『闇祓(やみはら)』ネタバレ感想文・あらすじと結末|恐怖の闇ハラスメント|辻村深月
- 『闇祓』あらすじと感想文
- 「闇ハラスメント」の恐怖
- マウンティングし合う女たち
- 相手にかけてほしい言葉
- 神原家の正体と関わった人々の末路
ネタバレあります。ご注意ください。
あの家族が来ると人が死ぬ。
辻村深月さんの小説『闇祓(やみはら)』読書感想です。辻村さん初のホラー小説らしい。・・・確かに怖かったです。
少しオカルトチックな展開。一番怖いのは「人間」かもしれませんね。
ずっと、怖い怖い・・・と思いながら読んでたよ。
怖くても面白くて、ほぼ一気読みです。さすがでした。
『闇祓』あらすじ
「闇ハラスメント」の恐怖
「うちのクラスの転校生は何かがおかしい―」クラスになじめない転校生・要に、親切に接する委員長・澪。しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。唐突に「今日、家に行っていい?」と尋ねたり、家の周りに出没したり……。ヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は憧れの先輩・神原に助けを求めるが―。
周りにもいるかも!?「闇ハラスメント」の恐怖
『闇祓(やみはら)』で描かれていたのは、闇ハラの恐怖でした。
パワハラやモラハラなど、いろんなハラスメントがあるけど、闇ハラ?
ヤミハラ。自分の心にある闇を振りまき、押しつけ、他人をそれに巻き込むのは闇ハラだ
闇ハラとは、闇ハラスメントの略です。検索しても出てこなかったから、どうやら辻村さんの造語らしい。
ほんとうに、ありそうな言葉だね。
精神・心が闇の状態にある家族がでてきます。彼らに目をつけられたら最後、人生が狂い恐ろしいことになる。彼らの周りは死人が続出でした。
こんなひと、周りにいたらイヤだ・・・。
リアル感があって怖くなります。私の周りの人を思いうかべ、「よし、こんな人はいない。大丈夫だ!」と確認せずにはいられませんでした。
頼むから、自分の心にある闇を押しつけないでくれ。
ほんとうに、たちが悪いです。この家族・・・。
『闇祓』ネタバレ感想文|闇を押しつける「神原家」
『闇祓(やみはら)』は長編小説でいて、全てがつながる連作短編のようなかんじでした。
5章+エピローグからなり、1〜4章までは、ある4人家族ひとりひとりが描かれて周りに闇を押しつけていきます。その家族とは「神原家」。兄、母、父、弟の順に登場します。
周りの人々が闇にのまれていくのが怖かった。
短編集(?)と思っていたけど、神原家ひとりずつでてきて、これは連作短編なんだと気づきました。神原という文字に反応してヒヤリとしてしまう・・・。
闇を押しつける家族が登場するなら、闇を祓う男の子・白石要も登場します。はじめはブキミくんだったけど、なかなかカッコいいキャラでした。
印象に残った章を中心としたレビューだよ。
マウンティングし合う女たち|「隣人」神原かおり
「隣人」では神原かおり(母)が登場します。見ためからちょっと異様な雰囲気で怪しげ・・・。
なんでもすぐ、『私もなの』って言うんですよね
元アナウンサーの梨津が仕事のことを話すと『私もなの』と同調するのが怖くなりました。かおりに関わってしまったために、梨津や佐渡家が崩壊していく様子が恐ろしい・・・。
神原かおりも異様だったけど、マウンティングを意識してる女たちもドロドロしてた。
主人公の梨津と佐渡博美のマウンティングが目を引きました。
マウンティングとは、自分の方が相手よりも立場が上であること、また優位であることを示そうとする行為や振る舞いのことです。
完璧すぎるコーディネートの家の中で、梨津は妙に居心地が悪くなっていた。これではまるで、すごい、すごい、と絶えず博美を褒めなければいけないようだ
博美より目立ってしまうような話題は、誰も口にしてはならない雰囲気の家。・・・これは居心地がわるいですね。
梨津も博美もマウンティングの張りあいをしている描写は、リアル感があるからこそウンザリする気持ちになりました。
辻村さんは女性の心理描写が上手いな。
相手にかけてほしい言葉|「同僚」神原仁(ジンさん)
「同僚」では神原仁(父)が登場します。会社でみんなに「ジンさん」と呼ばれていて親しまれる人がよさそうな人物。
上司である佐藤部長のパワハラがすごくて、最初は部長が闇?と思っちゃいました。実は、部長はジンさんに闇を押しつけられた被害者なんですよね。
部長みたいなパワハラ上司、リアルにいそうだけど・・・。
ジンさんがくせ者でした。彼に相談すると全部受け止めてくれて、話を聞いてくれる。ジンさんは相手に「間違ってる」と教えず、あなたが不快だと突きつけないんです。
「みんな、言われたい言葉なんか、決まってるんですよ」
そう言いきるジンさんが、途中からブキミに感じました。間違っていることも全部正しいとするジンさんに関わると、周りの人々は変な方向にエスカレートしていく。
・・・神原家の中では、いちばんジンさんが怖かったです。彼に関わった人たちが犯罪に手を染めたりして狂っていく。
闇を抱えているように見えないジンさんは、まるで神さまのフリした悪魔だ。
闇を押しつけた結果|「家族」神原家の正体と関わった人々の末路
最終章「家族」では、白石要により神原家の闇ハラが全て暴かれます。
第一章「転校生」の主人公・澪も登場。神原家に関わり闇を押しつけられた人々の結果(その後)が描かれていました。
飛び降り自殺、屋上から事故死、殺人・・・。これが今まで読んできた神原家に関わった人々の末路です。
「あの家族が来ると人が死ぬ。あいつらは、そういう一家なんだ」
神原家に関わった人も闇を抱えて、周りの人々に押しつけるのが怖くもありました。
神原家の長男のようなストーカーや、パワハラ上司は周りにもいそうでリアル感がある。
闇を押しつける「神原家」とは何なのか。悪霊みたいな家族だけど、最終章で「神原家」の正体が明かされます。
怖い事実が発覚
「こいつら『家族』は補充するんだ」
いま構成されている「神原家」のメンバーは、かつては「何者か」であった人々だったのです。そして、第1〜4章に登場した人物が新しい「神原家」の一員になっていたことが衝撃でした。
花果は神原一太(長男)に、梨津は神原かおり(母)に・・・。
叙述トリックを読んだような衝撃だったよ。
辻村深月さんの小説は伏線の回収があるんですよね。最後まで面白くよめました。
『闇祓』はリアルな闇ハラにヒヤリとする小説
よみ終わったあとに、自分の周りに「神原家」のような人々がいないか確認したくなる『闇祓(やみはら)』。
あのひと(または自分)がやってることは、もしかしたら闇ハラなのかも―。
心が荒んだり、嫉妬、妬み、羨みなどの感情は誰でも持ち合わせるものです。でもそれがエスカレートして、自分の思いを一方的に相手に押しつける行為は「闇ハラ」にあたるかもしれません。
私もそうならないように用心しよう。