『ラットマン』あらすじ・ネタバレ感想文|思い込みの真実と過ち|道尾秀介
思い込みの真実と過ち。
道尾秀介さんの小説『ラットマン』感想です。道尾さんの本を読むのも3冊目ともなれば、騙されないぞ!と、疑いながら読みました。
騙しのプロ・道尾秀介さんの小説です。
その甲斐も虚しく、あっさりと騙された・・・。しかも『ラットマン』だけで3回も。
こうなると悔しいよりも清々しい。
『ラットマン』あらすじ
きっとみんな騙される
結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。次々に浮かび上がるバンドメンバーの隠された素顔。事件の真相が判明したとき、亮が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び覚まされる。本当の仲間とは、家族とは、愛とは―。
『ラットマン』ネタバレ感想文
最初に騙されたと分かった時には、えっ!!と、思わず声が出た『ラットマン』。こんなことも初めてです。
騙され感がはんぱなかったよ。
思い込みの原理
『ラットマン』は、思い込みの怖さが存分に描かれた作品でした。
一旦そう思ってしまうと、ラットマンはネズミにしか見えなくなったり、人の顔にしか見えなくなったりします。
思い込みって怖い・・・。
真実と過ち
『ラットマン』は、思い込みにより真実が二転三点するところが面白いんです。
一旦そうだと思い込むと、自分にとってはそれが真実になる。例えそれが間違ってたとしても・・・。間違った認識なのに真実だと捉えてしまうのです。
結果として大惨事になることもあるから、ヒヤリとする。
みんな、それぞれのラットマンを見ていたんですよね。思い込みによる勘違いだから始末に負えなくて・・・。結果、犯罪に発展して思いも寄らない過ちを犯していました。
家族への想い
過去の出来事を引きずって生きている亮。自分も父と同じ立場に立たされた時、父が行ったことと同じことをしようとします。
父のことを理解するために―。
亮の家族は崩壊していました。父は病に犯され亡くなり、母は過去の償いに生きている毎日。たった一人の姉が死んだ日から・・・。
血の繋がりはあっても、言葉にしないと想いは伝わらない。コミュニケーションって大切だ。
亮は父の真似をすることで、父の気持ちを理解しようとしていました。過去の真実が浮かび上がってきます。
最後は母の想いも理解して思い込みが紐ほどけていきました。
こんな騙され方なら大歓迎。胸が熱くなったよ。