- 中山七里さんの小説『翼がなくても』あらすじと感想
- 御子柴礼司と犬養隼人の共演
- 父さんのひとこと
- アスリートが背負う期待と夢
少しだけネタバレあります
御子柴弁護士VS犬養刑事
中山七里さんの小説『翼がなくても』感想です。きましたー!!御子柴弁護士と犬養刑事の共演!!!帯を見た途端レジに直行していました。
『翼がなくても』あらすじ
御子柴弁護士VS犬養刑事
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
陸上200m走でオリンピックを狙う沙良を悲劇が襲った。交通事故に巻きこまれ左足を切断。しかも加害者は幼馴染みの泰輔だった。アスリート生命を絶たれた沙良は恨みを募らせる。そんな泰輔が殺害され、高額な保険金が支払われた。犯人は誰なのか?また、絶望の底から再起を図る沙良の運命は?
『翼がなくても』感想
面白かったです。『翼がなくても』の読みどころはなんと言っても、御子柴礼司と犬養隼人の共演。御子柴さんが出てきたときには、ニヤリとしてしまいました。
気になる!!初の共演

御子柴VS犬養
御子柴礼司、犬養隼人、初の共演!!
御子柴礼司シリーズが好きです。『贖罪の奏鳴曲』『追憶の夜想曲』『恩讐の鎮魂曲』『悪徳の輪舞曲』。すべて読みました。
悪辣弁護士の彼は 少年時代に凶悪犯罪を犯しながらも弁護士になった異例の人物。このシリーズは全て「贖罪」をテーマに描かれています。

そして犬養隼人シリーズ。臓器移植を扱った『切り裂きジャックの告白』が面白かったです。
心に染みる父さんのひとこと
本作はアスリートのお話。
スポーツ選手が交通事故で左足を切断・・・。絶望的な状況です。しかも加害者は 被害者・沙良の隣の家に住む幼馴染みなのだから、たまったものじゃありません。
なかなか立ち直れない沙良に父親が言った言葉にジーンとしました。
悪辣弁護士・御子柴

沙良の左足を奪った幼馴染み・泰輔が何者かに殺害されてしまいます。
そして5000万円もの保険金が支払われました。動機が充分にありすぎる沙良が怪しいとにらむ犬養刑事。
御子柴弁護士の影がチラチラと。彼が出てきたということは、この事件には必ず裏がある。刑事さんたちに嫌われている悪辣弁護士・御子柴。評判は最悪です。
でも御子柴シリーズを全て読んでいる私は、彼が「贖罪」に対して情があることを知っています。本作でも 切ない「贖罪」が描かれていました。
ポイントは誰が誰へのものなのか、です。
アスリートが背負う期待と夢
カロリー配分をしながらご飯を作ってくれている母。義足をオーダーメイドしてくれたデビット・カーターや研究者の鬼怒川。
バックには多くの人たちの助力がありました。彼女は みんなの期待と夢を背負って走る。・・・熱い思いがこみ上げてきました。
記録を伸ばして勝つためには本人の努力はもちろんですが、分析していくと様々な要因が重なり合っていることがわかります。
趣味で走る分には良いけど、プロを目指す人たちは分析も必要になってくるんだと感嘆しました。
たとえ『翼がなくても』
ラスト、沙良の競技を見つめながら話す御子柴と犬養のシーンが好きです。
「たとえ翼がなくても、きっと彼女は無理にでも飛び立とうとしただろう。時々そういう諦めの悪い人間を見かける」
翼がなくても 彼女は飛び立とうとした。
どこか冷めた御子柴のことばですが、彼の観察眼は優れています。沙良の陸上に賭ける熱い思いを感じました。
たとえ足があってもなくても走ることへの情熱は変わらない。彼女が愛おしくなる結末です。


