ミステリー・サスペンス

『フーガはユーガ』伊坂幸太郎【あらすじ&感想】とてつもない悪と切ない結末

僕たちは、ふたりでひとり。

伊坂幸太郎さん『フーガはユーガ』感想です。
双子のお話でした。伊坂さんが描く悪はとてつもないですね。ラストが切なかったです。

Kindle版を読みました。面白くてほとんど一気に読んでしまいました。さすがです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
優しさと切なさの余韻があとをひく。なんとも言えない気持ちになりました。

少しだけネタバレあります。

『フーガはユーガ』あらすじ

彼らには不思議なアレがある!

『フーガはユーガ』
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク

【あらすじ】
ユーガ (常盤優我) には、双子の弟・フーガ (風我) がいた。彼らの身に異変がおきたのは、誕生日の日だった・・・。ファミレスで1人の男と向き合ったユーガは、不思議な現象について語り出す。

『フーガはユーガ』感想

切ない・・・。読み終わってまず思ったことです。一応、ハッピーエンド的な終わり方 (?) でしたが、本当のハッピーエンドではなくて、哀しさがあとをひきました。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
こんな結末、望んでないよ。

面白かったけど、一見爽やかに終わるラストに絶望的な気持ちになりました。

楽しいことも、苦しいことも半分こ

『フーガはユーガ』は、双子の彼ら、風我と優我の壮絶な日常と人間の 「悪」 を描いたお話です。

父親の暴力に耐える日々。母親は助けてもくれず、彼らを置いて蒸発・・・。本当に、救いようもないほどイヤな登場人物がでてきます。彼らが可哀想で目眩がしてくるほどに。

それでも2人は、助け合いながら強く生きていく。楽しいことも、苦しいことも半分こ。双子ってなんだか特別な感じがします。ふたりでひとり、というわけではないですが、片方がいたから頑張れるという一体感とかありそうですね。

ユーガは、慎重派の優しい男の子。
フーガは、ワンパクの、でも優しい男の子。

ふと、以前よんだ小説を思い出しました。

長野まゆみさんのファンタジー『宇宙百貨活劇』。友だちライバルのような双子の兄弟が登場します。ほっこりするお話でした。

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入れ替わり!? ふたりに備わった特殊なチカラ

フーガとユーガは、ある一点において普通の双子とは違いました。彼らには不思議なチカラが備わっていたのです。

そのチカラとは、瞬間移動!!

誕生日の日だけ、2時間おきに入れ替わりがおきてしまう不思議な現象でした。この辺り、少しだけSF?

面白い設定ですね。フーガがユーガになったり、ユーガがフーガになったり・・・。周りの人は全く気付きません。想像してみると、それは恐ろしく不便なことです。入れ替わりがおきる日にちが予めわかっているから、まだマシかもしれないけど。

テレポーテーションを使って、身近な人を助けたり、悪い人を懲らしめたりする彼ら。過酷な環境で育ったから、人一倍 悪に敏感なんですよね。

もしも彼らに不思議なチカラがなかったら、結末は変わっていただろうか?

ついつい、そんなことを考えてしまいました。・・・あってもなくても、やはりあの結末は変わらなかったかもしれません。

もしチカラがなかったとしたら、ワタボコリも小玉さんも助けられなかったかもしれないし。フーガとユーガだって、お互いの時間を「共有」することができたから、過酷な環境も乗り越えられたんだと思います。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
誕生日に起こる不思議なチカラは、なくてはならないものだったのですよね。

とてつもない悪

ワタボコリを助けた帰り道に出会った女の子の話、小玉さんの話、ハルコさんとハルタ君の話・・・。

ひとつひとつの話が連作短編集のように連なっていて、ラストに向かっていく。心が温まるものでしたが、その分、最後まで読むとより切なさが増します。

切なさと同時に、人が持つ 「悪」 も感じました。

全ては、悪魔のような・・・それ以上の自分勝手な人間のせいで全部踏みにじられる。世の中には、どうしようもないほどの悪も存在すると思うから怖いです。ひとたび巻き込まれると、心に大きな傷ができる。なかなか癒えません。

伊坂さんが描く 「悪」 は半端ないです。その人のせいで、周りの人たちの人生が狂わされる。全く理不尽極まりない。

・・・とてつもない悪というと、伊岡瞬さん『代償』を連想しました。こちらもものすごい 「悪」 が描かれています。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
自己中心的なサイコパスな人たち。身近にいないことを祈るばかりです。

2つの嘘

ファミリーレストランで1人の男・高杉と話す優我。双子の弟・風我と一緒に歩んできた人生と、あの力のこと・・・。現実と回想が交互に描かれていました。

回想なのに、それを忘れるほど物語に入り込んでしまいました。ところどころ、高杉から質問が入り、現実へと戻される。・・・あっ、そういえば、現実はこっちなんだよねと。

ほとんどが優我の視点で進んでいくから、とても読みやすかったです。他の人を見つめる視点が優しいんですよね。

優我は、高杉に2つの嘘を混ぜて過去を語りました。

  • 彼は死んだと話したこと
  • 今日は誕生日だということを伝えなかったこと

これらはある計画のための嘘。どんな計画なのかは、ここでは書かないでおきます。果たして彼らの計画は成功するのか?

切なすぎた結末

最後は切なすぎました。優しいと言えば優しく心に響くのかもしれませんが、こんな結末を望んではいなかったです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
ラストはふたりで笑っていてほしかった。

切なさの余韻にひたりつつ、それでも面白く読めました。

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ゆるりと本をよんでいます。ミステリー、ホラー、SF、ファンタジー、何でもよみます。ほとんど小説、ときどき絵本。→ 詳しいプロフィールはこちら

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