『NO.6』小説 あらすじ・ネタバレ感想文|あさのあつこ|本当の自由とは何か?理想都市の格差に衝撃
- 『NO.6』あらすじと感想文
- 理想都市 「NO.6」 の内側と外側
- 人間はどこまで非情になれるのか
- 紫苑とネズミの関係
- 小説のテーマについて
- 印象に残った言葉
少しだけネタバレあります。
人間はどこまで非情になれるのか―。
あさのあつこさんの小説『NO.6』読書感想文です。初めて読む作家さんでした。全9冊の超長編。Kindle版で合体本があったのでそちらを読みました。
ジャンルはSF+ファンタジー(あと少しホラーも)。
面白かった。読みやすくてあっという間。
実はアニメから入りました。途中まで見たところで、小説があるじゃないか! ・・・ということに気づき、途中で見るのをやめて小説へ。なかなか深い物語でした。
テーマは 「本当の自由とは何か」 だよ。
登場人物・紫苑やネズミ、理想都市 「NO.6」 の住人をみていると、みんな自由を求めているんだと気づきました。
『NO.6』あらすじ
本当の自由とは何か―。
2013年の未来都市 「NO.6」。人類の理想を実現した街で、2歳の時から最高ランクのエリートとして育てられた紫苑は、12歳の誕生日の夜、ネズミと名乗る少年に出会う。どうしてあの夜、ぼくは窓を開けてしまったんだろう? 飢えることも、嘆くことも、戦いも知らずに済んだのに・・・。
『NO.6』ネタバレ感想文
面白かったです。でも前半に比べると後半 (特に矯正施設に入ってから) は あまりハマれませんでした。
スピード感はあるけど、細かに描かれていないというか。若干、大雑把に話をまとめた感じです。・・・それでも楽しめたのだけど。
主人公の紫苑、森の民・ネズミ、イヌカシ、力河・・・。
アニメを少し見たから、映像のキャラをイメージしながら読めたよ。
紫苑とネズミが好きです。でも『NO.6』は 決して楽しいお話ではないんですよね。どちらかというとジメジメ。
人間の非情さが、たくさん描かれていて辛かったです。
人間を人間として扱ってない1部の人たちの非情さ、「NO.6」 の内と外の格差・・・。後半は嫌気がさすくらい人間の持つ闇を感じました。
理想都市 「NO.6」 の内側と外側
小説の舞台は 2013年の未来都市 「NO.6」。この世界に建設された6つの理想都市のうちの1つです。
表面だけ見ると、まさにユートピアだけど・・・。
徹底的に管理された社会なんです。「NO.6」 の不平不満は禁止、1度でも規律を破ると、同じ 「NO.6」 の中でも格差が生じてしまう。
息がつまりそう。何となく最初から薄気味悪い感じが漂ってた。
主人公・紫苑は 「NO.6」 で生まれ育ったエリートです。でもVC (凶悪犯) のネズミを匿ったことでエリートから転落。やがて「NO.6」 の外側・西ブロックでネズミとひとつ屋根の下、暮らし始めます。
「人狩り」のシーンが怖かった。
「NO.6」 は高い塀に囲まれていて、塀の外は同じ世界と思えませんでした。人を人と扱わず、塀の外側では惨殺が繰り返される。食べるものも満足にない状態です。
吐き気がしました。絶句してしまうような狂った社会ですね。
人間はどこまで非情になれるのか
『NO.6』では 非情な人間が描かれています。理想都市を作り上げた研究者たち、そして市長と彼を影で操る人。
最初は本当に人々が暮らしやすく、平和な都市を夢見て 「NO.6」 を作り上げたのだけど・・・。いつしか、市民を管理する恐怖社会に発展していく。
人間はどこまで非情になれるのか。
西ブロックでは理不尽な殺戮が繰り返されます。矯正施設に侵入した紫苑とネズミが、そこで見て体験したことが恐ろしくて目が離せませんでした。
人をサンプルとして扱うとか、吐き気がする。
矯正施設のところはスピード感ある熱いシーンですが、ついていけなかったです。紫苑やネズミにも感情移入できず、でも続きが気になるので飛ばし飛ばし読みました。
蜂の正体、拍子抜けしちゃった。
ホラーなファンタジーという感じでした。リアル感に欠けていて、この辺りはイマイチです。
紫苑とネズミの関係|ボーイズラブ?
『NO.6』は BL (ボーイズラブ) と言う人もいます。紫苑とネズミの関係を見てのことなのだけど、違和感なく読めました。
紫苑がネズミに惹かれ、ネズミもまた紫苑を信頼している。そんな関係が、この小説では ごく普通のことに感じるからです。
「きみに惹かれている」
紫苑と同じように私もネズミに惹かれました。だから紫苑の気持ちも、ネズミの気持ちにも共感できる。
とても魅力的な登場人物だよ。
小説のテーマ|本当の自由とは何か
理想都市であるはずの 「NO.6」 の住人と、追い出されて過酷な環境で暮らす紫苑やネズミが求めるのはただ1つ。
誰もが平等で自由な世界。それは 「NO.6」 の崩壊を意味します。
管理社会、大虐殺、不平等。自分の思う通りに生きられないディストピアをみていると、本当の自由って何だろうと思いました。
- 自由な思想、自分の思うままに健やかに生きていけること
- 自分に正直であること
窮屈な世界は息がつまる。
自由っていうのは自己責任です。それでも魅力がありますよね。特に 「NO.6」 のような管理社会では・・・。
積もり積もった不安や不満は、やがて爆発します。「NO.6」 が崩壊していく様子を読んでいると、ホッとひと息つきました。
印象に残った言葉
印象に残った言葉があります。
知るということはな、覚悟がいるんだよ。真実を知ってしまったら、引き返せない。知らなかったころの、暢気で幸福な自分にはもどれない
知ってしまったら、知らなかった頃には戻れない。でも知りたいと願う。人って知ることに貪欲なんですよね。
知っていると安心する。安心するために知りたい。でも、知ることには覚悟がいる。
野崎まどさんの小説『know』を連想しました。「知りたい」 と思うのは人間の本質です。
紫苑は全てを知ってしまいました。「NO.6」 のこと、ネズミのこと、エリウリアスのこと・・・。
知らないままの方が幸せだったのかもしれません。でもその幸せは人々の犠牲に成り立っているものです。
知ってしまえば安穏にしていられなくなるけど、それでも知らないよりはマシ。
「NO.6」 に立ち向かっていく紫苑とネズミは精一杯生きていて、彼らをみていると心が揺れ動きました。