- 夏川草介さんの小説『本を守ろうとする猫の話』あらすじと感想
- 本を愛する人々
- 大切なこと
- 読書の醍醐味
- 本を読み続ける理由
本好きにおすすめの1冊。
夏川草介さんの小説『本を守ろうとする猫の話』感想です。『神様のカルテ』の著者・夏川草介さん。
夏川版『銀河鉄道の夜』の言葉に惹かれて読み始めました。確かに友 (?) と旅をしていく物語でしたが、どこが『銀河鉄道の夜』なんだろうか・・・。
そう思えなくもない部分もあったけど、その言葉に惹かれて読み始めた私は少し肩透かしです。でも とても素敵なファンタジーでした。
『本を守ろうとする猫の話』あらすじ
本好きにおすすめの1冊
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
高校生の夏木林太郎は 書店を経営する祖父と暮らしていた。その祖父が亡くなり、本の整理をしていたとき 1匹のふしぎなトラネコと出会う。本をめぐる冒険が始まった。
「本好き」におすすめの1冊

おすすめする理由。
夏川さんの「本が好き」という気持ちがたくさん詰まっているから。読んでいる私も 改めて「本が好き」という気持ちを実感できたから。
現実逃避? 仮想世界への憧れ? 暇つぶし?
・・・どれも違うような気がします。憧れは少しだけあるけれど。読み進めるうちに答えが見つかりました。そのことについては最後に書きたいと思います。
『本を守ろうとする猫の話』感想
『本を守ろうとする猫の話』には、本を閉じ込める人、切り刻む人、売りさばく人・・・が出てきます。
「本好き」におすすめの1冊と言ったばかりなのに、登場人物は本を大切にしているとは言い難い人たちですね。
でも彼らには共通の思いがありました。本を愛しているということです。
本を愛する人々
夏木書店の2代目・夏木林太郎は、ある日1匹のトラ猫と出会います。古本屋を営む祖父が亡くなり、呆然としていた彼の元にやってきた しゃべるネコ。1人と1匹は不思議な迷宮へと旅に出ます。
閉じ込めたり、切り刻んだり、売りさばいたりする人たちから本を助け出すために友と旅をする。
2人 (1人と1匹) が出会った迷宮の人たちは、一見、本を乱雑に扱っています。本を閉じ込めたり、切り刻んだり、売りさばいたり・・・。
本を愛するが故のことなんです。好きなのに変な方に捻れてしまった結果、このような行為になってしまう。切なくなりましたが彼らを憎めません。
夏川さんの描くキャラがとても好きです。
『神様のカルテ』を読んだ時にも思ったことでした。毒の中にユーモアがあり、冴えないキャラなのにどこかカッコよさを感じ、まっすぐな熱い想いが伝わってくる。
人間味が感じられるんですよね。とら猫と林太郎のキャラにとても味があり面白いです。
大切なのは、がむしゃらに読むことじゃない!

大切なこと
夏川さんの言葉は優しいようで鋭い。本をたくさん読めば良いというわけではありません。それよりももっと大切なことがあります。
たくさん読んでも想像しなければ実にならない。
読み方なんて自由だけど、本というのは娯楽だけに留まるものではありません。想像することや考えることナシには 小説の中身を本当に理解したとは言い難い。
お前はただの物知りになりたいのか?
この一文、ガツンときました。帯にも書かれているものです。私はただの物知りにはなりたくありません。
読書の醍醐味
少し前に速読に憧れていました。
私は読むのが遅い方です。働いて、遊びに行って、ゲームして・・・。やりたいことがたくさんあって、その中で本を読む時間も確保して。速読に憧れないわけがありません。
でも今は少し違うんです。
夏川さんの小説を読んで、改めて時間をかけて読むことの大切さに気づきました。
決して速読を否定しているわけではないけど、時間をかけて読むのも醍醐味。この物語は時間をかけて読むのがぴったりの本です。
本を読み続ける理由
当たり前ですが、本というのは人が書いたものです。そして人が書くからには知識だけではなくて気持ちが宿っています。
喜び、悲しみ、切なさ、苦しさ・・・。本を読むことで登場人物に同調したり感動したり。それが面白いから本を読み続けています。
SFとかも好きですが、ぶっ飛んだ世界観でもそこにはやっぱり人の気持ちが描かれているんですよね。
本を読むことに深く言及している本作。夏川さんのひたむきな思いが伝わってきて感慨深くなりました。素敵な物語です。
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