『手紙』あらすじ・ネタバレ感想文|平野社長のことば、差別は当然なのか?|東野圭吾
- 東野圭吾さん『手紙』あらすじと感想文
- 犯罪者の身内になった直貴
- 平野社長のことば&差別
- 人々の思いが込められた「手紙」
- 直貴の決意と切ないラスト
ネタバレあります。ご注意ください。
差別されるのは当然のこと―。
東野圭吾さん『手紙』感想です。東野さんの小説でも5本の指に入るくらいの名作。泣けました。
『手紙』は、犯罪者の家族にスポットをあてた物語。
映画化もされましたね。映画も泣けたけど、原作小説の方が深く心に刺さります。
たくさんの人に読んでもらいたい小説。
『手紙』あらすじ
犯罪加害者家族の物語
強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。
『手紙』ネタバレ感想文|犯罪加害者、家族の物語
『手紙』は、加害者の弟になってしまった直貴の物語です。
兄が強盗殺人罪で逮捕されたー。
ことあるごとに「強盗殺人犯の弟」というレッテルをはられ、何もかもを奪われてしまう直貴。彼をみていると胸が痛みました。
理不尽だとも思うけど、仕方ないのかな。
突然、犯罪者の身内になった直貴
強盗殺人罪の兄がいることで様々な差別を受ける直貴。自分の人生が兄のせいで壊れていくのです。
友達からは距離を置かれ、夢も諦めなければならず、恋人とも別れ、仕事も異動になる。
自分が悪いわけではないのに。・・・理不尽に思う直貴の気持ちは、もっともですね。
直貴の新たな家族(自分の子ども)にも差別が向けられるのは、さすがに怖くなりました。
でも理解が出来てしまうことでもあるんです。近くに犯罪者(たとえ身内でも)がいたら良い気分ではないから。
得体の知れないひとは怖い。
罪を犯した兄が刑期を終えたとき、もしかしたら弟のところに来るかもしれないという不安もあります。
直貴が受ける理不尽さに胸を痛めると同時に、彼を避ける周りの人たちの気持ちも理解できてしまう。・・・なかなか苦しい気持ちになる物語ですね。
印象に残った平野社長のことば|差別は当然?
印象に残ったのは、直貴に向けられた平野社長の言葉です。
直貴が今受けている差別もひっくるめて、兄が犯した罪―。
平野社長の言葉、すとんと心に落ちました。・・・そっか。犯罪というのは、本人だけではなく被害者はもちろんのこと、加害者の周りの人の人生までも狂わせてしまうものなんですよね。
罪を犯すということはどういうことか。
直貴や彼の家族が受けた差別も全部、兄が犯した罪。そのことを、罪を犯したひとは知っておかなければならないんです。
だから、罪を犯しちゃいけないんだ。
一度の間違いで、自分の大切な人にも差別は一生ついてまわるから。罪を犯すというのは、それだけ重大なことなんですよね。
人々の思いが込められた「手紙」
小説のタイトル『手紙』には、人々の思いがたくさんつまっているような気がしました。様々な「手紙」が登場します。
- 兄から直貴に送られてくる手紙
- 由美子が直貴の代わりに兄に送る手紙
- 由美子が平野社長に送る手紙
- 加害者が被害者に送る手紙
一通の手紙により人生を狂わされたり、人との絆を実感して感動したり・・・。
今はほとんどラインやメールでやりとりすることが当たり前になっていて、なかなか手紙は書かなかったりします。
小説を読んで、手書きの文章(手紙)っていいなと思ったよ。
『手紙』直貴の決意と切ないラストに号泣
『手紙』ラストは号泣でした。
直貴が刑務所を訪れ、囚人たちに向けて歌ったシーンです。その中には兄がいました。
自分の家族を守るために、兄との縁を切ることを決意した直貴。立派に成長した弟の姿をみて、兄は何を感じたのか。
切ないラストだった。