- 新井素子さんのホラー小説『おしまいの日』あらすじと感想
- 夫に依存する妻
- 壊れていく三津子
- 黒く塗りつぶされた日記
- 本当に壊れていたのは誰か
- あとがきについて
少しだけネタバレあります。
もうすぐ、おしまいの日が来る。
新井素子さんのホラー小説『おしまいの日』感想です。『ひとめあなたに・・・』を読んだら、こちらも読みたくなりました。
新井さんの小説って 好き嫌いが分かれるのですが、ハマる人はものすごくハマるんですよね。私のように。
『おしまいの日』あらすじ
最後に世界が一転する!?
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
結婚7年目を迎えた三津子と忠春。幸せな日々を過ごしていた。仕事で忙しい忠春を心配する三津子だったが、少しずつ日常が狂い始めるのだった・・・。
『おしまいの日』感想

新井素子さんの描き方は独特。でも面白い! 最後まで読むと、狂っていたのは誰か (何か?) わからなくなってきます。
サイコ・ホラーと言われるほど怖くはなかったけど、最後にある怖さ (疑問?) がわきあがってくる作品でした。
私が読んだのは文庫版です。上田早夕里さんが解説を書いていて、そこに書かれていた言葉に頷いてしまいました。
本当の意味で壊れていたのは誰?(あるいは何?)
まさにそうなんです!『おしまいの日』の魅力は ここにあります。何とも煮え切らない読後感・・・。読み終わると、それについて考えずにはいられなくなります。
夫に依存する妻
初めに感じたのは、夫に依存する妻の異常さでした。
夫の春さん (忠春) を待つ妻・三津子が重い。春さんは仕事人間で帰りはいつも遅く、三津子はひたすら夫の帰りを待ち続けます。
毎晩ご飯を作り、夫の帰りが午前さまになろうとも自分も食べずに・・・。
毎日となると待たれている方は罪悪感に苛まれます。待たなくて良いから寝ててくれと。
新井素子さんの小説『ひとめあなたに・・・』の 「チャイニーズスープ」 に出てくる由利子を連想しました。

三津子は徐々に精神を病んでいきます。
壊れていく三津子
現実と三津子が毎日つけている日記とが交互に描かれていました。日記には春さんのことばかりです。彼女の心の叫びも書かれていました。
いつも帰宅が遅い春さん。休みのはずの土日でさえもゴルフなどの接待や、休日出勤などで働き通しの毎日でした。
彼女は徐々に壊れていきます。この辺りは少しホラーでした。
“にゃおん” と名付けた猫や、白い虫の下りなどを読んでいると彼女の精神が病んでいるのが伝わってきます。
本人はまともだと思っているのですが、傍から見るとどこかおかしい。壊れた人の視点で描かれているからより怖さが増します。
黒く塗りつぶされた日記

「おしまいの日」 が近づくにつれて、ホラー感が強くなります。
三津子の日記の文字が黒く塗りつぶされた描写があって、そこにはいったい何が書かれていたのかとゾッとしました。
・・・この辺りは怖かったです。
本当に壊れていたのは誰か
本当に壊れていたのは誰か (何か) ?
これが本書のキモ。三津子はもちろん壊れていたのですが、果たして彼女以外はまともなのか?
友だちの久美に宛てた手紙を読むと、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けることになります。そして極めつけは春さんのラスト。
その展開を読むと、
壊れていたのは 彼女だけではないかもしれない ・・・ということに思い至るはずです。
仕事第一主義の夫。イヤなことは先延ばしにする久美。過労死寸前まで働かせる社会の仕組み。
わからなくなりました。・・・いえ、まともではない!!と思ってしまいます。最後に世界が一転したような気持ちになるんです。
『おしまいの日』を要約すると・・・
なかなか深い結末でした。その後に書かれている新井さんの 「あとがき」 を読んで思わず微笑んでしまいました。
『おしまいの日』を要約すると
「春さんは、今日も帰ってこない」 と、まあ、そういう話です。
確かに 春さんは今日も帰ってこない話ですね。簡潔すぎるくらい簡潔だけど。
あとがきが面白くて、ホラーな本編とのギャップが良いなと、こちらもツボにハマってしまいました。
こちらもオススメ



