SF・ファンタジー

野崎まど『know』感想と考察 / 「知りたい」 と思うのは人間の本質? 道終・知ルを見て思ったこと

この記事に書かれていること
  • 野崎まどさんの小説『know』あらすじと感想
  • 「電子葉」 について
  • 道終・知ルの能力
  • 人間の本質
  • 『know』ラストの考察
  • 結末について

ネタバレあります。ご注意下さい。

道終・知ルを見ていたら人間の本質がみえてきた。

野崎まどさんの小説『know』感想と考察です。前々から気になっていたSF小説を読みました。

人は 「知ること」 に対して どこまでもどん欲なんですね。当たり前に情報を求めていたけど、人間の心理をついていて深い物語でした。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
『know』の登場人物、道終・知ルを見ていたら人間の本質がみえてきました。

この本を読むと・・・

  • 「生きること」 と 「知ること」 について考えてしまう
  • 確立された世界観に圧倒される

『know』あらすじ

超情報化社会の未来日本―

本の評価

おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク

【あらすじ】
2081年の日本。情報があふれる社会で人造の脳葉 “電子葉” の移植が義務化されていた。情報庁の官僚、御野・連レルは、行方不明の恩師である道終・常イチが残した暗号により、ひとりの少女と出会う。世界が変わる4日間が始まった―。

本の目次

Ⅰ.birth、Ⅱ.child、Ⅲ.adult、Ⅳ.aged、Ⅴ.death、epilogue

『know』感想

括りはSFですが ラノベのような読みやすさでした。でもちょっぴり難しかったです。

超情報化社会で 「電子葉」 を埋め込むことを義務化された世界。

便利だと思う反面、格差が激しい。あまりにも現実離れしている社会だから、ついていくのがやっとでした。設定がぶっとんでいます。

テーマは タイトルそのもの 「知る」 です。

人はいつも情報を求めるものなんですね。きっと生きている限りそれは止まらない。あふれている情報を吸収せずにはいられないんです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
「知る」 ということを通して 「生きること」 を深く考えてしまう小説でした。

脳の補助機!? 「電子葉」 とは

「電子葉」 というのは、ネットワークと通信して情報を取得したりできるもの。脳の補助的な役割をしています。

今はスマートフォンで検索すれば様々な情報を調べることができます。でも時間がかかる。「電子葉」 であれば 端末を持つことなく、思うだけで瞬時に情報が目の前にでてくるんです。

幼少の頃から電子葉に慣れ親しんだ世代は、ネットで調べられることは全て 「知ってる」 と言う。ネットで調べられないことだけを 「知らない」 と言う。

この未来日本では 「知らない」 から 「調べる」 のではなくて、「知ってる」 と 「調べる」 は同じ意味で使われています。「知らない」 というのは、あくまでもネットには情報がないものを指している。

ひつじくん。
ひつじくん。
たちどころに情報がひきだせるから こうなるのもわかる。うーん、すごい社会だ。

道終・知ルのスゴすぎる能力

主人公、連レル (つれる) の恩師である道終・常イチ (みちお・じょういち) が失踪してから14年。情報庁に務める連レルの元にアルコーン社の最高責任者、有主照・問ウ (ありすてら・とう) が訪ねてきます。

失踪した道終・常イチの行方を知らないかと。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
人の名前が特殊。この辺りラノベ感があります。

常イチは ある貴重なデータを持ち出して失踪。そのデータは 「電子葉」 の先をいく 「量子葉」 についてのものでした。

連レルは14年ぶりに常イチと再開し 1人の女の子を預かることに・・・。

彼女の名前は 道終・知ル (みちお・しる) 。「量子葉」 の持ち主【クラス9】世界最高の情報処理能力を持った少女でした。

彼女の能力がスゴすぎてムチャぶり感がありました。人の心を読んだり、何が起こるかを予測したり、銃弾をダンスしながら避けたり・・・。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
イヤイヤイヤイヤ、たとえ人の行動が予測できたとしても、上手くいきすぎでしょ。
ひつじくん。
ひつじくん。
まるで超能力だね。

情報だけでここまで予測が可能なものなの? と疑問に思いました。思いもよらず突発的なことをしてしまうのが人間です。銃弾をよけるダンスは面白かったけど 呆気にとられました。

「知りたい」 と思うのは人間の本質

道終・知ルを見て思ったこと

人は生きていれば情報を求めずにはいられないのだと思いました。「知りたい」 と思うのは人間の本質です。

知っていると安心する。安心するために知りたい。

情報を求めるのは、こんな心理があります。スマホ依存というわけではないですが、もし取り上げられたら落ち着かなくなっちゃいそうです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
昔は なくても平気だったのにね。

一旦、情報があふれる (すぐ検索できる) ことに味をしめてしまうともうダメです。

「知る」 ことで成長もできる。

自分が賢くなったような気になります。いろんなことを経験して知ったりすることで自分が成長する。

ふと ソクラテスの名言が頭にうかびました。

自分自身が無知であることを知っている人間は 自分自身が無知であることを知らない人間より賢い。

ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』を読んだときにソクラテスの言葉を知りました。そのときに、なるほど・・・と感心したことを覚えています。

知らないことなのに知っている風を装っちゃうと知識はそこで止まってしまいます。それよりも知らないことは知らないと認めると、そこから 「知る」 ことができる。結果 今までの自分よりも賢くなるんです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
それに気づいてから知ったかぶりをするのをやめました。

「知る」 ことは大事だけど、なんでもかんでも情報が流れてくるのはイヤだと思います。そういう意味では『know』で描かれている世界はディストピアなのかもしれません。

『know』ラストの考察

最後まで読むとわかるのですが『know』は、全体を通して 「輪廻転生」 について描かれています。

ほとんどの全ての情報を知ることができる道終・知ルですが、1つだけ知りえないことがありました。死後の世界についてです。

ひつじくん。
ひつじくん。
誰も情報を持っていないから 当然といえば当然だよね。

「知りたい」 と思うのは 人間の本質です。彼女は・・・。ラストは少しぼかしたまま終わってしまいます。でもいろいろと想像ができて、それはそれで楽しめました。

エピローグの子どものひとことが輪廻転生を匂わせます。

「死んだあとのことなんて、子供でも知ってるよ」

「量子葉」 を持つ少女、知ルは究極の情報 (死後の世界) を知って戻ってきたんじゃないかな。だから未来の子どもたちは 「死んだあとのこと」 を知っている。

ほんとうに知ることができたらどんなに良いか。そうしたら 「死」 というものが怖くなくなるかもしれませんね。

超情報化社会の果てはハッピーエンド

超情報化社会の果ては、情報格差がなくなってハッピーな世界になっていました。全てがオープンソース。

格差がなくなったのは良いけど、やっぱりこの社会はイヤかも。個人の情報までもが筒抜けっていうのは怖いです。

リアル感もありながら、でも現実はこんな世界にはならないだろうなと少し冷めた気持ちにもなりました。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
深い小説でした。面白かったのでオススメです。

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ひだまりさん。
ゆるりと本をよんでいます。ミステリー、ホラー、SF、ファンタジー、何でもよみます。ほとんど小説、ときどき絵本。→ 詳しいプロフィールはこちら

POSTED COMMENT

  1. ボオ より:

    お久しぶりです。まだ寒いですね。この前、暖かくなって春が来たと思ったのですが。

    さて、感想ですが、近未来の事柄を扱っているけど、思ったより読み易かったです(導入でつまづきましたが、先の読めない展開が好きになると、あとはトントンと)。
    ヒロインは凄まじかったですね。その「凄さ」の難解な所を、(一応)一般人の主人公が読者に分かり易く解説してくれた印象。
    エピローグでもびっくり。「死」があんなに気軽に扱われる様になるとは···。

    それでは、また。

  2. ボオさんお久しぶりです。コメントをありがとうございます (^-^)

    なかなか雪がやんでくれません。解けては降り・・・の繰り返しで寒いです。春はまだかしら ( ´・・)

    「know」 読みましたか。ぶっ飛んでましたが 読みやすかったですよね。人は知ることに対してどこまでも貪欲なんだなと。意外と深い小説でした。

    ラストは私もびっくりしました。一応ハッピーエンド (?) でしたが思いもよらず・・・。死後の世界を知っちゃうと怖いものがなくなるのかもしれませんね。羨ましいような そうでないような、なんとも言えない気持ちになりました。

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