『滅びの園』あらすじ・ネタバレ感想文|滅びゆくラストとプー二ー|恒川光太郎
- 『滅びの園』感想文
- 想念の異界
- 未知なるもの・プーニー
- 真実と残酷なラスト
少しだけネタバレあります。
世界は終末に向けて暴走してゆく。
恒川光太郎さんの小説『滅びの園』感想です。恒川さんの本を初めて読みました。めちゃくちゃ面白かったです。
ファンタジーでいて、SF、ホラー感も味わえる魅力的な一冊。
好きな作家さんが一人増えた。
『滅びの園』あらすじ
天空に現れた未知なるもの
ある日、とつぜん天空に現れた<未知なるもの>。世界で増殖する不定形生物プーニー。 抵抗値の低い者はプーニーを見るだけで倒れた。世界を救う作戦は、ただ一つ。
『滅びの園』ネタバレ感想文
『滅びの園』は、ジャンルで言うとホラー・ファンタジーです。
ほどよい怖さと憧れを抱いてしまう世界観が魅力。想像するのも楽しめました。世界観が半端なく良いです。
<未知なるもの>が現れたときから怖くなりました。想念の異界へ突入するところは紛れもなくSFですね。
ちょっぴりホラー感があって私好み。
憧れる想念の異界
鈴上誠一が迷い込む「想念の異界」は、まさに天国のようなところでした。
犯罪もなければお金の価値観もない世界。
想念の世界で暮らしたい。誠一が帰りたくなくなるのもわかる。
〈精霊の森駅〉の鶏山には宝石や金塊が落ちているから、それを売ればたちどころに大金持ちです。でも、この世界ではお金をたくさん持っていてもあまり意味がないような・・・。
なにしろ、お金は落ちてるくらいだからね。
ただこの幸せな想念の世界が、地球で暮らす人々の犠牲の上に成り立っているとしたら・・・。そんなに喜んでいられなくなるかもしれません。
未知なるもの
20XX年1月19日、地球に〈未知なるもの〉が観測されます。
後に巨大なクラゲ的なものが地球にへばりついていることが判明。そして白いお餅のような謎の生物・プー二ーが至るところに出現し始めました。
プー二ーって可愛い名前だけどブキミ。
セイコの視点で描かれている第2章「滅びの丘を越えるものたち」が怖かったです。
プー二ーの影響で人々が死んでいく。
耐性が高いセイコのプーニー災害対策課員として多くの人を救済する姿は、頼もしさと切なさを感じました。
プー二ー化する人たちの描写が切なくて、ヒヤリとしたよ。
真実とは?
『滅びの園』を読んでいると、真実とはいったい何か問いかけたくなるんです。夢の楽園は存在してはいけないもの?
想念の異界は幻惑。
誠一にとっては桜姫やナリエがいる大切な世界です。でもそれがあると、地球はプー二ーによって壊滅的なまでに人類が脅かされる・・・。
あまりにも魅力的な世界だから、破壊するのは後ろ髪を引かれる思いだった。
『滅びの園』残酷なラストと生きる原動力
ラストは残酷でした。第6章「空から落ちてきた語り部」です。
生きる原動力ってなんだろう。
希望? 一人ぼっちになって希望も何もかも失ったらと思うとたまらなくなります。あとに残るのは絶望ばかり。
タイトル『滅びの園』は、夢の楽園のような想念の異界を指しているけど、現実的というか。・・・確かに幸せな時って長くは続かないものです。
希望を持ち続けることが大切で、生きていく原動力になりえるんだね。