- 『チグリスとユーフラテス』あらすじと感想文
- コールド・スリープから目覚めた人々
- 永遠の子供・ルナの人生
- ルナが生きる意味
少しだけネタバレあります
生きることに意味はあるの?
新井素子さんの小説『チグリスとユーフラテス』感想です。学生時代、新井素子さんの小説が好きでよく読んでいました。今読み返しても面白いですね。
人類最後の子ども・ルナを通して見えてくるものがありました。
『チグリスとユーフラテス』あらすじ
なぜ母は私を産んだのか―
惑星ナインへ移住した人々。彼らは人工子宮を繰り返すことで繁栄したが、衰退の一途をたどる。ついに最後の子供、ルナが誕生した―。
『チグリスとユーフラテス』ネタバレ感想文
『チグリスとユーフラテス』は、生きる意味を深く追求した物語。
惑星ナインにひとり取り残された最後の子供・ルナを見ていると、生きる意味って何だろう・・・と考えたくなりました。
コールド・スリープから目覚めた人々

惑星ナインにたったひとり残された子ども・ルナ。彼女は寂しさのあまり、次々とコールド・スリープで眠っている人たちを目覚めさせます。
目覚めた登場人物をまとめました。
コールド・スリープに入っていたわけだから、彼女たちの寿命は永くはないんですよね。病気だったり高齢だったりするわけです。
未来に希望を託して眠っていた彼女たちは、惑星が滅びかけたときに起こされるのだから・・・。それでもルナを恨めなくて、彼女たちの絶望感が伝わってきました。
それぞれの賭けてきた人生はルナという最後の子供を生み出し、ナインが滅びゆく今、意味があったのか。
永遠の子供・ルナの人生
『チグリスとユーフラテス』を読んで、生きる意味を考えたくなりました。
ルナに起こされた登場人物たちの生き甲斐はそれぞれだけど、朋美以外は結果を見れば何れも失敗に終わっています。その結果が最後の子供ルナなんですよね。
―なぜ母は私を産んだのか。
ルナは永遠の子供であることを社会から強要される人生でした。実際は7~80歳なのにフリフリのリボンのついた子供らしいものを着ているルナ。
大人になることを許されず、子供のままでいることでしか叶わなかった人生です。
永遠の子供でいることは楽だけど、果たしてそれが幸せなのかどうか。
ルナは自分を最後の子供にした社会を憎んでいました。・・・そうですよね、そうなるのがわかります。
同時に私が生きている意味も考えていました。私はやりたいことがたくさんあります。やりたいことだらけで時間が足りないくらい。それは全部楽しいことや幸せを感じることで・・・。
楽しいことをして幸せと感じる瞬間が生きていることです。
ルナが生きる意味|そして母へ・・・
惑星ナインにひとり取り残されたルナ。彼女は生きる楽しみもなく、ただ復讐のために現在の自分の姿を見せつけるだけ・・・。
コールド・スリープから目覚めたアカリは、ルナに生きる意味を与えてくれました。
ルナが惑星ナインの母になる―。
動物、植物、昆虫など、全ての生き物に対しての母です。子供から大人へ、そして母へ。
社会に復讐するためだけに生きていたルナが、やっと幸せを実感した瞬間。徐々に変わっていくルナの姿が印象的でした。


