- 伊坂幸太郎さんの小説『ジャイロスコープ』あらすじと感想
- 「浜田青年ホントスカ」
- 「if」
- 「一人では無理がある」
少しだけネタバレあります。
驚きがつまった短編集
伊坂幸太郎さん『ジャイロスコープ』感想です。初めて読みました、伊坂幸太郎さん。全7編の物語は あっと驚くものから心が温まるものなど短編集ならではの面白さがぎっしりでした。
『ジャイロスコープ』あらすじ
ユーモアあふれる伊坂ワールド
助言あります。スーパーの駐車場にて“相談屋”を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。バスジャック事件の“もし、あの時…”を描く「if」。謎の生物が暴れる野心作「ギア」。独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。
- 浜田青年ホントスカ
- ギア
- 二月下旬から三月上旬
- if
- 一人では無理がある
- 彗星さんたち
- 後ろの声がうるさい
- 十五年を振り返って 伊坂幸太郎インタビュー
『ジャイロスコープ』ネタバレ感想

伊坂さんの小説はユーモアがあって 読んでいると楽しくなりますね。その中から好きな3つのストーリーをレビューとともに紹介します。
浜田青年ホントスカ
蝦蟇倉 (がまくら) 市にやってきた家出青年・浜田。彼は稲垣さんがやっている「相談屋」で助手として雇われます。
『助言あります』
『協力いたします』
・・・をモットーに〈スーパーホイホイ〉の駐車場にあるプレハブ小屋の相談屋。この稲垣という人物がまた面白いんですよね。
ある時、中年女性が訪れます。
女性は完全犯罪ができないかどうかという相談に来たのです。それに対する稲垣の助言は・・・。
やめさせようとするわけでもなく、あくまでも「助言」をする稲垣に面白さを感じました。
「殺人を唆していいのか?」と問う浜田青年に「商売ですから」とあっさりと言う稲垣。淡々と進んでいく中で面白さと驚きがありました。そして引っ掛けが・・・。
浜田青年の正体、どこまでも仕事に忠実すぎる稲垣。
ラストは驚きが隠されています。想像できず、ただただ あ然としました。『浜田青年ホントスカ』の結末は読者におまかせ・・・という感じになっています。
ところで、このタイトル面白いですよね。「本当っすか」が口癖の浜田青年でした。
if
続いて『if』です。
タイトル通り「もしも・・・」がテーマの1話。
「あの時こうしていたら」 を行動しなかった方 (A) と行動した方 (B) で2通り描いています。
主人公の山本は通勤途中にバスジャックに遭遇しました。犯人は男性を全員バスから降りるよう命令します。その命令に従った山本は・・・。
山本がバスジャックに遭遇しバスから降りないという設定で描かれています。一見パラレルワールドのように描かれているような錯覚に陥るのですが、実は違うのです。
失敗 → 後悔 → 反省 → 二度と繰り返さないという主人公の気持ちや それに伴う行動が描かれていました。
まさに失敗は人を成長させる。後悔と繰り返さないことが大切だと教えられているようです。
一人では無理がある

3つ目『一人では無理がある』です。
このお話は ファンタジーでした。クスリと笑い、伏線が見事に回収されて納得。「サンタクロース」のお話です。
松田陽一はミスの常習者。子供に贈るプレゼントの中身を間違えてしまいます。間違えたプレゼントがまた面白く「壊れたラジコン」や「鉄の板」「ドライバー」なんです。
でも意外にも役に立ってしまうんですよね。「ひねり」が上手く、なるほどと思ってしまいました。素晴らしいです。
15年目の贈り物
軸を同じにしながら各々が驚きと意外性に満ちた個性豊かな短編集
伊坂さんデビュー15年目の節目として出版された作品。『ジャイロスコープ』には、このような意味があるようです。
その通りに仕上がっているこの本は伊坂さんからの素敵な贈り物でした。

