切なさ100%『イノセント・デイズ』あらすじとネタバレ感想文・結末|早見和真
- 『イノセント・デイズ』あらすじと感想文
- 登場人物とドラマのキャスト
- 純粋で無垢な田中雪乃
- 丘の探検隊の絆
- 必要とされることの幸せ
- 生と死の執着
少しだけネタバレあります。
僕だけは信じてるから。
早見和真さんの小説『イノセント・デイズ』感想です。ドラマ化されましたね。
WOWOWドラマ原作小説。
佐々木慎一を演じるのは妻夫木聡さん。田中雪乃を演じるのは竹内結子さんです。
切なすぎたけど面白かった。
『イノセント・デイズ』あらすじ
ラストに衝撃が待っている!
元恋人の家に火をつけ、妻と子供を殺めた罪で田中幸乃は死刑判決を受ける。なぜ彼女はそんな犯行に及んだのか? 辛い過去、彼女を慕う人々、切なさと優しさが交差する・・・。日本推理作家協会賞受賞作。
登場人物・WOWOWドラマのキャストとポイント
主な登場人物とドラマのキャストをまとめました。
きっと読んだ人たちの大半が切なさに涙するんじゃないかな。雪乃の過酷な人生だったり、彼女を思う慎一の温かさだったり、ラストの展開だったり・・・。
田中雪乃、30歳。元恋人の家に放火して、妻と1歳の双子を殺めた罪で死刑が確定。
前半は事件前までの彼女が様々な登場人物の視点で、後半は死刑確定後に彼女の再審を求めて奔走する翔と慎一の視点で描れていました。
- 雪乃はなぜ死刑囚になったのか
- 翔と慎一は刑を止められるのか
気になるのはこの2点だった。
『イノセント・デイズ』ネタバレ感想文
『イノセント・デイズ』は田中雪乃という、ひとりの女性の人生にスポットを当てたお話です。
死刑執行を匂わせる物語の始まりに息を飲みました。放火殺人事件で有罪になり、死刑が確定した雪乃。・・・彼女の歩む人生は過酷です。
初めて読んだのは3年ほど前なんだ。
そのときの感想は悲しく悔しい!!でした。でも再読すると、また違った感情がわきあがってきますね。
純粋で無垢な田中雪乃
実を言うと、読み始めた時は主人公の田中雪乃に魅力を感じませんでした。客観的に見てです。
「必要とされる」ことに強く反応する彼女。
当時付き合っていた敬介に必要とされて喜びを感じるとともに、別れを切り出されるとストーカーのように付きまとう。あげくの果てに放火殺人で有罪になります。
放っておけない可愛さを感じた。敬介に執着する気持ちも理解できるけど・・・。
「イノセント」にはいくつか意味があって、その中に純粋、無垢というのがあります。
純粋や無垢って、雪乃にぴったりの言葉なんですよね。報道されている彼女は残忍な殺人犯だけど、全く違う彼女を知ることになります。とても放火殺人なんて犯しそうになくて・・・。
ほんとうに雪乃が犯人なのか?
母が亡くなったときから狂いはじめた人生。あの分岐点がなければ違った道を歩んでいたかもね。
イノセントには、もうひとつ重要な意味があります。そのまま彼女を表していて・・・。気になる方は検索してみてください。
丘の探検隊の絆
雪乃には彼女を気にかけてくれる人たちが確かにいました。
幼なじみの翔と慎一、姉の陽子、敬介の友だちの聡です。
子どものころに交わした丘の探検隊の約束は心が温まりました。その言葉どおり、彼らは雪乃のために行動を起こすのです。
涙が止まらなくなったところがありました。後半の慎一が刑務所にいる雪乃に宛てた手紙を読んだときです。
僕だけは信じてるから。僕には君が必要なんだ
慎一の真摯な思いと優しさがにじみでていて涙が止まらず、いったん本を置きました。・・・雪乃を必要とする人は確かにいました。
人は生きているだけで、たくさんの人に影響を与えているんだね。
必要とされることの幸せ
人は必ず誰かを必要とし、されている。
たとえ雪乃のように裏切られ続けたとしても・・・。彼らを見ていてそう思いました。2人は彼女を必要としているのだから。
誰かに必要とされるのって、とても幸せを感じる。こんなに嬉しいことはないよね。
自分のことを認めてくれているのと同じことです。・・・必要としてくれる人がいる限り、命を絶ってはいけないと強く思いました。
生と死の執着
ラストがすごかったです。雪乃が死ぬために生きようとする姿が、刑務官の視点で描かれていました。
彼女の生と死の執着に呼吸をするのも忘れ、あ然としました。・・・不謹慎だけど、雪乃が美しく思えた瞬間です。
でもやっぱり悲しい。慎一の思いは伝わっているはずなのに、なぜ?
初めて読んだ時は、ラストの衝撃が強すぎたからか切なさや悔しさが勝ってあまり印象に残らなかったのだけど・・・。
実は雪乃の執着というか、感情が一番描かれているところなんじゃないかな。
少女はなぜ死刑囚になったのか
少女はなぜ死刑囚になったのか。
理由があまりにも悲しすぎました。雪乃が再審を求めなかった理由が切ない・・・。肯定したくないけど、この結末に納得できている自分もいて。複雑な気分を味わいました。
救いがない。でも雪乃の願いは叶ったわけだから それが唯一の救いかな。
最後にふたたび慎一のことばが頭をよぎりました。
僕だけは信じてるから。僕には君が必要なんだ
雪乃が握りしめていた桜の花びら。慎一の思いは彼女の中にしっかり刻まれていたのですね。人が人を想う気持ちは尊いものです。