『不発弾』あらすじとネタバレ感想文|ブラック・マネーを操る男|巨額の粉飾決算と結末|相場英雄
- 『不発弾』あらすじと感想文
- 登場人物、ブラック・マネーを操る男、古賀遼 について
- 巨額の粉飾決算とそのモデル
- 「不発弾」に込められた意味は不安定な金融商品
少しだけネタバレあります。
大手企業の1500億円の不適切会計!?
相場英雄さん『不発弾』感想です。相場さんの本は初めて読みました。なかなか興味深かったです。ラストは鳥肌がたちました。
『不発弾』はWOWOWでドラマ化されたよ。
『不発弾』あらすじ
巨額の不適切会計!?
大手の電機企業・三田電機は、巨額の「不適切会計」を公表した。警視庁捜査二課の小堀秀明は捜査を開始した。裏で手を引いていたのは、古賀遼という男、金融コンサルタントだった・・・。
『不発弾』ネタバレ感想文
面白かったけど難しかったです。金融用語が出てくる出てくる。とばし、先物取引、デリバティブ・・・。金融に弱いので理解するのにひと苦労でした。
どこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションなのか?
これが一番気になった。ほとんどが実際に行われていた(いる)ことなの?と思うとヒヤリとする。
二課刑事vs飛ばし屋
『不発弾』には2人の男が登場します。
二課刑事・小堀秀明と、飛ばし屋・古賀遼(良樹)。
小堀刑事が表なら影で三田電機を操る古賀は裏、表と裏でW主人公のような感じでした。
三田電機が発表した1500億円の「不適切会計」。そして古賀の幼少期からの生い立ちから飛ばし屋になるまでが交互に描かれています。
最後に小堀刑事は古賀を追いつめるのだけど・・・。その闇を暴くことは叶いませんでした。
ある人物が関わっていたんだ。
巨額の粉飾決算!モデルは東芝
三田電機の粉飾を裏で操る男とは―。
飛ばし屋・古賀遼 (良樹) ブラック・マネーを操る男です。
三田電機が発表した巨額の「不適切会計」。明らかな粉飾なのに、穏便な表現になったことに不信を抱いた小堀刑事は捜査を開始します。
三田電機は東芝をモデルにしているんだね。
重要なキーワードは「とばし」。以前に読んだ清武英利さん『しんがり 山一證券 最後の12人』で調べたことがあります。
別の会社に「飛ばし」て含み損を隠し表向きの決算報告をする。・・・粉飾決算ですね。損失を一時的に隠すわけです。
その場しのぎというか、いずれもっと負債額が大きくなって表面化してしまうんだ。
粉飾しなければ、こんなに多くの負債額を抱え込まなくても良かったかもしれないけど、時すでに遅し。
古くからの隠蔽体質、そこにつけ込む外資や古賀みたいな「飛ばし屋」が裏で手を引いています。
なにやってるんだろうね。悲しくなった。
古賀にかけられた疑惑
大牟田合同信用金庫の元理事長・新井が自殺します。「不発弾を背負って死ぬ」という謎のことばを残して・・・。
新井は古賀の母親のお店の常連客(愛人)でした。彼の妹を自殺に追いやった張本人。彼の母もまた車に轢かれて亡くなるのだけど、小堀刑事は疑惑の目を古賀に向けます。
飛ばし屋の古賀が魅力的な人物。
幼少期も描かれているから根は悪いやつとは思えなくて。詐欺みたいなことをやっているので善人ではないけど、流されて飛ばし屋になってしまったというか・・・。
独りになってしまった彼が可哀想に思えたよ。これが報いなのかと思うと仕方がないとも思うけど・・・。
不発弾に込められた意味
負債を抱えた会社ノアレに外資の杉本が提案した仕組債。それと『不発弾』に込められた意味を理解したら怖くなりました。
三五億円の損失を五年間も表面化させない、裏返せば、五年後は株価が昨年末並みの史上最高値レベルに戻っているだろう、そんな見通しを前提に仕組債は作られています
35億円の損失を5年間も表面化させない!?
デリバティブ、先物取引、オプションなどを組み合わせて作られたのが仕組債です。5年後には株価が回復しているだろうとの元に。
会社の隠蔽体質を利用して、いろいろと思いつくものですね。でも株価が回復する保証なんてないわけです。
市場は生き物。
波多野聖さん『メガバンク絶滅戦争』を思い出しました。株市場の相場師を描いたお話です。
市場の値動きに絶対はなく、ほんの些細な刺激で爆発します。・・・不発弾のように。この小説のタイトルから著者のそのような思いを感じました。
タイトル 「不発弾」 は 不安定な金融商品を指しています。
一見安定しているかのように見える仕組債は、不発弾にもなり得る。上手い話はないんですよね。なんでもデメリットやリスクはあるわけです。
そもそも粉飾などと隠蔽するからダメなんだよ。
『不発弾』結末は・・・|全ては闇の中
モヤモヤっとする結末でした。結局、全ては闇の中・・・。でもこれだけは身にしみる思いがしました。
粉飾は、いつか爆発する地雷を抱えるようなもの。
いつ爆発してもおかしくありません。そんな企業、今もどこかにいるのかもしれませんね・・・。ツケは必ず回ってきます。