『声の網』あらすじ・ネタバレ感想文|電話と支配された未来|星新一
- 『声の網』あらすじと感想文
- メロン・マンションの住人たち
- コンピューターに依存した社会
- 今に通じる恐怖
- 不気味な存在
- 支配された世界
少しだけネタバレあります。
まるで誰かに見られているような・・・
1970年に書かれた『声の網』は、星新一さんの小説です。インターネットが普及した情報社会の今読むとヒヤリとしました。
支配する側とされる側が逆転した未来。
現代に通じるものがあって、読みやすいけど危機感を抱く物語です。これを1970年に描いたのだから、すごいですね。
さすがだったよ。面白かった。
『声の網』あらすじ
すべてを監視しているのは・・・
電話に聞けば、完璧な商品説明にセールストーク、お金の払い込みに秘密の相談、ジュークボックスに診療サービス、なんでもできる。便利な便利な電話網。ある日、メロン・マンション一階の民芸品店に電話があった。「お知らせする。まもなく、そちらの店に強盗が入る…」そしてそのとおりに、強盗は訪れた!12の物語で明かされる電話の秘密とは。
『声の網』ネタバレ感想文|星新一が描く未来SFファンタジー
星新一さんの『声の網』、面白かったです。
でもなにか心がザワザワしてしまう。まるで未来のことを予見しているかのようでした。
リアルに今に通じるものがある。
メロン・マンションの住人たち
『声の網』は、12の物語からなっています。
メロン・マンションに住む、ごく普通の住人たち。主な登場人物を簡単にまとめました。
近所付き合いがまったくないのは、現代の社会のようだ。
それぞれが独立した物語だけど、実はすべて繋がっているんです。ある存在によって・・・。
コンピューターに依存した社会
『声の網』で描かれているのは「電話」と「機械」に依存した社会です。
身の上相談、病気の診察、情報の管理・・・。なかでも面白いと思ったのがジュピター情報銀行でした。
私的情報を預けておける銀行です。忘れたくないことを預けて電話1本でひきだせる。発想が面白くとても便利ですね。
読んだ本とその感想を覚えてもらって、後になって電話で聞くっていうのもいいな。
同じ本をまた買ってしまうという過ちもなくなりますね(←私だけか)。
電話越しに診察してくれるっていうのも良いです。病院に行く手間が省ける。・・・星さんが描いた社会は、なかなか面白いところでした。
今に通じる恐怖
『声の網』というタイトルからも連想できるように、重要なキーワードは「電話」と「コンピューター」です。
今は至るところに回線が張りめぐらされていますよね。遠く離れていても1本の電話で、すぐ近くにいるような繋がりを感じることができます。
そして、あふれている情報。ネットを使えば瞬時に知りたいことを知ることができる。星さんが描く未来は、現代にも共通するものがありました。
でも、仮に盗聴されていたら?
個人の秘密なんて、たちどころに第三者に知られてしまうね。
この物語は、その恐怖が描かれているんです。秘密を知られて脅されて・・・。世の中は便利になったけど、それによってとんでもないことが起きる。
12の物語の中に大停電になって人々が混乱する様子が描かれてるものと、機械が暴走してしまうお話がありました。
なまじコンピューターに頼りっぱなしになっていたから・・・。それが一切機能しなくなった時や暴走してしまった時、人は成すすべがなくなってしまうんです。
便利なものに依存してしまうのに、危機感を抱いたよ。
不気味な存在
突然、鳴り響いたベルの音。
その相手こそ、すべてに共通する大きな存在でした。ある時は強盗が入るという警告のようなことを言ってきたり、誰も知るはずのない秘密を知っていたり・・・。
ちょっと不気味。自分しか知らないことを知られて脅されたら怖いな。
誰かに見られているような落ち着かなさ。ところどころに見え隠れする大きな存在を感じました。
電話の主はだれなのか・・・。
『声の網』支配された世界にヒヤリ
読み終わってヒヤリとしました。大きな存在の正体が明らかになったときです。
人々を支配しているかのような存在。
秘密を握り、情報を操作し、世界に平等に平和をもたらすもの。それのことを『声の網』ではこう書いています。
まるで神さまのようだと・・・。
最後の章では、平和な世の中が描かれていたよ。
大きな破綻もなく、ある程度平和に保たれている世界です。一見、大きな力に守られて幸せのような気になるけど・・・(←神さまというのは、そのようなものなのかもしれませんね)。
でもこれは嫌だ。・・・というか少し怖い。
支配する側とされる側が逆転した未来です。それなのに人々は気づかずありがたかっている。
インターネットが普及した今だから、余計に背筋が寒くなる。