イチさん (栗原一止)。相変わらず真面目でユーモアたっぷりでした。
久々に 「神様のカルテ」 シリーズを読んだので、夏川さんの独特なユーモア (毒) が馴染めず・・・。ちょっとクドイかなと感じました。
ステージIV 膵癌患者・二木美桜

二木美桜さん29歳、ステージIV 膵癌患者をイチさんが担当します。治療を続ける中でイチさんの言葉に泣きました。
あと三か月の命なら意味がないと思いますか。一か月しか生きられないなら死んだほうがマシですか。そんなことはないはずだ
二木さんに 「生きるのは義務」 と言い放つイチさん。夏川さんが描く言葉ひとつひとつが胸に響きます。
医師の夏川さんだから書ける小説ですね。イチさんの言葉に医師の真摯な気持ちが表れていました。
矛盾だらけの大学病院
舞台は大学病院。山崎豊子さんの『白い巨塔』の影響が強く、何となくドロドロしたところなのかなと先入観がありました。
たっひとりの膵癌患者を退院させることが簡単ではないこと。
知識を持った医師がたくさんいて、最新の設備がそろっていて特別な治療ができる場所なのに・・・。
二木さんの治療を止めて、最後は家に帰りたいという本人の希望通り退院させようとするイチさん。退院カンファレンスをするも、希望通りに退院させるのは簡単ではありませんでした。
揉めに揉めて、熱くなった後輩の利休 (新発田) に紙コップの水を浴びせかけ (これも愛情)、イチさんが援護したシーンが良かったです。
矛盾だらけの大学病院で、患者のことだけを考えて行動をおこす彼が輝いて見えました。
心に響いたことば (名言)

家族にもスポットが当たっていました。妻のハルさんと、娘の小春ちゃんです。
イチさんの身分は大学院生、土日はアルバイトという過酷な日々。ハルさんと二人三脚で小春ちゃんを育てています。
イチさんが患者さんに言った言葉と、ハルさんがイチさんに言った言葉が素敵でした。同じ言葉です。
心に響いたことば
大丈夫でないことも、全部含めてきっと大丈夫
大丈夫ではないけど、それも含めてきっと大丈夫。一人じゃないから。
誰かと共に歩んでいくこと。
がん患者・二木さんや、イチさんにも共に歩んでいく家族がいて、それがこんなにも励みになるんだと温かな気持ちになりました。
『新章 神様のカルテ』を読んで思ったこと
「神様のカルテ」 シリーズ、今回もとても良かったです。感じたことをまとめました。
- 生きているだけで誰かの支えになっている
- 人とのつながり (家族愛)
膵癌患者・二木さんを見ていると、生きていることが尊く思えました。病気は本当に理不尽です。健康な私は、それだけでも幸せ者だと。
イチさんの家族や二木さんの家族、御嶽荘の住人、イチさんの後輩・利休や大学病院の先生たち。人のつながりを感じました。
完璧な人なんていないから、みんな助け合って生きている。それはちっとも恥ずかしいことではありません。
そういう繋がりが自然に描かれていて、気持ちがほんのりと温かくなります。素敵な物語でした。

Amazonが運営するオーディオブック「Audible」なら、12万以上の作品が聴き放題!



