『ループ』ネタバレ感想文・あらすじ|完結編「リング」三部作はSF小説だった|鈴木光司

- 『ループ』あらすじと感想文
- ガン化した仮想世界「ループ」
- リングウィルスと転移性ヒトガンウィルス
- 「ループ」の意味と世界の仕組み
- 『ループ』が映画化されない理由
ネタバレあります。ご注意ください。
『リング』三部作、完結編!
鈴木光司さんの小説『ループ』読書感想です。『リング』『らせん』に続き、三部作の完結編を読みました。
世界の仕組みが解き明かされる!?圧巻のSF小説。
これはすごいですね。『リング』というとホラー小説になるんだけど、『らせん』からSF感が増してきて『ループ』では完全なSF小説でした。
あの『リング』が、まさかこんな展開になるなんて・・・。ただただ、圧巻です。

この展開はすごかった!

『ループ』あらすじ
「リング」三部作、完結編
科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからやって来たのか?あるプロジェクトとの関連を知った馨は一人アメリカの砂漠を疾走するが・・・。
『ループ』ネタバレ感想文|世界の仕組みが今、明かされる!

『ループ』で明かされる世界の仕組みが圧巻で鳥肌がたちました。特に興味をひいたのは・・・、
- ガン化した人工生命プロジェクト「ループ」
- ループ世界と現実世界の繋がり
- 世界の仕組みについて
SF展開になるとか、実はリングは〇〇世界だとか・・・。本を読む前にレビューを読んでいたから知っていたのだけど。

それでも面白すぎて読むのを止められなかったよ。
「リング」シリーズって、三部作とも主人公が違うんですよね(『リング』は雑誌記者の浅川、『らせん』は監察医の安藤)。
『ループ』の主人公は医学生の馨、彼の視点で物語は進んでいきます。
新種のガン(転移性ヒトガンウィルス)が流行して、命を落とす人々が増加する現代が舞台。

ウィルスって怖い・・・。
ガン化した仮想世界「ループ」|人工生命プロジェクト
本のタイトル『ループ』は、人工生命プロジェクトを指しています。
超高速スーパーコンピューター内部に、現実には存在しない、三次元の仮想空間を作り上げ、その空間を『ループ』と名づけた
日米共同の巨大プロジェクトとして立ち上がった「ループ」。
テーマは、コンピューターの仮想空間に生命を誕生させ、現実とそっくりの世界を作り上げることです。
コンピューター上の仮想世界とは、映画『マトリックス』みたいですね。もしくは『ソードアート・オンライン(SAO)アリシゼーション』とか。


SAOの仮想世界アンダーワールドを連想したよ。
ここでの仮想世界「ループ」は、地球と全く同じ環境(状況)のまま進化していきます。いわば、未来の地球のシュミレーションでもあるんですよね。
でも・・・、
ループの生命界は、同一の遺伝子のみに占められ、多様性をなくし、滅亡の道を辿ったのです
「ループ」世界は、ウィルスの発生によりガン化してしまうんです。今いる人類は滅び、新人類として貞子(同一の遺伝子)に生まれ変わる。
『リング』と『らせん』で描かれた世界は仮想世界「ループ」・・・ということ!?

『リング』と『らせん』が、実は仮想世界だったなんてビックリだよ。
浅川も高山も安藤も、そして貞子もコンピューター上に存在している人工生命なんですね。
ホラー小説が一転してSF展開。『リング』を読んだだけでは想像がつかず、この発想がすごくて圧巻でした。
リングウィルスと転移性ヒトガンウィルス|ループ世界との繋がり
猛威を振るうウィルスによって、人類滅亡の危機にさらされている2つの世界。
ストーリーが進むと、この2つのウィルスは似ていることがわかってきます。もともとは同じだったけど、変異して転移性ヒトガンウィルスに・・・。
はじめは仮想世界「ループ」で発生したウィルスが、なぜ現実世界で変異して流行しているのか。
その理由が衝撃でした。
われわれはタカヤマの遺伝子と一緒に、リングウィルスの遺伝子まで、現実世界に運んでしまったのだよ
高山竜司、現代に復活!
『らせん』の最後にも復活した様子が描かれていましたね。実は『らせん』での復活前に現実世界に復活→『らせん』に戻る・・・という流れでした。

竜司が現実世界に復活したことによって、リングウィルスが広まったみたい。
転移性ヒトガンウィルスの治療法を探す過程で、人工生命プロジェクトの存在を知った馨が行きついた答えです。
馨が旅するシーンは読み応えがありました。真実が描かれた箇所を読みたくて、止め時がわからなくなるほどに。

後半はドキドキの連続だったよ。
ループの意味と世界の仕組み|全ては誰かが創った仮想世界!?
「ループ」の意味(生命の環)について書かれた文章が好きです。
物質の基本である原子の構造が、太陽系のモデルとそっくりであることから、原子や素粒子もまたひとつの宇宙を形づくっているのであり、その小さな世界にも我々と同じような生命が住んでいるのではないかと。生命の環だ
「原子や素粒子もまたひとつの宇宙を形づくっている」という部分が面白い。・・・そうすると、一体どれだけ世界があるんだろう。
『ループ』を読んでいたら、世界の仕組みについて考えをめぐらせずにはいられなくなりました。
仮想世界「ループ」のように世界が誰かによって創られたのなら、内部にいる限り、住人は世界の仕組みを理解できない。
ひょっとしたら、世界は入れ子構造になっているのかもしれませんね。私にとっては現実世界だけど、誰かにとっては仮想世界という・・・。

そのことを最期の一瞬(『リング』のラスト)で理解した竜司がすごい。外側の世界に復活までしちゃうのだから強者だ。
完結編『ループ』は、なぜ映画化されないのか?

『リング』と『らせん』は映画化されたけど、完結編『ループ』はされていないんです。

『ループ』が一番面白かったから映画化してほしい。でもムリかな。
理由はいくつか考えられます。
最後の「高山竜司」問題というのは、馨=竜司だからです。竜司とまったく同じ遺伝情報を持った人間として誕生したのが馨なんですよね。

これは難しいかも・・・。
『リング』だけ読んでも楽しめるけど、『らせん』『ループ』まで読むのがおすすめです。


