- 星新一さんの小説『声の網』あらすじと感想
- メロン・マンションの住人たち
- コンピューターに依存した社会
- 今に通じる恐怖
- 不気味な存在
- 支配された世界
少しだけネタバレあります。
まるで誰かに見られているような・・・
1970年に書かれたという『声の網』。星新一さんの小説です。インターネットが普及した情報社会の今読むとヒヤリとしました。
『声の網』あらすじ
すべてを監視しているのはだれ!?
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
「電話」と「機械」に依存した社会。ある日、メロン・マンションの民芸品店に電話がかかってきて・・・。
『声の網』感想
面白かったです。でもなにか心がザワザワしてしまう。まるで未来のことを予見しているかのようでした。
メロン・マンションの住人たち

12の物語からなっています。
メロン・マンションに住む、ごく普通の住人たち。主な登場人物をまとめました。
- 1階・・・民芸品店、60歳くらいの男。
- 2階・・・27歳の女、ミエ。夫は出張がち。
- 3階・・・月刊誌のライター、洋二。
- 4階・・・ジュピター情報銀行の支店長、津田。
- 5階・・・夫婦、昭治と亜矢子。
- 6階・・・アル中の独身の男。40歳。
- 7階・・・少年。
- 8階・・・深層心理変換向上研究所、池田。
- 9階・・・青年、黒田。
- 10階・・・30歳くらいの男、中川。
- 11階・・・片足が不自由な35歳の男、斎藤。
- 12階・・・余生を気ままに過ごす夫婦。
それぞれが独立した物語ですが、実はすべて繋がっています。ある存在によって・・・。
コンピューターに依存した社会
『声の網』で描かれているのは「電話」と「機械」に依存した社会でした。
身の上相談、病気の診察、情報の管理・・・。なかでも面白いなと思ったのがジュピター情報銀行。
私的情報を預けておける銀行です。忘れたくないことを預けて電話1本でひきだせる。発想が面白くとても便利ですね。
同じ本をまた買ってしまうという過ちもなくなりますね (←私だけか)。
電話越しに診察してくれるっていうのも良いです。病院に行く手間が省ける。
なかなか面白い社会でした。
今に通じる恐怖

『声の網』というタイトルからも連想できるように、重要なキーワードは「電話」と「コンピューター」です。
今は至るところに回線が張りめぐらされていますよね。遠く離れていても1本の電話で、すぐ近くにいるような繋がりを感じることができます。
そして溢れている情報。ネットを使えば瞬時に知りたいことを知ることができる。星さんの描く未来は、現代にも共通するものがあります。
この物語は、その恐怖が描かれていました。秘密を知られて脅されて・・・。世の中は便利になったけど、それによってとんでもないことが起きる。
さらに恐怖がもう1つ
12の物語の中に大停電になって人々が混乱する様子が描かれてるものと、機械が暴走してしまうお話がありました。
なまじコンピューターに頼りっぱなしになっていたので、それが一切 機能しなくなった時や暴走してしまった時、人は成すすべがなくなってしまう。
そうなると便利なものに依存してしまうのにも危機感を抱きますね。
不気味な存在
突然、鳴り響いたベルの音。
その相手こそすべてに共通する大きな存在でした。ある時は強盗が入るという警告のようなことを言ってきたり、誰も知るはずのない秘密を知っていたり・・・。
誰かに見られているような落ち着かなさ。ところどころに見え隠れする大きな存在を感じました。
電話の主はだれなのか・・・。
支配された世界
読み終わってヒヤリとしてしまう。大きな存在の正体が明らかになったときです。「インターネット」が普及した今だから余計に背筋が寒くなるものでした。
まるで人びとを支配しているかのような存在。秘密を握り、情報を操作し、世界に平等に平和をもたらすもの。それのことをこう書いています。
まるで神さまのようだと・・・。
最後の章では平和な世の中が描かれていました。大きな破綻もなく、ある程度平和に保たれている世界。
一見、大きな力に守られて幸せのような気になります。神さまというのはそのようなものなのかもしれません。
でもこれは嫌だ。・・・というか少し怖い。支配する側とされる側が逆転した未来です。それなのに人びとは気付かずありがたかっている。
ヒヤリとしてしまいました。
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