『コンビニ人間』あらすじ・ネタバレ感想文|面白くて怖い衝撃作|村田沙耶香
- 『コンビニ人間』あらすじと感想文
- 「普通」 や 「常識」 から外れている主人公
- 世間一般の 「普通」 や 「常識」 は多数決で決まる
- 「普通」 が逆転した瞬間
- 結末と連想した3つの言葉
少しだけネタバレあります。
「普通」って何?
村田沙耶香さんの小説『コンビニ人間』感想です。けっこうダークなお話ですね。ほのぼのとした物語を想像していたので、ヒヤリとする怖さに背筋が伸びました。
「普通」って何かを考えたくなる1冊です。
それにしても『コンビニ人間』というタイトル、しっくりくる。
『コンビニ人間』簡単なあらすじ
第155回芥川賞受賞作
コンビニのアルバイト店員18年目・古倉恵子。36歳未婚。彼氏なし。毎日の食事はコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日 婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて・・・。
『コンビニ人間』ネタバレ感想文
村田さんの小説を読むのは『地球星人』に続き2冊目です。主人公の社会に対する考え方など共通する部分があって、似た雰囲気を感じました。
『地球星人』も『コンビニ人間』も衝撃作という言葉がピッタリの小説です。
このダーク(?)な雰囲気が好き。
「普通」や「常識」から外れている主人公
村田さんが描く登場人物は「普通」や「常識」に囚われてなくて(反発していて)ハッとする。独特の怖さがあるんですよね。
『地球星人』の主人公・奈月や彼女の夫、由宇、『コンビニ人間』の主人公・古倉恵子も世間一般の 「普通」の括りから外れていました。
小さい頃、小鳥が死んでいるのを見つけた恵子。周りの子は埋葬してあげようとするのに対し、恵子は小鳥を焼いて食べる発想をします。
じゃっかんサイコパス?
ギョッとしました。アスペルガー症候群や発達障害という言葉が浮かぶ・・・。母や妹に心配されて彼女は「普通」を演じ続ける人生を歩むのです。
理解できない!?「普通」を演じ続ける恵子
「普通」を演じ続ける恵子が痛々しく思えました。
皆の中にある『普通の人間』という架空の生き物を演じるんです。あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じているのと同じです
みんなと考え方が違う彼女には生き辛い世界ですね。もしも、みんなと違うことがバレてしまったら もっと生き辛くなってしまう。
コンビニに入ってきた新人・白羽と同棲を始めたけど、そこに愛はありませんでした。
恵子は白羽と同棲することで、世間からの「普通」を得るために。白羽は世界から逃げるために。
愛はないけど利害は一致したんだね。
印象に残ったフレーズがあります。
ああ、私は今、上手に 「人間」 ができているんだ、と安堵する
上手に「人間」ができているって・・・。切なくなります。みんなと同じであり続けようと努力する恵子の気持ちはわかるけど理解できない。一種の怖さを感じました。
「普通」ってなんだろう。その境界線は誰が決めたの?
世間一般の「普通」や「常識」は多数決で決まる
世間一般の「普通」や「常識」は多数決できまります。多い方が「普通」や「常識」になって、少ないほうが普通じゃない非常識とされる世の中。
境界線って曖昧・・・。相手が理解できないと不安になりますね。普通じゃない、非常識としてしまうのはわかります。
人それぞれ考え方は違うから、少数だからと言って「普通じゃない」というのは違うよね。
意外と話してみると、この人はこういう考えがあるんだと親しみが持てたり。みんなどこかしら普通じゃない部分を持ち合わせているものなんです。それが個性であり魅力でもある。
たまに「この人、非常識」って思うことがあります。でも冷静になって考えてみると、「常識」は私の中のそれであって、必ずしも他人の「常識」ではないんです。
自分の「普通」が 他人の「普通」とは限らない。他人の「普通」が 自分の「普通」とも限らない。
大切なのは相手を知りたいと思う気持ちと、相手を尊重する気持ちです。
それがみんなにあれば、恵子にとってもっと生きやすい世界になったかもしれない。
「普通」が逆転した瞬間
途中から「普通」や「常識」から外れている恵子よりも、周りの人たちのほうが非常識に思えました。
恵子が白羽と同棲を始めてからです。
周りの反応はこれまでと違うものに一転。皮肉なことに、余計に生き辛くなってしまった恵子・・・。長年務めたコンビニを辞めることになりました。
「常識」も「非常識」も紙一重。みんな両方の面を持ち合わせて生きているのかな。
ハッピーエンド?連想した3つの言葉
ラストはハッピーエンドです(そう思うか思わないかは人それぞれだけど)。
恵子は自分がどうしようもないくらい『コンビニ人間』だと気づく。1度コンビニを離れたからこそ、それに気づけたんですね。
楽しい、生きがい、天職。
最後の彼女からは3つの言葉を連想しました。今までと違って生き生きとする姿が印象的です。
彼女は最初から最後まで『コンビニ人間』だった。