『神様の裏の顔』藤崎翔 【あらすじと感想】聖職者か、犯罪者か?

- 藤崎翔さんの小説『神様の裏の顔』あらすじと感想
- 先生の疑惑
- 二転三転する展開
- 絶妙なユーモアセンス
少しだけネタバレあります
彼の裏の顔は、果たして存在するのか?
藤崎翔さんの小説『神様の裏の顔』感想です。二転三転する展開が面白く、後半は一気に読みでした。
普段はとても優しい人がまったく別の「顔」を持っていたら・・・。リアルにありそうで少し怖かったです。
『神様の裏の顔』あらすじ
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作
坪井誠造の通夜に参列する、かつての教え子たち。彼らが坪井を偲んだとき、想像もしなかった新たな顔が見え隠れし・・・。
『神様の裏の顔』感想
神様のような清廉潔白な坪井先生が亡くなり、お通夜の席で展開されるお話です。そこに集まった7人の男女が故人を偲んでいるうちに話は妙な方向にズレていきます。
坪井先生は もしかしたら、とんでもない犯罪者ではないのか!?
彼の裏の顔は 果たして存在するのでしょうか?
先生の疑惑

読経、焼香、喪主挨拶、通夜ぶるまい、控室・・・。お通夜というのは亡くなった故人を偲ぶ場ですが、思い出に浸っているときにある疑惑がわきあがってきます。
まさか、みんなに慕われていた先生が殺人犯!?
それも疑惑は1つではありませんでした。次から次へとでてきます。まとめてみるとこんな感じです。
- 溝口竜也 (高1) が自殺に見せかけられ転落死
- 菅野少年 (小5) が夜の公園で頭を殴られる ・根岸智史くん (16) の乗ったバイクが、道路に張られたロープに引っかかり転倒
- ストーカー被害
- 白子海岸の臨海学校で林くん (小6) が水死
- 香村正男さん (75) が神社の階段から落ちて転落死
それぞれが事故だと思っていた事件です。同僚の教師にも教え子にもアパートの住人にも慕われていた主人公。
彼の回りでは不可解な事件が起こっていました。彼は白かそれとも黒なのか?
『神様の裏の顔』は二転三転する展開がすごかった
おすすめポイント
『神様の裏の顔』の面白いところは 内容が二転三転するところにあります。
三谷幸喜さんの舞台『12人の優しい日本人』を思わせるような物語でした (陪審員裁判のお話で被告が無罪になったり有罪になったりするやつです)。
状況証拠しかない中で話し合いは加速していきます。黒になったり白になったり・・・。その展開にひきこまれました。
すべてが繋がっていく瞬間。途中までは先生がとても怪しく 展開読めてきたなと思っていたら見事にひっくり返されました。
ビックリしましたが、まだページがけっこう残ってると思っているとラストにまたひっくり返るんですよね。
絶妙なユーモアセンス

作者の藤崎さんは元芸人さんです。
ユーモアセンスを感じるところがありました。
初めてお通夜に行った登場人物・寺島悠。彼の勘違いに思わず笑ってしまいました。「通夜ぶるまい」を聞き間違えてしまった彼。
それぞれの顔
『神様の裏の顔』は 人の持つ2面性を上手くミステリーに取り入れた作品でした。
表と裏。
私もいろんな顔を使い分けています。職場の顔、友達の顔・・・。全部同じでいられれば楽なんでしょうね。
一つは神様のような面でもう一つは悪魔のような面・・・というふうに極端に違ったらちょっと怖いです。
まったく別人のように見えて同じ人物。・・・ある意味この本は人の本質を描いているのかもしれません。


