- 恒川光太郎さんの小説『滅びの園』感想
- 想念の異界
- 未知なるもの・プーニー
- 真実と残酷なラスト
少しだけネタバレあります。
世界は終末に向けて暴走してゆく。
恒川光太郎さんの小説『滅びの園』感想です。恒川さんの本を初めて読みました。ファンタジーでいて、SF、ホラー感も味わえる魅力的な1冊。・・・めちゃくちゃ面白かったです。
『滅びの園』あらすじ
突如天空に現れた、未知なるもの
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
ある日、とつぜん天空に現れた<未知なるもの>。世界で増殖する不定形生物プーニー。 抵抗値の低い者はプーニーを見るだけで倒れた。世界を救う作戦は、ただ一つ―。
- 第一章 春の夜風の町
- 第二章 滅びの丘を越えるものたち
- 第三章 犬橇の魔法使い
- 第四章 突入者
- 第五章 空を見上げ、祝杯をあげよう。
- 第六章 空から落ちてきた語り部
『滅びの園』感想
めちゃくちゃ面白くて読むのをやめれず夜更かししてしまいました。
ジャンルで言うとホラー・ファンタジーです。<未知なるもの>が現れたときから怖くなりました。想念の異界へ突入するところは紛れもなくSFです。
ちょっぴりホラー感のある小説が好きです。ドンピシャな物語でした。
憧れる想念の異界

『滅びの園』は ファンタジーよりのホラー
ファンタジー好きですが、キレイすぎる物語はダメなんです。『滅びの園』は、ほどよい怖さと憧れを抱いてしまう世界観があって想像するのも楽しめました。世界観が半端なく良い!!
鈴上誠一が迷い込む世界は、まさに天国のようなところでした。犯罪もなければお金の価値観もない世界。〈精霊の森駅〉の鶏山には宝石や金塊が落ちているから、それを売ればたちどころに大金持ちです。
でもこの世界では お金をたくさん持っていてもあまり意味がないように思います。・・・なにしろ落ちているくらいですからね。
夢のような幸せな世界。誠一が帰りたくなくなるのもわかります。
ただこの幸せな想念の世界が、地球で暮らす人々の犠牲の上に成り立っているとしたら・・・。そんなに喜んでいられなくなるかもしれません。
未知なるもの
謎の生物プー二ー
20XX年 1月19日、地球に〈未知なるもの〉が観測されます。
後に巨大なクラゲ的なものが地球にへばりついていることが判明します。そして白いお餅のような謎の生物・プー二ーが至るところに出現し始める。
『滅びの園』は さまざまな人の視点で描かれていました。
- 想念の世界に紛れこんだ鈴上誠一の視点
- 後のプー二ーコンダクター・相川セイコの視点
- 突入者・理剣の視点
セイコの視点で描かれている第2章 「滅びの丘を越えるものたち」 が怖かったです。
プー二ーの影響で人々が死んでいく・・・。耐性が高いセイコのプーニー災害対策課員として多くの人を救済する姿は、頼もしさと切なさを感じました。
真実とは?

真実とは何か
『滅びの園』を読んでいると 真実とはいったい何か問いかけたくなります。夢の楽園は存在してはいけないもの?
想念の異界は幻惑。誠一にとっては桜姫やナリエがいる大切な世界。でもそれがあると地球はプー二ーによって壊滅的なまでに人類が脅かされる。
あってはならないものだけど、あまりにも魅力的な世界で破壊するのは後ろ髪を引かれる思いでした。
残酷なラストと生きる原動力
ラストは残酷でした。第6章 「空から落ちてきた語り部」 です。
希望? 一人ぼっちになって希望も何もかも失ったらと思うとたまらなくなります。あとに残るのは絶望ばかり。
タイトル『滅びの園』は、夢の楽園のような想念の異界を指していますが 現実的というか。・・・確かに幸せな時って長くは続かないものですよね。
希望を持ち続けることが大切で、生きていく原動力になり得るんだと実感しました。
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