『代償』あらすじ・ネタバレ感想文|底知れぬ悪意|伊岡瞬

- 『代償』あらすじと感想文
- 弁護士になった圭輔と犯罪者になった達也
- とてつもない悪
- 彼は黒か白か?
- 達也の代償
- 結末について
少しだけネタバレあります。
彼は弁護士に、彼は犯罪者となった。
伊岡瞬さんの小説『代償』感想です。根っからの悪人と彼に翻弄される人たちの物語でした。
とてつもないほどの「悪」が描かれた一冊。

面白かったよ。
『代償』あらすじ
とてつもない不幸の連鎖
平凡な家庭で育った小学生の圭輔は、ある不幸な事故をきっかけに遠縁で同学年の達也と暮らすことに。運命は一転、過酷な思春期を送った圭輔は弁護士となるが、逮捕された達也から依頼が舞い込む。裁判を弄ぶ達也、巧妙に仕組まれた罠。圭輔は、この悪に対峙できるのか?
『代償』ネタバレ感想文
読むのを止められなくなるくらい面白かった『代償』。意外な展開でした。そして、どうしようもないほどの悪・・・。
同じ家で育った二人の少年。一人は弁護士に、一人は犯罪者となった。
弁護士になったのは主人公・圭輔。犯罪者になったのは達也です。これまで読んできた小説にも悪人はいたけど、ここまでの悪はなかなかありません。

達也の行いを考えると「代償」は計り知れない。
一人は弁護士に、一人は犯罪者に・・・

第1部で圭輔と達也の少年時代が、第2部で弁護士になった圭輔と犯罪者になった達也が描かれています。
2人の出会いはまだ彼らが小学生だった頃。純粋で素直な圭輔少年に対して達也は不気味でした。圭輔の家が火事になり、達也のところで一緒に暮らし始めます。
達也に翻弄される圭輔と彼の家族、彼の周りの人々にまで害が及ぶ。胸が痛くなりました。本当にかわいそう。・・・というか恐ろしい。

達也に出会わなければ幸せに暮らせただろうに。
世の中には悪い人たちがいるけど、達也のような人には出会いたくないです。
圭輔の人生が悲惨すぎました。特に前半は重くて読むのが辛く・・・。ズルズルとのめり込む不思議な小説。
とてつもない悪
『代償』で描かれている悪人・安藤達也。
計算高く、彼の周りにいる人たちはみんな不幸になっていきます。平気で人を傷つけ、人が不幸になることを喜ぶタイプ。こんな人がいたら怖いですね。

絶望する主人公の気持ちがわかる。
でも主人公が弱っちいんです。もうちょっと強くあっても良いのに・・・。伊岡さんの本は初めて読んだけど、かなりのインパクトです。
安藤達也は黒か白か?

弁護士になった圭輔のもとに依頼がきます。忘れもしない達也からの依頼でした。彼の容疑は強盗致死罪。圭輔は弁護を引き受けることになります。
安藤達也は有罪か無罪か。
友人の寿人と調べを進める圭輔。限りなく黒に近いのにどうもしっくりきません。そのうちに彼のアリバイを証言する女まで登場して・・・。

彼はまさか無罪?
面白い展開になってきたと思っていたら、またどん底に落とされる。意外な展開に目を見張りました。達也の悪意を感じます。

ここまで悪人だと更生させようにも難しいかも。
彼の目的は一体なんなのか?事件の裏には驚きの真実が隠れていました。
達也の代償
本のタイトルは、ズバリ「代償」。この小説のテーマになっています。
悪い行いをすれば、やがて自分に返ってくる。達也もいずれ、その「代償」をはらわなければなりません。
達也は、どんな「代償」をはらうことになるのか。後半から結末にかけては、それが気になり一気読みでした。

ささいな犯罪でも代償は大きくなることがあるよね。
例えば痴漢。加害者にしたら、ほんの一瞬の出来心なのかもしれません。でもそれによって社会的地位や家族、仕事を失うかも・・・。「代償」ってそういうものです。
達也の代償はちょっと軽いんじゃないかなと思いました。
『代償』救いの結末
結末はあっさりです。最後に救いがあってホッとしました。
達也に出会うことで不幸な生い立ちの主人公だったけど、寿人というかけがえのない友達に恵まれて良かったです。

どんな人と出会うかによって、自分の人生は変わるよね。


