- 辻堂ゆめさんの小説『いなくなった私へ』あらすじと感想
- 自分の存在が不確かな恐怖
- 輪廻転生
- 『いなくなった私へ』は 優しい気持ちになれる小説
少しだけネタバレあります。
突然だれにも認識してもらえなくなったとしたら―
辻堂ゆめさん『いなくなった私へ』感想です。今までに読んだことがないような新しい設定で繰り広げられるミステリーでした。先が気になり読むのが止まらなかったです。
『いなくなった私へ』あらすじ
第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作
ある日突然、誰にも自分と認識されなくなった梨乃。どうやら自分は自殺したらしい。真相を探る彼女の元に現れたのは・・・。
『いなくなった私へ』感想
『いなくなった私へ』は いくつもの不思議にあふれている小説です。
上条梨乃は目を覚ますとゴミ捨て場にいて、素顔をさらしているのに周囲の人間から認識されなくなっていました。
自分の存在が不確かな恐怖

始めに体験する不思議
だれも私の顔を認識してくれなくなったこと。
自分はちゃんと存在しているのに 周りの人が自分だと分かってくれない・・・。幽霊のように透けているわけでもありません。1人の人間として認識してもらえるのに上条梨乃 本人としては見えていないのです。
なぜだろう?どうしちゃったんだろう?・・・と理由が知りたくて読むのをやめられませんでした。主人公と同様に恐怖がジワジワとわき上がってきます。
「わたし」という存在が不確かな恐怖。周囲の人に認識されないということを考えただけでもゾッとします。
彼女を梨乃だと分かってくれる人がいました。佐伯優斗、色白で軽音楽をやっている優しい青年でした。
また不思議な感覚になります。なぜ優斗には認識できるのか? 後に登場する少年・樹も彼女を認識できるのはなぜ?
本の中に登場する「輪廻の泉」が深く関わっていました。
輪廻転生
死んでも魂は何度も生まれかわる。
『いなくなった私へ』の主人公・梨乃の状況を説明してくれそうな言葉ですね。実際「輪廻」という言葉がキーワードになっています。
SFやオカルトな雰囲気を持ちあわせた小説。想像をめぐらせてしまいました。
『いなくなった私へ』は 優しい気持ちになれる小説
怖さの他にたくさんの優しさが含まれています。所々に散りばめられていてジーンとしてしまいました。
優斗の優しさだったり、梨乃の気持ちだったり、樹の想いだったり・・・。ラストも明るく、読み終わった後の心地がよかったです。
梨乃や樹の戸籍などはどうなるんだろうと現実的なことが気になってしまいました。


