『ソードアート・オンライン プログレッシブ1』ネタバレ感想文・あらすじ|星なき夜のアリア|川原礫
- 『ソードアート・オンライン プログレッシブ1』あらすじと感想文
- 「SAO」と「SAOP」の違い
- 「星なき夜のアリア」キリトとアスナの出会い&黒の剣士誕生秘話
- 「ヒゲの理由」情報屋・鼠のアルゴ
- 「儚き剣のロンド」鍛冶職人の少年・ネズハ
ネタバレあります。ご注意ください。
この世界には負けたくない。どうしても
川原礫さんの小説『ソードアート・オンライン プログレッシブ1』(SAOP)読書感想です。
アインクラッド篇を一層ずつ丁寧に描きなおした、本編SAO(1、2巻)のスピンオフ小説。
これは良い!またSAOアインクラッドの世界に浸れるなんて・・・。
もっと早くに読めば良かった。面白かったです。SAO(アインクラッド篇)が好きな人は楽しめる物語になっていました。
『ソードアート・オンライン プログレッシブ1』あらすじ
小説『SAOP1』
「このゲームはクリア不可能なのよ。どこでどんなふうに死のうと、早いか…遅いかだけの、違い…」茅場晶彦によるデスゲームが開始されて一ヶ月。この超難度のVRMMO内で犠牲になったプレイヤーは二千人にも及んだ。“第一層フロアボス攻略会議”当日。自身の強化のみを行うと決め“ソロ”として戦うキリトは、会議場に向かう中途で、最前線では珍しい女性プレイヤーと出会う。強力なモンスター相手にレイピア一本で戦い続ける彼女は、あたかも夜空を切り裂く“流星”のようで―。
『プログレッシブ』と『ソードアート・オンライン』違いと矛盾点について
『プログレッシブ(SAOP)』は『ソードアート・オンライン(SAO)』のスピンオフとして、アインクラッド篇を一層ごとに丁寧に描いた小説です。
SAOでアインクラッド篇が描かれているのは、主に1巻(本編)、2巻と8巻(本編の小話)。ゲームに閉じ込められて、脱出するまでは1巻で完結しています。
SAO1巻の内容を、詳しく描きなおしたのがSAOPだよ。
本編をなぞりつつ、描ききれなかったストーリーが新たに読めるからアインクラッドが好きな人には楽しめる内容でした。
矛盾を感じる箇所はあるんです。例えば、SAOではキリトがアスナと親しくなったのはかなり上の層・・・。
作者・川原礫さんはSAOPあとがき(Kindle版)で、そのことに触れていました。
やはりキリトの隣にいるのはアスナであって欲しいし、恐らく多くの読者様もそれを望んでくださるのではないか、最終的にはそのように考え、冒頭のシーンでキリトはアスナと出会うことになりました
これはこれで楽しめたよ。
矛盾点よりも、もう一度アインクラッドの世界観を味わうことができることの方が勝りました。
「星なき夜のアリア」ネタバレ感想文|キリトとアスナの出会い&黒の剣士誕生
第1章「星なき夜のアリア」は、キリトが“黒の剣士”と呼ばれるきっかけとなったエピソードです。
キリト目線とアスナ目線で、アインクラッド第一層攻略までが描かれていました。アスナ目線というのが新鮮ですね。
2人の出会いは本編と違うけど、「星なき夜のアリア」ストーリーも良かったです。
SAOはアニメも好きで、くり返し見てる。
アニメで言うと第1話〜2話までのストーリーでした。ゲームに閉じ込められ、キリトとアスナが出会い、ボス攻略、そして黒の剣士ビーターの誕生・・・。
情報屋・鼠のアルゴなど、アニメでは第3話以降に登場するキャラも描かれていて、より深みが増しました。
キリトとアスナの出会い&クリームをつけたパン
《第一層迷宮区》ダンジョンの奥深くで出会ったキリトとアスナ。アスナの剣技と戦術の危うさのバランスが気になったキリトは、彼女に声をかけたのです。
ナーヴギアを被りSAOにログインしたあの日、全てが終わった−。アスナの頭にあったのは「どのように死ぬか」という一点でした。
「…………どうせ、みんな死ぬのよ」
数日ダンジョンにこもりっぱなしでムリな戦い方をしていたアスナ。キリトに助けられたのが2人の最初の出会いです。
ツンツンしてるのは相変わらずだった。
アニメでは第一層ボス攻略会議で出会いました。SAOPでは、攻略会議の前に私の好きなシーンが描かれています。
キリトとアスナがパンにクリームをつけて食べるシーン。
クリームは、ひとつ前の村で受けられる《逆襲の雌牛》のクエスト報酬。このシーンではアスナの気持ちが語られているんですよね。
最初の街の宿屋に閉じこもって、ゆっくり腐っていくくらいなら、最後の瞬間まで自分のままでいたい。たとえ怪物に負けて死んでも、このゲーム……この世界には負けたくない
キリトは不思議に思っていました。いったい何が彼女をあれほど鬼気迫る戦いに駆り立て、何が彼女を今日まで生き延びさせてきたのか。
SAOPでも、アスナの気持ちに胸を打たれたよ。
黒の剣士ビーター誕生|第一層ボス・コボルド攻略戦
噴水広場でのボス攻略会議に登場するディアベル、SAOPでは以前と違った印象を受けました。
裏の顔が見えたというか、コイツ、せこい奴だったんだと・・・。
キリトの剣を買い取らせようとしたプレイヤーXは、ディアベルでした。彼の目的はLA(ラストアタック)ボーナスです。
結局は、キリトがLAを取ったんだけどね。
ボス戦は結末を知っていてもドキドキでした。キリトとアスナのタッグ、エギルもカッコよかったです。
第一層ボスは、イルファング・ザ・コボルドロード&取り巻きのルインコボルド・センチネルが3匹。
無理やりLAボーナスを取ろうと前に出たディアベルは残念な結果に・・・。彼の意志を継ぎ、前に出るキリト。
コボルド戦で1番印象に残ったシーンは、小説もアニメも同じ、黒の剣士誕生秘話です。
「元ベータテスター、だって? ……俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」
ボスからドロップしたユニーク品《コート・オブ・ミッドナイト》を纏い、全身黒ずくめになったキリトに目を奪われました。
彼は他の元βテスターを守るために、自分が悪者役を引き受けたんだ。
黒の剣士ビーターの誕生です。このシーンは何度読んでも(見ても)好き。キリトは黒ずくめが似合いますね。
幕間「ヒゲの理由」情報屋・鼠のアルゴ
元βテスターで情報屋の鼠のアルゴ。SAOアニメ本編では第3話にちょこっと登場したくらいだったけど面白い人物。
どこでそんな情報を仕入れてくるんだ?・・・ってくらい何でも知っているお役立ちキャラです。
ただアルゴに知られたら最後。お金(コル)を積めば、情報は第三者に伝わってしまうけどね。
幕間「ヒゲの理由」では、アルゴのヒゲの秘密が明かされていました。
左右のほっぺに3本ずつ描かれた黒いヒゲ。鼠というあだ名の由来だけど、なぜペイントしているのか誰も知らないんです。
この1話を読むとアルゴに愛着がわくよ。
SAOアニメ本編では完全な脇役だったけど、実はアルゴの存在って、ものすごく貴重なんじゃないかと思いました。
「儚き剣のロンド」鍛冶職人の少年・ネズハ
アインクラッド第二層が描かれた「儚き剣のロンド」は、SAO本編にはなかった新作ストーリーでした。
とある鍛冶職人の少年・ネズハの物語です。
腕が良いはずの鍛冶職人に剣の強化を依頼するも失敗続き。アスナも武器を強化してもらおうと、ネズハにお願いしました。それが、強化どころか粉々に砕け散ってしまったのです。
この子がいてくれれば大丈夫、わたし、そう思った。ずっとこの子と一緒に戦おうって。たとえ強化が失敗しても、絶対捨てたりしないって約束したんだ
自分とともに成長してきた武器には愛着がわくよね。
自分の分身ともいえる武器を失ったアスナの姿に胸が痛みました。果たして、武器強化は本当に失敗したのか、それとも・・・。
「儚き剣のロンド」は、様々な人たちの思いが重なり、悲哀を感じた1話です。
ネズハの気持ちや彼に武器強化をさせていた仲間たち、武器を失ったプレイヤーの気持ち・・・。
切なさも感じたけど、第二層ボス攻略戦ではネズハが大活躍だった。
第二層ボスモンスターは、アステリオス・ザ・トーラスキング。前座モンスターにバラン・ザ・ジェネラルトーラス。
バランもアステリオス王も凄まじく強くて、攻略は苦戦しました。ネズハが来なければヤバかったかも・・・。
ボスを倒して一段落と思いきや、みんなの非難がネズハに集中します。彼は自分がやったことを話し、謝罪したのです。
「……僕が、シヴァタさんと、そちらのお二人の剣を、強化直前にエンド品にすり替えて騙し取りました」
深く反省してるのですよね。彼の真摯な思いが伝わってきました。
人を騙したり、損害を与えたりしたときには素直に謝る。当たり前のことだけど、とても大切なことです。
『プログレッシブ』はSAO好きにおすすめ
『プログレッシブ』はアインクラッドの世界観が広がる小説。SAO好きには間違いなく心に刺さります。
キリトとアスナの掛け合いや、他のキャラがどんな思いで日々を過ごしていたかなどが丁寧に描かれていました。
エギルが商売を始めるに至る経緯もわかるよ。