- 高田大介さんの小説『図書館の魔女』3、4巻あらすじと感想
- 本のテーマ 「言葉」 について
- 左手を奪われたマツリカ
- 双子座の最後のことば
- 知ろうとする気持ち
少しだけネタバレあります。
第3部「文献学講義と糸繰る者達」
第4部「円卓会議と双子座の館の対決」
高田大介さんの小説『図書館の魔女』3、4巻感想です。後半は物語が一気に加速していきます。1、2巻が「静」ならば、3、4巻は「動」という感じでした。
一ノ谷と二ザマ帝、アルデシュが協定を結びミツクビに対抗する。その中心にいるのが高い塔の魔女・マツリカです。そして彼女に遣わされた刺客との対決・・・。
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テーマは 「言葉」

ファンタジーと聞くと敬遠する人もいると思いますが『図書館の魔女』は「ことば」をテーマにしています。言葉について深く考えてしまいました。
言語学者の高田さんだからこそ書けた小説。
普通のファンタジーとは一味違うものがあるんです。万人うけするものではないと思いますが、かなりレベルの高い小説。
『図書館の魔女』あらすじ
読み始めると止まらない!!
マツリカとキリヒトの距離は徐々に縮まっていった。でも、マツリカは発言力を持つために、彼女を狙う刺客が現れるのだった・・・。
『図書館の魔女』3、4巻 感想
本書のテーマ「ことば」について深く共感したところをふまえてレビューを書いています。
左手を奪われたマツリカ
声を持たない図書館の魔女・マツリカから手話が奪われました。
二ザマの宦官宰相ミツクビが送った刺客・双子座により、彼女の利き腕である左手が奪われてしまいます。
それでもキリヒトを使って自分の意志を伝え続ける彼女は健気です。マツリカがヴァーシャールヘイに言ったひとことが心に響きました。
声はなくとも言葉はある。手話を奪っても言葉は滅しない。私たちに指で話す準備がなかったとしても、それでも私の言葉は絶えない。
考えや気持ちを伝える意志があれば、たとえ声がなくても手話ができなくても「ことば」は存在し続ける。
図書館に多くの本があるように 人は言葉を残して伝えていく。
そこには、かつて生きていた人々の言葉が収められています。キリヒトが、またはハルカゼやキリンがマツリカの意思を伝えていく。
普段何気なく喋っていることも誰かの心に残っていたりして。「ことば」というのは儚いようで 影響力があるものなんだなと思い知らされました。
双子座の最後のことば
泣いたシーンがあります。
キリヒトがヴァーシャに双子座の最後のことばを伝えた瞬間。それを聞いたヴァーシャが嗚咽した場面です。
わが半分
残された者にとって言葉は救いにもなる。たったひとことの言葉でも。それには発する側の思いがたくさん詰まっているから。
ヴァーシャが図書館に来るまでのこと、彼の思いが一気に頭の中をかけめぐりました。
結局 彼は図書館を離れてしまったけど『霆ける塔』で会えることを願っています。
知ろうとする気持ち

高い塔の魔女は声を持ちません。しかも途中から手話を奪われてしまう。でも そんなことは取るに足らないことです。
マツリカにかけられた暗示を解くために双子座のもとへ向かう一ノ谷の一行。そこで生死を分かちあったキリヒトとイシュトバーンは 話す言語が違うにもかかわらず深い絆が芽生えました。
お互いの言語が違うキリヒトとイシュトバーンの会話は、少しのズレはありますが長年の友のように気心がしれています。
違う言語で話しても、たとえ声を持たなくても心は通じている。まるで2人だけに通じる言葉が存在しているかのように。
単に音ではなくて 気持ちであり意思でありうるんです。彼らのように心が通じ合えれば 声はいらないのかもしれません。
相手を信頼することや知ろうとする心があれば、たとえ声や手話がなくとも気持ちは伝わる。
著者の高田さんは 様々な登場人物を介してそのことを伝えているような気がしました。当たり前で、でも1番大切なことです。
心に染みました。
止まらない面白さ
マツリカの鋭い推理が面白い!
まだあどけない少女なのに 読んでいると大人の女性と錯覚してしまうような知識力。そして鋭い推理力に圧倒されます。
存在しなかった言葉からも推理をめぐらせ真実に行き着く。とにかく読む力がすごい。
彼女の側にいつもいるキリヒト。
2人のやり取りはほのぼのします。ハルカゼやキリンもですが、彼女に出会った人たちはみんな彼女に引きつけられる。
私もそうでした。登場人物が好きになってしまうんです。だから読むのが楽しくて止まらない。
最後に・・・
難しい表現がたくさんでてきて読み終わるまで時間はかかりましたが、とても幸せな時間でした。
こんなにも読み終わるのが名残惜しい小説は 他にありません。何時間でも物語にひたっていたくなる小説です。



