- 『クスノキの番人』あらすじと感想・レビュー
- クスノキの番人・玲斗
- 預念と受念
- 言葉にできない思い|佐治喜久夫のピアノ
- 号泣したラスト
- 『クスノキの番人』を読んで思ったこと
ネタバレあります。ご注意ください。
その木に祈れば、願いが叶う!?
東野圭吾さんの小説『クスノキの番人』感想です。ミステリー感はあまりないけど、ほっこりするお話。面白くて一気に読みました。
気持ちを言葉で伝えるのには限界があるけど、言葉がいらないときもある。クスノキを通して大切なことを学びました。
もくじ
『クスノキの番人』あらすじ・評価
人々の思いが交差するクスノキ
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
その木に祈れば、願いが叶うと言われているクスノキ。その番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす物語。 玲斗は 不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまう。そこへ突然弁護士が現れ、依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるというのだ。依頼人の待つ場所へ向かうと、年配の女性が待っていた。千舟と名乗るその女性からクスノキの番人を任されることに・・・。
『クスノキの番人』ネタバレ感想・レビュー
『クスノキの番人』は 人々の思いが交差するクスノキをめぐる感動作。ほっこりと泣けました。
クスノキの番人を任された主人公・玲斗が、様々な人たちと出会い、成長していく姿も頼もしかったです。
言葉で伝えきれないこと。でも言葉がなくても伝わる思いもある・・・ということを実感しました。
クスノキの番人・玲斗

罪を犯し逮捕された玲斗のもとに現れた弁護士。依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるといいます。
依頼人は柳澤千舟でした。あまり交流がなかった彼の叔母です。そして玲斗はクスノキの番人を任せられることに・・・。
千舟や、祈念に訪れる人々と接しながら、彼の中で様々な思いがめぐります。
どんなふうに生きればいいのかな
罪を犯し逮捕された玲斗。弁護士が現れたときも、自分の進む道をコイントスで決めていました。でもそんな彼が少しずつ変わっていく。
新月と満月の夜、クスノキに願いを・・・|預念と受念

クスノキ・・・というのが、この物語では神秘的でした。願いが叶うというより、人々の思いが交差する場所です。
新月の夜に預念を、満月の夜に受念を。
預念とは クスノキに念を預けることです。そして 受念とはクスノキを通して念を受け取ること。念を預けた人と血の繋がり、思い出がある人が念を受け取れます。
預念をしておけば、もしも自分が死んだ後に、血縁者に思いを伝えられる。この辺り、辻村深月さんの『ツナグ』を連想しました。

東野圭吾さんの『クスノキの番人』は、言葉だけじゃないんです。クスノキは言葉にできない思いも預かり、伝えることができる。
念です。念とは気持ちや思いという意味がありますね。それは必ずしも全て言葉にできるとは限りません。
言葉にできない思い|佐治喜久夫のピアノ

祈念に訪れる人・佐治寿明のストーリーが中心に描かれていました。寿明の浮気を疑っている彼の娘・優美と共に、玲斗は彼の行動とクスノキについて探っていきます。
後半で、寿明は 亡くなった兄・喜久夫の念を受け取っているのだとわかります。喜久夫の思い、そして喜久夫が作曲したピアノの曲。
クスノキは、そんな言葉にできない思いも預かってくれます。そして 満月に訪れる血縁者にそのまま伝えてくれる。
心に響いた千舟の言葉
言葉の力には限界があります。心にある思いのすべてを言葉だけで伝えることは不可能です。だからクスノキに預かってもらうのです
上手く言葉にできないことって たくさんあります。それでも相手に伝えるために何とか言葉にしますが、その時に感じた気持ちを丸ごと伝えるのって難しい。
クスノキみたいに感じたことをそのまま伝えられたら便利?
・・・とも思いましたが、丸ごと伝わると要らぬ摩擦を生みかねないことにも気づきました。
良い感情だったらいいけど、よろしくない感情を抱くこともあるわけで。それがそのまま相手に伝わってしまうのは怖い。
ラストに号泣|千舟の手帳
ラストに号泣しました。
明日の千舟さんは、今日の千舟さんじゃないかもしれない。でもそれでもいいじゃないですか
玲斗の言葉が温かい。千舟が認知症を患っていることに玲斗は気づくのです。クスノキに託した千舟の預念を玲斗が受け取るかたちで。
最後に なぜ千舟は玲斗が逮捕されたとき、弁護士を差し向け、クスノキの番人を任せたのかが彼女の口から語られます。
そこでも泣いてしまいました。さすが東野さんですね。
『クスノキの番人』を読んで思ったこと
『クスノキの番人』を読んで思ったのは、相手を信頼することや、知ろうとすること、伝えようとする気持ちが大切ということです。
最後の千舟と玲斗が 気持ちをぶつけ合うシーンや、祈念に訪れた壮貴と血の繋がりのない父親のように。
高田大介さんの小説『図書館の魔女』を読んだときにも同じことを感じました。

相手を大切に思う気持ちは尊い。ほっこりと泣けました。



