『百万円もらった男』あらすじ・ネタバレ感想文「100万分の1回のねこ」町田康
- 『百万円もらった男』あらすじと感想文
- 才能を売った男
- 百万円の使い道
- 宝のもちぐされ
- 努力と信念
- その後の主人公と猫
少しだけネタバレあります。
『100万分の1回のねこ』より、町田康さんの短編『百万円もらった男』のレビューです。
町田さんの小説は初めて読みました。クスっと笑ってしまうユーモアを持ち合わせた作家さんです。
よくわからない曖昧なところが良かった。
想像力がかきたてられて、読めば読むほど深みにハマりそうですね。
ゆるい感じがツボ。
『百万円もらった男』あらすじ
才能を売った男の話
ギター弾きの男は評判が良かったが、劇場のマネージャーに嫌われていたため、あまり仕事を貰えなかった。ある時、電話で仕事の依頼がくる。待ち合わせの喫茶店に行くと、「あなたの才能を買いたい」と男に言われ・・・。
『百万円もらった男』ネタバレ感想文
佐野さんの絵本『100万回生きたねこ』のトリビュート作品集なのに、猫が出てこない!?
狐につままれたような不思議なお話でした。・・・もしかして猫!?と思う記述はあったから、それがそうなのかな。
不思議な感じが良かったよ。
才能を売った男|値段は100万円!?
才能に値段をつけるとしたら、いくらになるでしょうか。いくらだったら、それを手放せる?
才能を売るだなんてとんでもない!! ・・・そんな声が聞こえてきそうです。
主人公のギター弾きの男は、ぐうたらとした生活を送っていました。ある勘違いから才能を100万円で売ってしまうのです。
もったいない気がするのは、私だけかな。
彼はまさか本当に才能を売ってしまうことになるなんて気づきもしないのだけど・・・。かなり能天気な主人公ですね。でも町田さんが描く登場人物はどうも憎めない。
百万円の使い道
もし百万円もらったら・・・と、考えながら読んでいたら楽しくなりました。
まず美味しいものをお腹いっぱい食べたいな。でもあっという間になくなっちゃいそう。
完全に他人事だ・・・。
町田さんはお金が減っていく様子を細かく書いていました。減っていくのは切なくなりますね。
主人公の人生は狂い始めます。
宝のもちぐされ
『百万円もらった男』を読んで感じたことは、才能って持っているだけではダメなんだということです。
主人公の男から才能を買った八甲田は、ミュージシャンとして成功しました。音楽は大ヒットし、ダンサーとの結婚話も・・・。
でもそれは、本当は彼が歩むべきだったはずの成功の人生です。
もし才能を売らなかったら、主人公の男は同じく成功していたのか?
成功しなかったんじゃないかな。
以前と同じような感じであったのなら、宝のもちぐされです。八甲田が成功した裏には「努力」があったはずだから・・・。
成功のカギは努力と信念
ぼったくりバーで出会った男の言葉が素敵でした。
どんなよい畑でも耕し、種を蒔き、水を撒かなければなにも稔らんよ
「才能」を「畑」に例えています。畑を耕し、種を蒔き、水をやる。主人公はそれを怠っていたから芽が出なかったのですね。
しかも100万円で才能を売ってしまった・・・。もったいないことをしたものです。
才能はあれば嬉しいけど、努力しないと宝の持ち腐れになってしまうもの。成功している人は努力を怠らない人。
才能を開花させるためには諦めないことと、自分を信じる信念も大切なんですね。
トリビュート作品集の枠をこえた自由気ままな作品なのに、意外と深い短編だった。
『百万円もらった男』その後の主人公と猫
その後、彼は姿を消してしまいます。「荒地に行って種を蒔いてきます」と言い残して・・・。
才能という良い畑を売ってしまったあとに残るのは、作物の育たぬ荒れた地。
それでも種を蒔くという決心をして頑張ろうとしていると思ったのだけど、よくわかりませんでした。・・・その曖昧さが良いのかな。
最後にどこからかピアノの音と混ざって呻き声(?)が聞こえてくるんです。呻き声には、動物が威嚇するときに出す声との意味もあるようですね。
これって、ひょっとして猫?