『staph スタフ』あらすじ・ネタバレ感想文|切ない不可逆性変化の罪|道尾秀介
- 『staph スタフ』あらすじと感想文
- 登場人物について
- 乳酸菌でおにぎりが美味しくなる!?
- スタフの意味
- 不可逆性変化の罪と黄色ブドウ球菌
少しだけネタバレあります。
この罪を救えますか?
道尾秀介さん『staph スタフ』感想です。赤い表紙に楽しそうな料理風景が目をひきますね。心にグッときました。
ランチワゴンで料理を売る女性が主人公のお話です。
道尾さんは、どうしてこんなに人間味のある登場人物が描けるんだろう。
人物描写が上手なんです。感情移入しっぱなしでした。
『staph スタフ』あらすじ
この罪を救えますか?
夏都は、ランチワゴンで生計をたてていた。ある日ひょんなことから中学生アイドル・カグヤと出会い、力になるのだが・・・。
『staph スタフ』ネタバレ感想文
一緒にいたいのに素直になれない子供心と、彼らが背負ってしまった罪。
そんなつもりじゃなかったのに、どんどんドツボにはまっていく。最後まで読むと切なくなりました。
ミステリーというよりも、家族に重点を置いた物語だった。
深みのあるキャラクター
道尾さんが描くキャラが深みがあって面白い。登場人物をまとめました。
他にも個性的な人物がたくさん出てきます。一見冷めてるように見えるアイドル・カグヤ。彼女のファンのオブ、オブラージ、タカミー、プーなど・・・。
みんな人間味があるんだよね。だから親しみやすく、本もサクサク読めた。
誘拐事件と一通のメール
主人公・夏都が間違えて誘拐されてされてしまう。待っていたのはアイドルのカグヤ率いるファンの子たちでした。
女優の寺田桃李子が室井杏子に送った昔のメールを消してくれと頼むカグヤ。どうやら夏都は室井杏子と間違えて誘拐されたようです。
乗りかかった船ということで放っておけない主人公は、彼女らを手伝うことに・・・。
病院のシーンではドキドキしたよ。
乳酸菌でおにぎりが美味しくなる!?
乳酸菌効果について、面白い小話がありました。
手で握ったおにぎりは時間が経つと美味しくなる(乳酸菌効果で時間が経つとうま味が増す)。
乳酸菌のことは知らなかったけど、手で握った方が美味しものだとは思っていました。
これを伝えにわざわざランチワゴンにやってきた菅沼。ちょっと変わった人物だけど微笑ましいです。
このおにぎりの下りが面白くて好き。
菅沼のキャラが際立っていました。でも最後まで読むと、子供の頃に背負った罪が明かされてキュンと切なくなるんです。
この小説は、菅沼の子供時代を初め3つの罪が描かれていました。不可逆性変化 (←再びもとの状態にはもどれないこと) の罪です。
スタフの意味|不可逆性変化の罪と黄色ブドウ球菌
道尾さんの小説はタイトルの意味が深いものばかりなんですよね。『staph スタフ』は、不可逆性変化の意味があります。
おにぎりを素手で握ると黄色ブドウ球菌が繁殖して食中毒を引き起こす可能性がある。黄色ブドウ球菌は誰もが持っている菌です。
それ自体に毒はなく、増殖過程で生産されるものに毒素があるんだね。
乳酸菌で美味しくなったおにぎりは、素手で握ることで黄色ブドウ球菌が繁殖するリスクがある。ひとたび増殖してしまうと もう元通りにはなりません。→すなわち、不可逆性変化です。
この物語の子供たちは、それぞれが思い悩んでいる子ばかりでした。道尾さんが描く子供は翳りがありますね。家族の愛に飢えています。
3つの罪。彼らは救われるのか?・・・切なくて子供たちを抱きしめてあげたくなりました。
『staph スタフ』一転する衝撃の結末
あなたはこの罪を救えますか?
帯に書いてあった言葉が胸に刺さりました。・・・救えなかった罪。悲しかったけど、最後にあの子の胸のうちを知れて良かったです。
最後の最後に物語は一転しました!さすが道尾さんですね。
まさかこんな展開になるとは思わなくて、涙がとまらなかった。