『笑うハーレキン』あらすじ・ネタバレ感想文|偽りの顔と素の自分|道尾秀介
- 『笑うハーレキン』あらすじと感想文
- 全てを失ったホームレスたち
- ピエロと道化師の違い
- 笑顔の裏にある哀しみ
- アイツ (疫病神) の存在
- 意外なカラクリ
少しだけネタバレあります。
清々しい気分になる小説。
道尾秀介さんの小説『笑うハーレキン』感想です。登場人物たちがみんな一生懸命で愛着がもてました。
ホームレスを主軸とした物語。
人が持っている強さを実感したよ。
『笑うハーレキン』あらすじ
ホームレス、一致団結!
家具職人・東口は、家族も仕事も失い、その日暮らしをしていた。そこへ、ふしぎな女がやって来て・・・。
『笑うハーレキン』ネタバレ感想文
『笑うハーレキン』は、ダークな部分もありつつ最後は清々しい気分になれる物語です。
ホームレスが一致団結する姿は、以前に読んだ『カラスの親指』を思い出しました。頑張って明日を生きていこうと思わせてくれます。
面白かったよ。
全てを失ったホームレスたち
家具職人の東口は、会社も家族も失いホームレスとして生活していました。川辺のスクラップ置き場には他に仲間がいます。
他に、スクラップ置き場を提供してくれている橋本。そして、ひょんなことから東口に弟子入りすることになった西木奈々恵。
彼らはお互いの深いところには踏み込まず、それでも和気あいあいと過ごしていました。みんな仲良しでいいですね。
でも笑顔の裏には相当の苦労があって、重い過去を引きずって生きているんだ。
ピエロと道化師の違い
「ハーレキン」という言葉が気になりました。タイトルにも描かれています。道尾さんのことだから、その言葉には深い意味があるんだろうな・・・と。
ハーレキンというのは道化師のことです。
本書ではピエロのお話も出てくるけど、また少し違うようでした(化粧をして素顔が見えないという意味では似ているけど)。
ピエロ恐怖症という言葉があるよね。
興味をひいたのは、ピエロと道化師の違いでした。
一説だと、道化師(ハーレキン)の顔に涙のマークを描くとピエロになるようです。本当かどうかわかりませんが、みんなに馬鹿にされながら人を笑わせているけれど、じつは哀しみを抱いている、という意味だとか
道化師の顔に涙マークを描くとピエロになるのですね。涙マークってところが痛ましい・・・。
道尾さんの文章に、この物語を通して描きたかったことがあらわれている気がしたよ。
「みんなに馬鹿にされながら人を笑わせているけれど、じつは哀しみを抱いている」の部分です。
笑顔の裏にある哀しみ
ホームレスたちと奈々恵。彼らはみんな楽しそうにしていました。でも誰ひとりとして素顔を見せていなかったのです。
まるで笑う道化師。化粧の下は笑っていません。
悲しくてもムリに笑おうとしたり、惨めな自分を隠したり。なかなか素の自分を見せません。そうしてお面を被って自分を偽る。
人って少なからずそういうものなのかもしれない。
それが悪いとは思わないし、むしろ必要なときもありますね。でもたまにお面を取って素の自分と向き合うのも大切。哀しい私も惨めな私も、自分を認めてあげることです。
この物語は人間の本質を描いていて深い。さすが、道尾さん。
アイツ (疫病神) の存在
アイツ (疫病神) です。主人公の横には、いつもアイツがいました。
会話形式で進んでいくから、本当に存在しているかのようでした(彼の中では存在している)。アイツを通して見えてくる東口の人生の過ちと後悔・・・。
こんなふうに疫病神になって出てきたらイヤですね。
後悔のない人生を送りたいものだ。
『笑うハーレキン』意外なカラクリ&素敵なラスト
騙された!!とまではいかなかったけど、意外なカラクリがありました。ある人物の企みです。
そんなカラクリが結末にあったんだ。道尾さんらしい。
ラストは彼らに危険が迫ります。でもその過程で主人公は仲間の本当の姿に気づく。
本当はみんな働きたかった。
みんなで何かを成し遂げるのって気持ちの良いことですよね。仕事でも遊びでも・・・。素敵なラストでした。