『ツナグ』あらすじ・読書感想文|伝えきれなかった想い|辻村深月
- 『ツナグ』あらすじと感想文
- もしも、亡くなった人にもう一度会えるとしたら
- 「待ち人の心得」 キラリの気持ち
- ダークな 「親友の心得」
- 最終話 「使者の心得」
- 「ツナグ」 という言葉から連想したこと
少しだけネタバレあります。
伝えきれなかった想い
辻村深月さんの小説『ツナグ』感想です。確か映画にもなっていますよね。映画は見てないのだけど、原作小説を読みました。
心に響いて感動!読みやすかったです。
泣いた。読書感想文にもおすすめだよ。
『ツナグ』あらすじ
感動の連作長編小説!
もしも亡くなった人に会えるとしたら・・・。「ツナグ」 が仲介人となり、それぞれの思いを繋げる。涙が止まらなくなる感動の小説。
『ツナグ』ネタバレ読書感想文
『ツナグ』は 5つの物語からなる連作短編集でした。
どのストーリーも良くて感動します。さすが辻村さんですね。
読みやすかったよ。
もしも、亡くなった人にもう一度会えるとしたら・・・
もしも亡くなった人にもう一度会えるとしたら、私は誰を選ぶだろうか。
自分に置きかえて考えてしまいました。生きている間に会えるのは、ひとりだけです。
生きている人と亡くなった人との窓口 「使者」。「使者」 と書いてツナグと読みます。
高校生の歩美を介して生者と死者が一晩だけ会うんだ。
「アイドルの心得」 を読んだ時は、あまりにも軽いノリで感動も何もなかったけど、最後の方に行くにつれてグッときました。
このアイドル、飯島愛さんではないかと書いている人がいて妙に納得。
「待ち人の心得」が一番良かった。切なくて泣いたよ。
「待ち人の心得」 キラリの気持ち
「待ち人の心得」は、失踪した婚約者・キラリのことが忘れられない彼のお話でした。
婚約者が突然いなくなり 残された土谷の心には大きなキズが残ります。生きているのか死んでいるのかわからなくて、周りからは騙されていたんだと言われる。
でも彼女の純粋な心を想うと簡単には割り切れない・・・。そんな状態で7年です。
土谷とキラリがツナグを介して会ったとき、真相が分かってホッとした。
失ってから気づくことがあります。あの時ああしていればと・・・。考えてもしょうがないのに考えてしまう。
失踪したキラリにも、彼に伝えきれなかった想いがありました。
思わず泣いたのは、土谷がキラリの 「大事な物入れ」 の缶を見つけたところです。そこに入っていた3つ折りにされた厚紙。広げると四角形のカップでした。
土谷とキラリがデートした映画館で食べた、キャラメルポップコーンのカップ。
彼女は 「大事な物入れ」 に入れて大切にとっておいたんです。それを見つけた土谷と一緒に 私も切なく温かな気持ちになりました。
キラリ、良い子じゃん。
ダークな 「親友の心得」
「親友の心得」はダークなお話でした。
ツナグを介して亡くなった親友・御園に会ったがために、重い十字架を背負っていくことになった嵐。
他のお話は 死者と会ったことで前向きになれたりするのに、「親友の心得」 は逆に死者に縛られてしまう一話です。
『鍵のない夢を見る』のようなダークさを感じました。
でもこういうの、好き。
最終話 「使者の心得」 ツナグという言葉から連想したこと
最終話「使者の心得」は、ツナグの歩美の視点で描かれる物語でした。
さまざまな人の人生を垣間見る歩美。
突然おとずれた大切な人の死は、生きている人の中に深く刻まれます。この物語の嵐や、土谷のように・・・。
呪縛のようにも感じるけど、死者と会うことで吹っきれる。でも完全に鎖を断ち切ってしまうということではないんですよね。
「ツナグ」という言葉から連想したのは「手をつなぐ」ということ。
大切な人とはいつまでも繋がっていたい。
大切な誰かと心が通いあっているときは、とても幸せな気持ちになります。亡くなった人とはもう手をつなぐことは出来ないけれど、心はいつまでも繋がっていたい。
この本のタイトルって素敵。
生者と死者の窓口である「ツナグ」。彼によって再会したがために、より重い十字架を背負ってしまう場合もあるのだけど・・・。