「優しい人」 湊かなえ【あらすじと感想・解説】『ポイズンドーター・ホーリーマザー』より
- 『ポイズンドーター・ホーリーマザー』より 「優しい人」 あらすじと感想 (解説)
- 友彦が殺された理由
- 明日実の優しさと毒親について
- 共感したこと
少しだけネタバレあります。
あなたは優しい人じゃない―。でも、それは決して悪いことじゃない。
湊かなえさん『ポイズンドーター・ホーリーマザー』、「優しい人」のレビューです。周りにも1人や2人いますね。もしかしたらこの記事を読んでくれているあなたも・・・。
イヤミス感たっぷりの一話。
優しいのも善し悪しかも。
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』より 「優しい人」 あらすじ
優しさは時にとんでもなく残酷
「自然の森公園」 のバーベキュー広場で、奥山友彦が殺される。容疑者は樋口明日実。優しさはときに毒となる・・・。友彦はなぜ殺されなければいけなかったのか?
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』より 「優しい人」 ネタバレ感想 (解説)
優しい人になりたいか?
「優しい」 という言葉はくせ者です。私も人には優しくありたいと思っているけど・・・。この1話を読むと優しくなくても良いかなと感じました。
湊さんが描く「優しい人」。ヒヤリとしたよ。
彼が殺された理由
ある殺人事件を元に、被害者の周りの人たちの証言と加害者の視点で進んでいきます。簡単にいうと男女のもつれから発生した事件でした。
「自然の森公園」 のバーベキュー広場で 奥山友彦が樋口明日実に殺される。
被害者→友彦、加害者→明日実です。
彼の周りの人は 「彼は優しい人」 と証言をするけど、加害者の視点では友彦は彼女にとってはそうでなかったことがわかる・・・。
明日実の優しさゆえに、自分に気があるのではないかと勘違いしストーカー化した友彦。ある人には優しくても、ある人には違うかもしれません。
人っていろんな顔を持ってるものだね。
彼が殺された理由は、彼女が優しい人だったからです。
明日実が優しくなかったら、友彦に好意を持たれることもなかっただろうし、一緒にバーベキューに行くこともなかったかも。
優しさは、時にとんでもなく残酷だ。
彼女の優しさと毒親
明日実の視点から彼女が育った環境が伺えました。
人に優しくあれば、母は褒めてくれる。・・・反対に言えば常に優しい子でなければ叱られる環境だったこと。
これも「毒親」ということになる?
何でもかんでも「毒」で括ってしまってはダメだけど、明日実の優しさは母の影響です。彼女が人を殺してしまう元々の原因が「優しさ」にあったのだとしたら・・・。
本心から優しくできるのとイヤイヤ優しくするのとでは全然ちがいます。彼女はイヤイヤだったから心のキャパを超えてしまったのでしょうね。
我慢してまで自分を犠牲にしていると、いずれ彼女のように爆発してしまうかもしれない。
共感したこと
共感した文章があります。
深い関係を築くっていう前提がないから、逆に、誰にでも親切にできる
これ、わかるかも。全く知らない人だから優しくできるっていうのはありますね。
逆に親切にしたら人と深く関わらなければいけない・・・という前提があったら、私はかなり冷たい人になっちゃいそうです。
人と深く関わるのは少数でいい。
世の中のしくみとヒヤリとした結末
ラストにヒヤリとしました。
世界は優しい人の我慢と犠牲の上で成り立っている。
ヒヤリとするけどお互いさまです。みんな我慢もするだろうし、たとえ自分勝手に生きていても いずれそういう時がくる。
世の中の仕組みってそういうもの。