- 『ジャッジメント』あらすじと感想文
- 復讐法が認められた世界
- 被害者遺族の葛藤
- 応報監察官・鳥谷文乃
少しだけネタバレあります。
あなたは『復讐法』を選ぶ?
小林由香さんの小説『ジャッジメント』感想文章です。本屋さんで目に止まって買った本。デビュー作なんですね。これはすごいです!!傑作でした。
『ジャッジメント』あらすじ
復讐法は救いがあるのか―。
20xx年。治安維持と公平性を重視した新しい法律 「復讐法」 がうまれた。この法律に救いはあるのだろうか!?
『ジャッジメント』ネタバレ感想文
読み終わってもまだ余韻が残っています。なんだろう、このやり切れなさは・・・。色んな感情がわきあがってきました。
「復讐法」もしそんな法律があったら?
復讐法が認められた世界

20xx年。治安維持と公平性を重視した新しい法律が生まれました。
「復讐法」です。
裁判によって認められた場合、同じ方法で自らが刑を執行できるというもの。少年犯罪や、刑法第39条のような心身喪失者などの裁かれない罪にも適用される法律です。
「目には目を歯には歯を」という言葉があるように・・・。
『ジャッジメント』は 復讐法が認められた世界が描かれています。そこには様々な葛藤がありました。遺族が自ら刑を執行していくことで「殺人者」になるわけです。
斬新な世界・・・。もしそんな法律があったとしたら私はどうするだろう。
被害者遺族の葛藤
『ジャッジメント』は5つの復讐を描いた物語です。
- 第1章、サイレン (子供を殺された父親。)
- 第2章、ボーダー (母を実の娘に殺された女性。)
- 第3章、アンカー (通り魔に殺された3人の遺族。)
- 第4章、フェイク (息子を殺された母。)
- 第5章、ジャッジメント (妹を実の母と内縁の夫に殺された兄。)
この法律あっても良いのかもと思いましたが、やはりあってはならないと思い直しました。どれもが苦しいんですよね。これがデビュー作というのだからすごい。
第1章、残忍な手口で息子を失った父親が同じ方法で犯人に刑を執行する様子は痛ましかったです。
第3章では、通り魔の被害者遺族がそれを選択するかしないかで悩みます。自らが執行しなければいけないという恐怖心。自分も犯罪者と一緒になってしまうのではないかという複雑な感情も混じっていました。
衝撃の第5章「ジャッジメント」
妹を母と内縁の夫に餓死させられた小学生の兄が、彼女らの刑を執行していきます。同じ部屋にいて親が餓死するのを見つめるのは、まだ小学生の子供・・・。
ラストは衝撃の結末で幕を閉じました。
何が正しくて何が間違っているのか、わからなくなりました。愛するがゆえの復讐。その法律があることで凶悪な犯罪は減るのかもしれませんが、やり切れなさが後をひきます。
応報監察官・鳥谷文乃

すべて応報監察官・鳥谷文乃の視点で描かれています。
応報監察官とは、被害者遺族のお世話や復讐法を選択した場合に刑の執行を最後まで見守るという、かなりハードな職種。
彼女は答えの出ない問題に悩み続ける。様々な想いを抱えた登場人物たちがいました。復讐にも色んな形があるんですね。
全てを見てきた文乃は 章が進むに連れて気持ちが揺らいでいく。最後に出した結論は とても人間らしい感情で心打たれました。
『ジャッジメント』苦しみが残る小説
こんな世界はイヤです。苦しいんですよね。憎しみは消えることなく被害者遺族の心も満たされていない。・・・やるせなくなります。
もし私が当事者になってしまったとしたら?
考えずにはいられません。復讐法を選んでしまうだろうか。犯人に同じ苦しみを味わってほしいと思いますが、実行は・・・できないんじゃないかな。そこまでの勇気はないような気がします。



