『らせん』ネタバレ感想文・あらすじ|浅川が助かった理由&ヒヤリとする結末|鈴木光司
- 『らせん』あらすじと感想文
- 心筋梗塞を起こした原因
- 突然変異した呪いのビデオテープ
- 竜司が仕掛けた暗号
- 浅川が助かった理由
- ヒヤリとする結末
ネタバレあります。ご注意ください。
それは人類進化の扉か、破滅への階段なのか。
鈴木光司さんのホラー小説『らせん』読書感想です。『リング』の続編で、こちらも映画化されていますね。映画も見たけど、小説の方が断然面白かったです。
続編で一転、SFミステリーになる展開がすごい!
この展開は映画で知っていたのだけど、小説の方が分かりやすかったよ。
映画はホラー感があって、小説はSFミステリーといったところ。そんなに怖くなく面白かったです。
『らせん』あらすじ
『リング』続編!
幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた。「リング」とは?死因を追う安藤が、ついに到達する真理。それは人類進化の扉か、破滅への階段なのか。
『らせん』ネタバレ感想文|貞子の呪いはウィルス!?
『らせん』は、監察医の安藤の視点で描かれたホラー(SFミステリー)小説。『リング』の続編です。
『リング』で描かれていた呪いのビデオテープも出てきました。でもビデオが中心ではなくて、ウィルスと謎解きに重点を置いたストーリーになっています。
貞子も登場!
映画のような怖さがなくて、礼儀正しい女の子といった雰囲気。なんとなく貞子ちゃんと「ちゃん」をつけて呼びたくなるような子でした。
ちょっぴり拍子抜けしちゃった。
そう言えば、小説『リング』でも貞子の歩んできた人生が描かれていて切ない気持ちになりました。・・・だから現代に蘇って(蘇り方は別としても)良かったと思っちゃうんです。
心筋梗塞を起こした原因はウィルス
ビデオテープを視聴したら、なぜ一週間後に命を落とすのか。みんな心筋梗塞です。・・・これは、貞子の呪い?
『リング』で謎だった原因が『らせん』で明らかになりました。
新しく発見されたウィルスは、天然痘の遺伝子と人間の遺伝子から成っているんだ
天然痘そっくりのウィルスです。リングを思わせる輪っかの形をした新種のウィルス。
ビデオを視聴すると、そのウィルスに感染してしまうという恐怖を感じる。
でも呪いよりウィルスの方がしっくりきました。感染ルートは呪い(貞子の願い?)のような感じだけど・・・。
新種のウィルスがわかったのは良いとしても、まだ疑問が残ります。
浅川や舞は感染していたのに、一週間後に命を落とさなかったのはなぜか。
生と死の分かれ目は、ウィルスの形状にありました。リング状のウィルスのうち、輪の途切れたウィルスが半分混ざっていたのです。
それが増えれば、命を落とさなくて済むのかな。
突然変異した呪いのビデオテープ
呪いのビデオ(ウィルス)が進化して貞子が生まれる過程が怖かったです。
重要なキーワードは「突然変異」。
突然変異を起こしたビデオテープは、ダビングされるうちに進化し、新種として生まれ変わり、今もどこかに潜んでいる。以前とはまるで異なった形態を身につけてな
遺伝子やらDNAやらで、ちょっぴり難しい話でした。でも謎を解き明かすミステリー要素があって楽しめます。
突然変異を起こしたビデオテープ→排卵期の女性が見たら新種として(貞子に)生まれ変わる
この「生まれ変わる」という展開が恐怖でした。ビデオを見ると妊娠、そして貞子を産むという・・・。
世の中、貞子だらけになるの!?
考えただけでゾッとします。しかも産んだ女性は抜け殻のようになり、排除されてしまうんですよね。
竜司が仕掛けた暗号
安藤が暗号を解いていくところが面白かったです。謎解き要素があってワクワクでした。
- 竜司を解剖していたときに発見した数字の列→「RING」
- 竜司の血液から発見されたウィルスのDNAの一部(奇妙な塩基配列)→「MUTATION(突然変異)」
特に竜司の血液から発見された奇妙な塩基配列の暗号を解き明かしたとき、ヒヤリとしました。それが意味するのは「MUTATION(突然変異)」です。
呪いのビデオテープ(ウィルス)が突然変異を経て、貞子が生まれるというのを示唆しているかのような暗号・・・。
安藤が暗号を解く前提で、竜司は意図的に暗号を仕掛けたのか。
竜司って何者?
この辺りを読むと、貞子と竜司は結託しているのでは・・・と、疑念が浮かんできます。もしかして黒幕は竜司?
ぶっ飛んでるけど面白い展開。
なぜ浅川は助かったのか|オマジナイの謎
浅川がやって、竜司がやらなかったこと(オマジナイの謎)が気になりました。
『リング』では「助かるために、ビデオテープをダビングして第三者に見せる」とされていましたね。でも『らせん』を読むと、実は違っていた?・・・と混乱するんです。
ダビングして第三者に見せた浅川の妻と子どもは心筋梗塞により助からなかったから。
あれれ?ダビングじゃなかったのかな。
では何をしたら助かるかというと、ウィルスをなるべく多くの人に感染させる(貞子に協力する)ことです。・・・ぶっちゃけ、貞子に気に入られれば助かるということですね。
浅川は自分が書いたレポートによって、ウィルスの増殖に手を貸していました。
- 浅川は一連の変死事件を詳細に追ったレポート「リング」を作成
- 「リング」を読んだ安藤と宮下がウィルスに感染(ウィルスはレポートに突然変異していた)
- 浅川のレポートが近い将来、本として出版される(多くの人がウィルスに感染)
- やがて映画化される(さらに多くの人が感染)・排卵期の女性が映画をみたら貞子を産む
とても恐ろしい流れです。特に貞子を産むあたりが・・・。
たぶんオマジナイは、はじめは「ダビングして第三者に見せる」で合っていたんじゃないかな。
でもその部分が消されてしまい、増殖ができなくなったウィルスは突然変異したんです。こっちの方が一気にウィルスを感染させられますからね。
『らせん』ヒヤリとする結末|世界はこれからどうなる?
安藤の子どもや竜司が復活して、貞子の力を最大限に感じたラスト。
もしも人類の代わりに貞子であふれる世界になったら・・・。
「もはや、山村貞子を人類と呼ぶことはできない。新種だ。新しい種は突然変異によって産まれる。おれたちは進化をこの目で見ていることになる」
進化といえば響きは良いけど、想像すると怖くなりました。個体差はなく、すべて同じ貞子。どっちを向いても、いるのは貞子、貞子、貞子・・・。
全くつまらない世の中だ。
こんな世界はイヤですね。進化というより破滅、世界が止まってしまうような感覚になりました。