『耳猫風信社』あらすじ・ネタバレ感想文|気まぐれなとなり町|長野まゆみ
- 『耳猫風信社』あらすじと感想文
- なかなか行けないとなり町
- 長野さんが描く少年
- リキュールの飲み方
- となり町は、夢か幻?
少しだけネタバレあります。
ふとしたときに扉がひらく。
長野まゆみさんの小説『耳猫風信社』読書感想です。ファンタジックな空気感に懐かしい気持ちになりました。
『耳猫風信社』は、ちょっぴり不思議なファンタジー小説。
そういえば、小さい頃、訪れたことのない場所へ行くのが好きだった。
・・・と言っても、それはごく近所だったりします。近くなのにずいぶん遠くまで来たような不思議な感覚。
長野さんの『耳猫風信社』を読んでいたら、あの頃のことを思い出しました。それがとても心地よくて、ずっと浸っていたくなってしまうんです。
『耳猫風信社』あらすじ
懐かしい気持ちになる物語
「ぼく」はきょうは絶対、日記帳を買うんだ、と決意してとなり町の方に歩き出した…。なかなか行きつけないとなり町、雨の日に出逢った眼帯の少年。きみを迷路に誘い込む、ぼくたちのファンタジー。
『耳猫風信社』ネタバレ感想文|幻想的なファンタジー小説
長野さんが描く不思議は、ホンワリと温かい気持ちになります。
それが心地よいんだ。
主人公・トアンが住んでいるところの隣町は、隣なのになかなか行けないところでした。・・・ちょっぴり不思議で幻想的な物語です。
なかなか行けない「となり町」
11歳になったぼく・トアンはある日、日記帳を買いにとなり町に迷いこみます。とても不思議な場所で、もう一度行こうとしても、なぜかたどり着けないところ。
『となりのトトロ』を連想しました。
メイとサツキはトトロに会いたいと願って秘密の抜け道を通るけど、たどり着けなかったりしますね。それに似た雰囲気です。
いつも行けるとは限らないんだ。
ここでは、不思議な少年と出会った十字路、日記帳を買った《山猫の店》、《耳猫風信社》などが描かれていました。
ネコが人として存在する町。
長野さんのファンタジーって猫がでてくるのが多いのかな?『月の船でゆく』も猫と人が共存していました。
となり町なのに探すとたどり着けない。ふとした瞬間に迷いこんでいるんです。小さいころ、ご近所探検したことを考えました。
あの頃に感じたワクワク感はもう味わえない。
でも切ないとかそういうのでなくて、懐かしく微笑んでしまうようなことです。
長野さんが描く少年が好き
トアンは日記帳を買いにいったときに、十字路で不思議な少年と出会います。
睛がコンビネゾン。黒髪に嫌気がさして前髪をフラッシュピンクに染めたい少年・カシス。
長野さんが描く男の子が好き。
主人公のトアン、友達のソラ。みんな何かしら悩みを抱えていて、可愛くて微笑んでしまうんです。
大人の男も出てきました。キースという名前で、黒い服が似合う人。さらっと傘を差し出すところなんかはカッコイイ。
リキュールの飲み方が美味しそう
美味しそうな飲み物、リキュールがでてきました。長野さんの小説では、これも楽しみのひとつなんです。食べ物が美味しそうで・・・。
気に入ったのはリキュールの飲み方。
あまりお酒は飲まないのだけど、言葉で丁寧に書かれると、本当に不思議な感じがしてやってみたくなる・・・。
美味しそうだったよ。
不思議な「となり町」は、夢か幻か?
トアンとソラが、むかし遊んだビルと似ている《耳猫風信社》。でも夏前に取り壊されて、今は空き地になっているはず・・・なんですよね。
不思議な「となり町」は、夢か幻か?
彼らだけに見えたものなのかも。
『となりのトトロ』の物語の中でトトロが実在しているように、《耳猫風信社》も実在しているんですよ、きっと。十字路も《山猫の店》も・・・。
そこにはカシスやキースがいて、ふとしたときに扉がひらくんです。
気まぐれな猫みたいな物語だ・・・。