『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』あらすじ&ネタバレ感想・結末|御子柴礼司シリーズ1、悪魔の弁護人|中山七里
- 『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』あらすじと感想文
- 御子柴礼司シリーズの魅力
- 御子柴礼司、死体遺棄!?
- 『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』と『連続殺人鬼 カエル男』のリンク
- 御子柴が弁護士になった理由と贖罪
ネタバレあります。ご注意ください。
「贖罪」の意味とは―。
中山七里さんの小説『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』感想です。悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズ1を再読しました。
このシリーズはどれも面白い。
御子柴礼司シリーズは『贖罪の奏鳴曲』に続き『追憶の夜想曲』『恩讐の鎮魂曲』『悪徳の輪舞曲』があります。順番通りに読んでいくのがオススメです。
『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』あらすじ
御子柴礼司シリーズ1
弁護士・御子柴礼司は、ある晩、記者の死体を遺棄した。警察は 御子柴に辿りつき事情を聴く。だが 彼には死亡推定時刻は法廷にいたという「鉄壁のアリバイ」があった―。
『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』ネタバレ感想文
御子柴礼司シリーズ、好きなんですよね。中山七里さんの小説ではダントツ。
これからも悪辣弁護士・御子柴礼司を見守っていきたい気持ちになりました。他人のために弁護する彼の終わりのない償いは続きます。
悪魔の弁護士・御子柴礼司
なんと言っても御子柴礼司、その人です。
幼少期に猟奇殺人を起こし、日本中を震撼させた死体配達人・園部信一郎。少年院に送致された後に御子柴礼司と名前を変え、やがて弁護士になります。
彼は刑事から嫌われていました。
警察や検察が苦労して検挙し、訴訟した凶悪犯を次々と減刑、あるいは無罪にまでしてしまうからです。
すごい切れ者。
シリーズ1『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』では、御子柴礼司の少年院時代の回想も描かれています。
- 稲見教官とのやりとり
- 償うということについて
- 彼が弁護士を目指した経緯
回想を読むと、御子柴礼司に人間味を感じるんですよね。
御子柴礼司、死体遺棄!?
小説は御子柴礼司が死体を遺棄するシーンから始まります。・・・何事!?とドキッとしました。
中山七里さんの小説だから、若干グロいシーンもあったりなかったり。
死体で発見されたのは加賀谷竜次。ユスリを専門としていた悪徳記者でした。加賀谷は保険金殺人事件の加害者宅・東條家に出向いていたようです。
東條彰一に掛けられた3億円の保険金。殺人容疑で起訴されたのは妻・美津子。
美津子の弁護を引き受けていたのが御子柴礼司でした。
御子柴と加賀谷が繋がったね。でもなぜ御子柴は死体を遺棄したの?
冒頭のシーンが衝撃で、御子柴がどう関わっているのかと読むのを止められません。なぜ彼は死体を遺棄しなければならなかったのか、全ては最後に明かされます。
先に言っておくと、加賀谷を殺害したのは御子柴ではないのです。
『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』と『連続殺人鬼 カエル男』のリンク (渡瀬&古手川)
中山七里さんの小説『連続殺人鬼 カエル男』を先に (後でも) 読んでいると、登場人物のリンクが楽しめます。
『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』の刑事・渡瀬&古手川が『カエル男』でも登場するんですよね。
出版は『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』よりも『カエル男』の方が先なのかな。
『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』では渡瀬が際立っていました。古手川の影は薄いのだけど、『カエル男』で古手川の不死身っぷりにビックリ。大活躍します。
御子柴の少年院時代。彼の心を動かしたピアノソナタの演奏をしたのが島津さおり (『カエル男』の有働さおり) だったり・・・。
『カエル男 ふたたび』にも御子柴が登場したよ。
違う物語だけど、小説の世界は繋がっているかのような感じが楽しいです。
猟犬・渡瀬&不死身の古手川刑事vs御子柴弁護士
『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』では彼らの掛け合いが楽しめました。渡瀬&古手川は 加賀谷殺害容疑で御子柴のアリバイを洗い、御子柴は渡瀬のことを 「生まれついてのドーベルマン」 と評価する。
鈍重そうで半分寝ているようだが、わずかな隙を見せた途端に猛然と飛び掛かってくる。あの男に油断してはいけない
渡瀬刑事、とても良い味出してる。最強だ。
御子柴が弁護士になった理由と贖罪
少年院時代、稲見教官の言葉に御子柴の弁護士になった理由がみえてきました。
償うってのはな、犯した罪の埋め合わせをするって意味だ。
御子柴礼司シリーズはどれも贖罪について書かれているんですよね。彼がかつて死体配達人の呼ばれ、自ら重い十字架を背負ったからです。
他人のために生きるのが償うということ。
弁護士になってから、彼なりに他人のために生きているのかもしれない。
そういう信念みたいのが透けて見えるから、このシリーズは面白い。
他人のために生きることで自分が救われたかったんだろうと言う渡瀬に、それが御子柴の本音なんじゃないかと感じました。
他人のため・・・というより、自分のためという方が納得できる。
どんでん返しの結末 (ネタバレあり)
どんでん返しの帝王・中山七里さんです。最後まで気が抜けません。
- 加賀谷と彰一を殺害した犯人は東條幹也 (彰一と美津子の息子)
- 幹也から呼び出された御子柴は、面倒事を避けるために加賀谷の死体を遺棄
東條幹也は障害を持っていて車椅子生活だったため犯行は不可能とされていたけど、思わぬ盲点でした。
でも、ここで終わらないのが七里さんの小説。
裏で糸を引いていたのは幹也の母・美津子です。彼女は全ての罪を息子にかぶせようと画策していました。
なんなんだ、この親子は・・・。ドロドロすぎる。最後は御子柴が刺されたりして 急展開だったよ。