『アルスラーン戦記』ネタバレ感想文・あらすじ|最終巻「天涯無限」第2部の号泣シーン

- 『アルスラーン戦記』第2部あらすじと感想文
- パルス侵攻、主な3つの国
- ヒルメスvsダリューン
- 魔軍襲来と蛇王ザッハーク
- 悪辣宮廷画家ナルサスの策略
- クバードvsイルテリシュ
- 号泣したシーン
- 最終巻「天涯無限」評価が低い理由
- 解放王アルスラーンに思いを馳せたこと
ネタバレあります。未読の方はご注意ください。
ああ、エラム、私は王宮より街が好きだ。
田中芳樹さんの小説『アルスラーン戦記』第2部(8~16巻)感想です。・・・読み終わっちゃった。約1ヶ月かけて読み終わりました。第1部も第2部も面白かったです。

これは「戦記」であり「歴史」なんだということが身に染みたよ。
私は本を買う前にサッとレビューを読むんです。ラスト1巻(16巻)の評価、めちゃめちゃ低い・・・。
だから第1部(王都奪還の7巻まで)で止めておこうかと迷いました。でも読んで良かった。私の中でも ちゃんと物語を終わらせることができました。

『アルスラーン戦記』第2部 あらすじ
アルスラーンが即位して3年。18歳の若き国王の下、パルスの国情は安定し、着実に国力を盛り返しつつあった。だが、奴隷制度を廃止した「解放王」に対して特権を失った旧名門貴族たちの間には遺恨が拡がっていた。さらに、ミスルやチュルクなどの隣国もパルスへの野心をむき出しにし始める。
『アルスラーン戦記』第2部 ネタバレ感想文|解放王アルスラーン統治「争乱の世」

『アルスラーン戦記』第2部 8巻~は、18歳のアルスラーンが描かれています。パルス国王に即位したのが15歳のときだから、月日は飛んで3年後の物語ですね。

アルスラーン、逞しくなってた。
第2部 8巻~最終16巻までの本のタイトルは以下です。

第2部はパルス国をめぐっての争乱、蛇王ザッハークの魔軍も色濃く描かれていたよ。
シンドゥラ国に加え、ミスル国、チュルク国、マルヤム国もパルスを狙ってきます。そして蛇王ザッハークの復活と魔軍の襲来・・・。
アルスラーンは国王になってからも休む暇なく忙しい日々でした。読み応えたっぷりです。
パルス侵攻|主な3つの国の情勢
パルスの他に主に3つの国(ミスル、チュルク、マルヤム)の情勢も織り交ぜながら物語は進んでいきます。
8巻~16巻の間に3つの国の国王も変わっていくのだけど、なかなか凄まじい。
- ミスル・・・国王ホサイン三世→国王サーリフ
- チュルク・・・国王カルハナ→魔将軍イルテリシュ
- マルヤム・・・教皇ボダン→国王ギスカール
特に後半のチュルクでは、国王カルハナを魔軍イルテリシュが討ち取りチュルクを支配する。イルテリシュは元トゥラーン国王に即位するも、行方不明になった人物です。

こんなところに魔軍が、そしてイルテリシュが・・・。
蛇王ザッハークも復活するし、イルテリシュやレイラは魔軍に操られているし、恐ろしい展開でした。
パルスは他国と魔軍の侵攻により次々と仲間が死んでいく。地獄絵図を見ているかのような気分になりました。
ヒルメスvsダリューン|パルスの血筋から解放された瞬間
第2部の初めに目を引いたのは、ミスルとチュルクに現れた顔に傷を負った男です。

ヒルメス?でも同時に2人存在してる・・・。
片方はヒルメスで、片方は偽ヒルメスでした。
ミスル国にはヒルメスと名乗るシャガードが、チュルク国には本物のヒルメスが。
シャガードはナルサスの幼なじみで、ギランの港町で対立しましたね。そのときにアズライール(鷹)に攻撃されて顔に傷を負った男です。
シャガードがナルサスに向けた恨みは怖いものがありました。でもナルサスは偽ヒルメスの正体がシャガードだと気づいているようです。
「ふたりのヒルメス王子を嚙みあわせるのか、ナルサス?」
ナルサス、悪魔の策略。彼の思惑通り2人のヒルメス王子は噛み合うことになるんですよね。

思えば、ヒルメス王子もまた悲惨な人生だった。
第1部からずっと血の繋がりに囚われた人。パルス正統の血筋をひいていなければ、ここまで執着することもなかったのかな。
パルスを追われ、イリーナと暮らしたわずかな期間が1番心安らかだったのかもしれません。
でも彼に忠誠を誓った人はことごとくいなくなっていくのです。イリーナ、カーラーン、サーム、ザンデまでも・・・。

パルス国王の座を狙うヒルメスのことが嫌いになれない。
ヒルメスが討ち取られるのならば、相手はダリューンだと思っていました。彼と互角に戦えるのはダリューンしかいません。・・・悲しいかな、予感的中。
ダリューンvsヒルメス最終決戦。ヒルメスの最期の言葉が印象に残っています。
「イリーナ、いま逢いにいくぞ……」
ヒルメス王子ー(泣)
最終巻。ヒルメスが血の繋がりや、全てのことから解放された瞬間でした。
魔軍襲来&蛇王ザッハーク復活
第2部 10巻あたりから、魔軍が色濃く描かれています。
猿の顔に巨大な蝙蝠の翼を持つ怪物・有翼猿鬼(アフラ・ヴィラーダ)が空から攻撃してきたり・・・。

魔軍との戦いは凄まじい。
蛇王ザッハークも復活します。恐ろしいカタチで。・・・お墓からアンドラゴラスの遺体がなくなった時点で予感はありました。

蛇王ザッハーク、強し。第2部も面白かった。
ただ、第1部のようなナルサスの策略があまり描かれていないのが残念でした。魔軍相手では策略を立てようがない。・・・そういう意味では人間同士の戦いの方が好きかな。
第2部での策略で印象的だったのは、ペシャワール城を放棄したことです。
悪辣宮廷画家ナルサスの策略|13巻「蛇王再臨」
13巻「蛇王再臨」では悪辣宮廷画家ナルサスの策略が功を奏します。
パルスの国境でもあるペシャワール城を、わざと放棄する。
魔軍、チュルク軍、そしてシンドゥラ軍。この三者に、空城となったペシャワールをめぐって、盛大にあらそってもらおう
ペシャワール城をめぐって争い、兵が減れば御の字というワケですか。・・・まさに悪魔もよける悪辣宮廷画家の策略。

こういうの、好き。
魔軍はハマらなかったけど、シンドゥラ国王ラジェンドラがまんまとハマった(笑)そしてチュルク軍も・・・。
さすがナルサスです。
クバードvsイルテリシュ|最終巻「天涯無限」
最終16巻で描かれているクバードの最期が、ものすごくかっこよかった。
クバードvsイルテリシュ。
イルテリシュとクバードの剛剣はともに相手の右目を切り裂く。互角の勝負だけど、結果は大きな差がありました。
イルテリシュの左目は無傷で、もともと隻眼のクバードは右目も失う・・・。視力を完全に失ってしまいます。

それでも、クバードはイルテリシュと相討ちになるんだ。
結果、クバードも死んでしまうのです。悲しみとともに彼の強さを見せつけられました。
『アルスラーン戦記』第2部 号泣シーン

『アルスラーン戦記』第2部では号泣したシーンがいくつかありました。

仲間がバタバタと死んでいくからね。
号泣したのはエステル、ジムサの最期と最終巻のエピローグです。
女騎士(セノーラ)エステルの最期|13巻「蛇王再臨」
パリザードやパラフーダと一緒に旅をしてきたルシタニア国の女騎士・エステル(エトワール)。
彼女は国王アルスラーンにとって、かけがえのない人でした。そのエステルの最期です。
彼女が重症だと聞いたアルスラーンは自ら彼女の元へ赴く。
「逢いたかっただけなんだ……」
エステルの最期の言葉に号泣しました。とても素直な言葉ですね。
アルスラーンに逢いたい一心でパルスへ来たのに・・・。逢えた途端に安心したのか静かに息を引き取りました。
ジムサ将軍がくれた菓子|14巻 「天鳴地動」
エステルの最期に続き、ジムサ将軍の最期にも号泣しました。
正直、これまでジムサのことは気にも止めていなかったんです。でもジムサが助けた「こまかいの(オフルール)」が持っていたお菓子の下りを読んだ時、涙があふれました。
ずっと大事に持っていた形がくずれかかった菓子。ジムサが「こまかいの」にあげたお菓子です。
「つぎに、ジムサとあったとき、いっしょに食べるの」
つぎにジムサとあったとき。
ジムサが死んだ今、「こまかいの」のささやかな願いは永遠に叶わぬものとなりました。
エピローグ|仲間とともに・・・ 最終巻「天涯無限」
16巻「天涯無限」。この最終巻はある意味、衝撃作でした。それは後ほど書くとして、最後のエピローグがめちゃめちゃ良かったです。めちゃめちゃ泣いた。

衝撃の展開あってのエピローグ。
エラムが仲間とともに旅立つ。
これは号泣せずにはいられなかったです。『アルスラーン戦記』16冊を読んできた身としては。
田中芳樹さん、このエピローグを描きたいがために、あの展開にしたんじゃ・・・と邪推したくもなるけど。最後の最後に少しだけ救われました。
衝撃のラスト2巻「戦旗不倒」「天涯無限」|レビューの評価が低い理由

私の中ではラスト2巻「戦旗不倒」と「天涯無限」が衝撃でした。・・・薄々気づいていたことではあるんです。

『アルスラーン戦記』は、敵味方問わず人がたくさん死んでいくんだ。
最終巻「天涯無限」Amazonのレビューが散々なんですよね。評価が低い理由は、主要人物も含めて、仲間がほとんど魔軍との戦いで殺されるから。
物語を読んでいてあ然としたけど、そこまで悪い出来だとは思いませんでした。
これは「戦記」であると同時に「歴史」でもあるのですね。解放王アルスラーンと十六翼将と称される人々の「戦記」と「歴史」を描いた物語なんだと妙に納得しました。

主要人物が死ななければ、ここまで散々なレビューにはならなかったのかな。
そうかもしれません。でも私はこの展開も受け入れられました。
主要人物の最期の描かれ方はあっけなく、悲しみよりも衝撃の方が勝ります。情け容赦なく次々と犠牲になっていく。
パルス歴史において、解放王アルスラーン統治の世と十六翼将の死は通過点でしかないのだという思いも抱きました。
心が空っぽになるような虚無感と、あきらめに近い感じ・・・。
こういう感情を小説で抱くのは久々です。読みながら何度も目を閉じ、読み進めるのには覚悟が必要でした。
全てを読み終わった今、私の中でも『アルスラーン戦記』が終わったんだと感慨深くなります。
アルスラーンに思いを馳せたラスト

パルス国王第19代解放王アルスラーン。16冊を読み終わり、改めて主人公のアルスラーンに思いを馳せました。
11巻「魔軍襲来」には、国王アルスラーンの正直な気持ちが描かれています。
「ああ、エラム、私は王宮より街が好きだ。宮殿より市井のほうが、ずっと好きなんだ。パルスに永い平和と繁栄が確立されたら、私は玉座なんか誰かに贈って、街で暮らしたい。私塾の先生でもやって、子どもたちにかこまれながら、ときどき芸人の歌や踊りや奇術を楽しんで……」

アルスラーンらしい。
アトロパテネの会戦でパルスがルシタニアに敗れ、国王に即位するまでが約1年。そして解放王アルスラーンとしての在位が4年8ヶ月。

結局、アルスラーンの願いは叶わなかったね・・・。
11巻のアルスラーンの言葉を思い出して切なくなりました。平和を願ってパルスを統治するも、次々と彼を狙う隣国の侵攻や魔軍の襲来。
アンドラゴラス統治のパルスから読んできたけど、続くアルスラーン統治の世もまさに争乱の時代ですね。
この小説に出会って物語に浸る楽しさを堪能できた1ヶ月でした。
- 「王都炎上」(第1部スタート)
- 「王子二人」
- 「落日悲歌」
- 「汗血公路」
- 「征馬孤影」
- 「風塵乱舞」
- 「王都奪還」
- 「仮面兵団」(第2部スタート)
- 「旌旗流転」
- 「妖雲群行」
- 「魔軍襲来」
- 「暗黒神殿」
- 「蛇王再臨」
- 「天鳴地動」
- 「戦旗不倒」
- 「天涯無限」


